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プロローグ

2019.04.02 11:10

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____あいにくの雨模様。

この前開花したばかりの桜の花が、雨に濡れて道端に散る。

東京都中心部にある、高層ビル。

星空遥は、そこで静かに書類のチェックをしていた。

「失礼します」

ノックの音がしたと思うと、一人の男性社員が入ってきた。

横井慎吾だ。

「なーに、今忙しいのっ」

そう言いながらも、遥はぐでーっと机につっぷつした。

「昨日からその書類チェックしてばっかりじゃないですか。進んでないでしょ」

「ぬ…」

言葉に詰まる。

「あのねえ、横井くん。これでもあたし、一応社長なんですけど?」

「それならもっと社長らしくしてくださいよ」

「なぁにをーーーーっっ」

お互いじっと睨み合う。

険悪な雰囲気が続くと、お互いぷっと吹き出した。

「なにこれ、あたし達らしくないねっ」

「普段は社員みんな仲良いですからね。…ところで、社長」

横井は、先程とは打って変わって真剣な表情で遥を見つめた。

「例のプロジェクト、進んでますか?」

遥はうっ、と言葉を詰まらせる。

「も、もちろん進んでるよ〜。もうすぐ終わるところで〜」

「嘘ばっかり」

__ここは芸能事務所・星空プロダクション。

他と比べたら歴史の浅い会社だが、現在日本トップの人気と知名度を誇る。

その社長が、星空遥24歳なのだ。

「数ヶ月前、突然『アイドルプロジェクトをやるー』って叫んだ時は何事かと思いましたが…本当にその言葉しか頭にないんですか?」

横井が呆れた表情を見せる。

「いくらなんでもその時よりは話進んでるわよっ。スクールの方も協力してくれるんだからっ」

「スクール…って…隣の?」

「もちろん」

遥はニヤニヤしながら横井の顔を覗き込む。

「楽しみにしててよねー、よ・こ・い・くんっ」

遥は整理していた書類の束を抱え、軽やかな足取りで部屋を出て行った。

「…まだ何もできてないのに?」

横井は苦笑いで呟いた。


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