あたしに出来る事
2005年9月
夏が過ぎ、あたしは本格的にGCでチャレロビに居るようになっていた。
(それまではGCとBBは半々ぐらいだった)
どんどん友達が増えて、嬉しかったなあ。
色々なロビーをうろうろとしては、色々な人に一緒にチャレをして貰っていた。
アとはこの頃から時々、メッセ(MSNメッセンジャー)をするようになっていた。
ぼんやりと日々の事をだべっていた気がする。
話すにつれて、近くなる距離を感じてとても嬉しかったけれど、なんだかそういうロールプレイを楽しんでいた気がする。嬉しさと同時にどこか割り切った自分の心もまた、感じていた。
人が沢山居る時間帯には別々の場所でチャレをして。人が少なくなる深夜から朝にかけては、まったり一緒にだべったりチャレ。そんな日々を過ごしていた。
けれどもある日、それが変わってしまうことを知った。
『もうすぐ自分にも制限を課す時が来る。』
仕事が忙しくなるので、オンに来られなくなる事を知った。
あたしは「さびしいけれどしかたなっしん」と答えながら、それにどういう感情をもっているのか、どういう感情をもつべきなのか、戸惑って。
何故かその時は咄嗟に”それを考えないほうが平和だ”と、心の一部分が閉じられた。
PSOBBのタイムトライアルの頃から、ずっとあれだけ信頼していながら、世話になっていながら、彼に対して何も出来ないもどかしさが常に在った。
単なるTAがつまらないと、一時期普通部屋と限界しかやらなくなった彼に、なにも言えなかった。
なかなかチャレも一緒にする機会も減ってきていたし、このまま世界が離れていってしまうのかもとも思っていた。
仕事が忙しくなると聞いたのは、それでも何とか良い関係を保っていると思っていた矢先のことだった。
アが暫くオンを離れるという日、あたしは何処にも出向かずに、ふらふらしながら彼を待っていた。離れるならば、今夜はできるだけ側に居たい、という素直な気持ちをあらわすために。
しかし結局それはかなわなかった。
切ないような、でもやっぱりあたしの中で何処か割り切った気持ちは変わらずにあって
どうでもいいような、どうでもよくないような。そんな状態だった。
2005年10月
オンに来られなくなると言った日から、一週間も経たない頃。アにメッセで話しかけてみた。
忙しいかもしれないし、オンに来なくなったのに、話しかけてもいいのかもわからないけれど、話しかけてしまった。
特段戻ってきて欲しいとか、そんな事は言わなかったはずなのだけれど、結局会話がきっかけとなって、彼はもうオンに復帰してきてしまった。
けれども、かなり無理があったようだった。
ちょくちょくギルカを検索したり会いに行ったりして様子見しても、焔のひとはいつも…眠そうだった。
チャレンジをやる訳でなく、ただロビーに居て。オンしては寝落ちして自動切断から復帰が3回目と聞いた日もあった。
仕事が忙しいのに、その前後でオンしているのだから、それは眠いだろうと容易に想像できた。毎日睡眠時間が4時間以内とか、凄すぎ。
その様子があまりにしんどそうで、あたしはいつも心配していた。
自分が声をかけたりしなければ、オンに行くとは言わなかったかもしれない
しんどい原因のひとつをつくってしまったのかもしれない
そう考えるたび、しょんぼりした。
しかしあたしは、だからといってどうすることもできず、近くなっているような感じがしながらも側に居られず、どうしたらいいのかわからないままに、 普段と変わらず。他のロビーを転々としながらチャレンジをする毎日を送っていた。
そんなある日。 お約束のような展開なのだけれど、彼は風邪をひいてしまったんだ。
ゆっくり寝て治さないと、とそれとなく伝えるけれど、自らを痛めつけるように寝ずにオンしていて。でも体調悪そうだから、一緒にチャレしようとも言えなくて。
どうしてそうまでして寝ずにオンしているのか、不思議でしょうがなかった。
よりによってそんな日に彼と、何故か一緒に限界をすることになった。
C5だった。
調子悪いのわかっていたので、早めに終わればいいのに、詰めてもそんなにいいマップじゃなさそうだけれど、とりあえずとりたい数字が出るようなビミョーなマップが出てしまって
さっさ終わらせたかったのになっかなかたった1本のブランドが出なくて、散々待ってやっとブランド出て本番に突入したのだけれど
そんな最後の部屋、あたしはシノワ3匹に飛びかかられてHP満タンから即死みじんこ。
・・・自分のしでかした失敗に、久々に泣いてしまった。
解散後。
ただメッセのインフォ欄に一言、呟いた。
”…あたしに出来る事は、何だろう。”
果たしてあたしになにか出来ることがあるのだろうか。
…今日のように、何かやろうとしても迷惑でしかないんだろうか…
『またしょんぼり系めっせ』
あたしのしょんぼりを気遣ってか、焔のひとが声をかけてくれた。
「ずうっと考える。つか早く寝ようマジで。」
午前5時前だった。病気してる人を付き合わせるわけにはいかない。
『はい。
まあPSOとはあまり関係ないですが』
PSOとは関係ない、という言葉で一瞬ドキッとするあたし。
『こうして会話してくれるとこっちも元気な気分にナリマスヨ』
「そうなんだ。嬉しいよ」
緩む口元。
発言しながら、本当に喜んでいる自分が判った。
『でも本当に、ここで話してくれるからこそ
マゾくてもPSOいって様子みようかな、とか思うわけで
なかったら普通に寝てますよ多分』
頭の中で”!?”が巡った。
それはその、なんというかその、ええと………。
ひとつの予測が頭を掠めたけれど、あたしはそれを一生懸命振り払った。
「気持ちはわからなくはないけどマゾいー(笑)」
自分の戸惑いも誤魔化すような、あたしの発言。
『けっこー爆弾発言に聞こえたかしらかしら』
「そうかんがえるときこえなくもない」
珍しく嘘をついた。
考えなくても…そんなふうに取ってしまってたよ。本当は。
でもそれをどうすべきか、その時には判断がつかなくて。
こう言うしかなかった。
『おっけ 考えないと判別不能な内容で良かった』
「そちのほうに考えないようにしていた。迷惑かかるしね」
本当にそうなんだ。迷惑かけたくなかった。
それからまた、いつものように深夜だけ一緒する日々。
会話を忘れたかのように余所余所しい焔のひとと
忘れられずに意識してしまってもどかしいあたし。
…そりゃああんな事言われたら意識しますがなヽ(`Д´)ノ
そうしてついにあたしは、一つの真実を彼に伝えることを決意した。
それが一番、あたしが彼に出来る事だと…そう思えたから。