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3月29日 「宮崎県総合博物館」を見学する

2019.04.05 04:57


昨日予報では、今日の天気は夕方頃まで雨ということだったが、


朝起きると曇り空で、ちょっと得した気分。



さっそく、「宮崎県総合博物館」を見学することに。



緑豊かな敷地内にあるこの博物館は、入場無料、しかも写真撮影もOK‼︎


またまた、得した気分になる。



まずは、「民俗」のコーナーから。


先日、友人の炭焼きの現場を見せてもらったばかりということもあり、炭焼きや林業に関する展示が目を引く。





宮崎では、江戸時代初期から炭焼きが盛んに行われてきた。


「日向木炭」は、大阪地域で取引される炭の市場価格を決定するほどの影響力があったという。


その大部分は「白炭」であり、先日目にした奥井さんの「備長炭」もその中に入る。




次に、炭窯について。


(「奥井製炭所」の炭窯)



炭窯は、上部がドーム型になるよう、石と粘土で作られる。




炭焼き小屋を作る場所にはいくつかの条件があり、材料を得やすく、窯に運ぶ道があり、炭の火を消すための水を入手でき、作業可能な平地を持っていなければならない。



黒炭と白炭では窯の構造が異なり、大量に焼ける黒炭の窯に比べ、白炭の窯は炭が掻き出しやすいよう、窯口が斜めになり、サイズも小さめになっている。




続いては、林業。


宮崎は現在まで林業が盛んであるが、チェーンソーやトラック、その他機械を有しなかった昔には、作業のほとんどは人力であり、材木の運搬には人力のほか、馬や河川が利用された。



作業は、まず、伐採から。



「楔(くさび)を打つ」という言葉は、ここから来ているということか。



使用する道具も、さまざま使い分けがあるのだろう。




お次は、木材の運搬方法について。




丸太を敷いて運搬路を確保し、その上をソリのような形をした運搬具に木材を載せて運び出す。



絵を見ると、「キンマ引き」が、いかに命懸けの作業であるかが、よく分かる。


下の写真が「キンマ」。この上に材木を載せて運ぶ。




そして、伐採の後は植林を行い、通常の下刈りや間伐などの育林の作業も、林業を続けていくためには欠かせないものとなる。



炭焼き職人は、この伐採、木材運搬、炭焼きまでの一連の流れ全てを請け負う。


「炭焼き」とは、大自然の中で格闘し、命懸けで造り上げる、壮大なスケールの「技」の世界であるという事が、よく分かる展示であった。





続いては、砂土原町巨田地区大池周辺で、現在でも行われているという「鴨網猟」について。


江戸時代に冬季の武士の鍛錬として始められたとされる、「夕方、池を飛び立つ鴨を網でとる(1950年代までは、明け方に池に戻ってくる鴨もとっていた)」という手法は、県指定無形民俗文化財となつている。


この伝統的鴨猟は、鴨の速度や風向きを考え、絶妙なタイミングで網を上げるという熟練の技法であり、全国でも宮崎のほか、数カ所しか行われていないという。



空中に網を高々と掲げて飛び立つ鴨を生け捕りにするという、なんともシンプルな猟である。


正直、こんなので獲れるのか、と思ってしまう。




秋の終わりから冬にかけての日没時、「越え」と呼ばれる尾根沿いの猟場で、猟師たちは鴨を待ち伏せする。


鴨の群れが池から餌場へ向け一斉に飛び立つ一瞬を狙って、網を空中に投げ上げると、運の悪い鴨がバタバタと網に引っかかるという。



ここでふと、以前山形県鶴岡市にある「藤沢周平記念館」の展示内容にあった、同じく武士の鍛錬として庄内藩で行われていたという「鳥刺し」を思い出した。




竿の先に粘着性のある「鳥もち」をつけ、小鳥の脚などを吸着させて捉えるというものだが、こちらも初めて知ったとき、こんな不安定な長い竿で本当に獲れるのか、と思った記憶が蘇る。



この博物館では他にも、漁業や稲作、製茶、養蚕など、第一次産業が盛んな宮崎ならではの、様々な生業に関する展示があった。




また、展示室の一角には「日向の神楽」という、神楽の舞台を再現したブースがあった。 




白い切り紙が舞台の周囲に巡らされているが、先日、これとまったく同じものを高千穂峡の蕎麦屋で見たことを思い出した。




これは、高千穂神楽を舞うための「御神屋」という場所で、かつて民家の表の間に設けられたものを再現している。


東の高天原方向に向けて神棚が設けられ、三種の神器(刀、鏡、勾玉)や神楽面、供物などが供えてある。


「外注連」と呼ばれる緑色の糸が家の外に向けて張られているが、これは太陽の光を表し、神を屋内へ導くためのものであるという。





家の前には、神を呼び寄せるための榊の木の飾り物が立てられる。



このブースの他にも、日向地方の神事に関する展示は色々ある。 


さすが神話の国・宮崎である。




次は、青島で見られる、一年の大漁を祈願した「オバンザオ」というお正月飾り。


魚はもちろんのこと、果物や野菜、餅などもぶら下がっていて興味深い。




また、漁の安全を祈願する「船霊様」という小さな木の箱は、御神体として和紙人形や柳の木のサイコロ、銅銭や五穀を入れ、船に納められていたそうだ。



多種多様な祈りの形があるものだ。



宮崎の自然のコーナーでは、宮崎の豊かな生態系を示す動植物の剥製・標本や、宮崎の地質の成り立ちを紹介する展示があり、かなり充実している。



気になったのは、炭焼き、林業続きで関心のある「照葉樹林」についての展示。


水分蒸発を防ぐため、葉が厚く表面がツルツルしているのが特徴だ。



日本の山林では、スギやマツなどの針葉樹林が多くを占めているが、その他に、西日本を中心に分布する「照葉樹林」(ブナ科のカシやシイなど)がある。




日本では、かつて照葉樹林が広く分布していたが、大規模な針葉樹の植林により、現在では急激に減少してしまった。




その中では、宮崎は照葉樹林が比較的残されている地域。


伝統的な宮崎の林業や、カシなどを用いた炭焼きの生業は、こうした豊かな照葉樹林を適切に利用し、育ててきたことにより、現在に引き継がれているのである。




続いては、乱獲や土木工事による環境悪化で急激に減少し、絶滅が心配されているという「アカメ」という魚。


大きなものは、体長1.3m、重さ40kgにもなるという。




南は屋久島から宮崎沿岸、四国南岸まで分布するという。




ナガスクジラとオガワマッコウの胎児の標本を見ると、クジラが哺乳類であることが実感できる。




山あり、海あり。


この博物館を見ると、宮崎がいかに自然に恵まれ、農林水産業全般において豊富な資源を有する土地であるかがよく分かる。




また、日向神話や、民間信仰、伝統文化に関する展示も豊富で、こうしたすべてが、宮崎の豊かな自然を背景にして育まれてきたのだということが実感できた。


宮崎県は、こうした展示を無料開放している。


子供たちを育む社会の懐の大きさを感じさせる施設であった。