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KANGE's log

映画「ブラック・クランズマン」

2019.04.06 12:47

「黒人警察官がKKKに潜入捜査する」 そんな話をよく思いつくなと思ったら、ベースとなる実話があるんですね。原作本もあるようです。

スパイク・リー監督が言いたいことは、とても明確で「お前ら、変わってねぇな。この映画で笑ってる場合じゃねえぞ」ということでしょう。

冒頭で映される「風と共に去りぬ」、劇中でKKKのメンバーがノリノリで観ている「國民の創生」。どちらも、映画としては名作とされ、後の作品にも大きな影響を与えていると言われる一方で、南北戦争を舞台に、KKKを善、解放された黒人たちを悪としている点で、強く批判を受ける作品でもあります。「今、あなた方が見ている映画というものは、こういう作品が土台になっているんですよ。そのことは忘れないでね」ということですね。

そして、劇中で連呼される「アメリカ・ファースト!」。この言葉自体は、昔からある言葉なのでしょうが、実際に当時、あんなに叫ばれていたのかどうかはわかりません。明確にトランプ大統領を意識していますよね。「アメリカが第一、国民が第一」は間違っているわけではないでしょうが、その「アメリカ国民」には、誰が含まれていて、誰が含まれていないのでしょう? 「そこを直視せず、浮かれた言葉にノッてんじゃないよ」ってことでしょうね。

KKKといえば、白人至上主義団体の代名詞のように言われますが、厳密には北方人種を至上としているので、ユダヤ人は差別の対象であり、またカソリックやフェミニズム、同性愛にも反対の立場をとっています。主人公の黒人警察官ロンのパートナーとなるフリップがユダヤ系であること、KKK側のフェリックスの妻の扱いの酷さで、そのことが強調されていて、KKKのトンデモ度が際立っています。「単に白人vs黒人の問題じゃないんだよ」ってことですね。

さらに、ロンの替え玉としてフリップがKKKに潜入するのですが、替え玉の刑事だということがバレてはいけないということと、KKKの中でユダヤ系であることがバレてはいけないという二重のサスペンスがあるので、ドラマ的にもうまいと思います。

違和感があるのは、劇中に出てくる黒人たちは、みんなえらくファッショナブルなのに対して、一方の白人たちは全員モッサリした格好です。特に、ロンといい感じになる学生運動リーダーであるパトリスは、めちゃくちゃスタイリッシュ! あからさまだなぁと思いますが、「現実がバランスを欠いているのだから、これぐらいの贔屓はいいだろう」ってことでしょうか。

最後にも、ある映像が挿入されています。劇中にもハリー・ベラフォンテが黒人への酷い仕打ちの語りがあったりはするのですが、それ以上にインパクトが残るショッキングな映像でした。 ここまで観ていくと、アカデミー賞でグリーンブックに敗れ、監督が退席し、そのことが話題になることまで含めて、この作品ということなのかもしれません。