特別養子縁組、里親支援について
先日、枚方市で活動されている
ファミリーポートひらかた、サプリ村野様の合同研修会
「里親制度と里親拠点の事を知り、私たちに何が出来るか考える」
に講師として参加しました。
私自身、特別養子縁組で2児を育てる父親です。
子ども2人とは血の繋がりはありません。
上の娘は生後20日から、下の息子は生後5日から共に生活しています。
ご縁があり、今回研修に参加させて頂けることとなりました。
特別養子縁組や里親に関する情報はこちら
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日本ではまだまだ普及していない特別養子縁組や里親制度ですが、
子どもが健やかに、そして子どもを育む家庭が幸せになれる、そんな素敵な制度です。
特別養子縁組や里親に踏み出すまでには、いろいろな葛藤があります。
代表的なものは、不妊治療を経て、そういう決断に至るというケースです。
出口のないトンネルを抜けて、特別養子縁組や里親制度の事を知り、希望の光が見えたという家庭も多いことと思います。
多くの公的機関、あるいは民間団体は、そんな養親家庭に丁寧に寄り添い、相談に応じ、必要な研修を実施し、アフターフォローをしています。
しかし、特別養子縁組が成立した後、養子を迎えてからの様々な子育てに関するアフターフォローは万全とは言えません。
新生児で縁組したり、里子として迎えた場合には、”比較的”スムーズな愛着形成が始まり、悩みも一般的な家庭のそれと変わりません。
ただし、1年から数年、施設で過ごした子どもや、虐待の経験のある子どもを引き受けた際には、”ためし行動”と呼ばれる問題行動がよく起きます。
先日の研修でも、そういった行動に対して、支援機関から「怒らずに、全てを受け入れてください」と助言され、限界まで耐えていた、という里親さんの体験談を伺いました。
社会通念上、『それはいけない、叱らないといけない』と思うようなことでも、耐えて耐えて、叱らずに対応されたそうです。
『すべてを受け入れてください』という言葉の真意は、おそらく
『そういった行動、過去の経緯、それらすべてを受け入れて子どもを愛し、全力で子どもと向き合ってください』という意味でしょう。
その通りだと思います。
しかし、”気持ちを受容すること”と”行動を許容すること”には大きな違いがあります。
どういうことかというと、
子どもがためし行動をする際、『この親はどこまで”悪い”自分を受け入れてくれるのか、どこまでなら許されるのか、どんな自分でも本当に受け入れてくれるのか』そういった気持ちが隠れています。
安定した愛着を得られなかった子どもは、大人への期待と裏切られる不安に常にさらされていますので、無理もありません。
ですので、こういった行動に関して、子どもがなぜ問題行動を起こすのか、その意味を踏まえた上で、叱り飛ばすのではなく、広い心で受け入れてください、ということになります。
しかし、この言葉は諸刃の剣であり、真面目な方ほど、それを絶対に守らなければならない不文律のように解釈し、絶対に怒らず、叱らず、子どもがモノを投げても壊しても、親を叩いても兄弟に暴力をふるっても、叱らず、怒らず、許している親御さんがいらっしゃいます。
結論から言って、これは誤った、とまでは言いませんが、とても苦しく、出口の見えないやり方であり、子ども自身をさらに混乱させかねない対応方法です。
虐待を受けた子ども、虐待まで受けなくても、施設暮らしが長く、一般の家庭を知らない子どもは、新しい家庭という環境に戸惑い、今まで通用していたルールとは違う環境で、自分なりにルールや限界を模索し、もがいています。
それが、ためし行動です。
その際に必要なのは、
『すべてを受け入れる”心”』と
『一定の安定した基準で、子どもにとって安全で無理のない、子どもの発達水準に合ったルール設定、親の関りがなされること』です。
この”心がけ”の部分と、”実際の対応方法(行動基準)”がごちゃまぜになっているから、子どもの問題行動が”どんなものでも”受け入れるという無理な状況が生まれるのです。
先ほど言ったように、子どもは新しい環境に戸惑い、何が許され何が許されないのか、新しい親はどこまで自分の事を愛してくれるのか、という不安でいっぱいです。(新生児委託は違いますが)
その際に、”なんでも許される環境”というのは、子どもをさらに不安にさせます。
考えてもみてください
私たちが社会や家庭の中で安心して過ごせるのは、一定のルールや基準がそこに共有され、家族や社会成員がその一定のルールにのっとって行動する、という予測があるからです。
”何をしたら怒られ、何をしていると褒められるのか”
この基準がある程度一定であり、安定して変わらないからこそ、子どもは必要なことを学び、親の愛情を感じることが出来ます。
『この子はつらい経験をしたからなんでもうけいれてあげなくちゃ』という親の思いやりは、
ともすると、子どもにとって『何がダメで何が許されるのかわからない』という環境になりかねません。
それは、不安を呼び、子どもが自分なりのルールを探す、作るためにさらなる問題行動を起こすきっかけになります。
実子にしろ、養子にしろ子育てに必要なのは
『子どもの発達水準に合った、柔軟で愛情深い、安定したルールと秩序のある生活』です
噛み砕いていえば、
上記の事を守っていれば、怒っても叱っても大丈夫なのです。
それが一定のルールや基準から外れず、身体的な暴力や子どもの心を傷つける方法でなければ、です。
親の安定した、愛情に根差した、暴力に頼らない(言葉の暴力含む)、叱りは、むしろ子どもに社会で生きていくためのルールを教え、何をどうすれば家族と仲良く暮らしていけるのか、という基準を、体験をもって教えることが出来ます。
最初は叱ったからと言ってすぐに行動が改善しないのは、どの家庭でも当たり前です。
しかし、時間をかけて、子どもはそれを吸収し、”この親は自分の都合云々ではなく、どんな自分でもしっかりと受けいれてくれる”という安心感を得ていきます。
これが、”基本的信頼感”と言われる、人が自尊心をもって生きていく、他者と安定した愛着を築く際にとても大事な感覚です。
こういった言葉は文章にすると”当たり前”ですが、
実際に暴れる子どもを目の前にすると、落ち着いて対処できる親などおらず、不安や葛藤を覚えます。
加えて、里子や特別養子縁組として家庭に来る子どもの多くは
愛着障害や発達障害のリスクが、通常の家庭より高くなります。
その詳細は長くなりすぎるので割愛しますが、
子どもの行動の問題が愛着関係によるものなのか、養親の育て方によるものなのか、産まれた環境によるものなのか、障害によるものなのか、その見極めは、困難を極めます。
場合によっては対応方法を子どもの特性に合わせて変更することが必要かもしれませんし、
医療機関などの専門機関の助けを積極的に借りた方がよい場合もあります。
そういった知見やモノの見方、親がとるべき具体的な対応方法などについての助言は、やはり専門家の助けを借りた方がいい、というのが私の見解です。
日本では、里親家庭や特別養子縁組家庭に対して、そういった専門的なケアが抜け落ちています。
発達相談室つばさでは、里親家庭、特別養子縁組家庭に対して、発達心理学や愛着理論、行動分析学の観点からの助言・相談を行っています。
以下のような困りごとや心配ごとがある場合には、一度お問い合わせください。
・ためし行動がひどく、対応方法がわからない
・どこまでを許し、何なら叱っていいのか分からない
・親がどのように子どもに声をかけ、愛情を向けてあげればいいのか、不安がある
・自分の育て方に不安があるが、管轄の公的機関や所属のNPO団体に相談するのは、ダメな親のようで勇気が出ない
・子どもの発達に遅れを感じる
・子どもとコミュニケーションをするときに、何か伝わりづらい、逆に子どもからあまり親に働きかけてこない、というような違和感を感じる
・子どもを遊び場に連れて行ったときに、他の子どもに興味を示さない、おもちゃの譲り合いが年齢相応に出来ない
・落ち着きがなく、危ない行動や突拍子もない行動を、何度注意しても繰り返す
・きょうだい間でのトラブルが絶えない
・家庭ではよい子だが、園や学校で問題行動を繰り返す
※活動拠点は大阪北部ですが、今後スカイプ等でのオンライン相談も検討しています。
遠方の方も気軽にお問い合わせください。