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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

子宮をマッサージしても人工授精の確率が改善するというデータはありません⑤

2019.04.09 20:33

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


数回に渡って、リハ専門職、整体師や、カイロプラクターなどが謳う、『内臓マッサージ』、『子宮マッサージ』、『産後の骨盤矯正』、『妊活整体』、『妊活ヨガ』に関して書いています。  


子宮マッサージを行っている整体院のweb siteで取り上げられていた論文に関して書いています。  


私が見た治療院(整体院?)のページでは以下の様な文章が堂々と書かれていました。


・子宝マッサージは体外受精の効果を副作用なしに高めることが医学的に立証されています 

・(アメリカとイギリスの研究をを示して)鍼灸は体外受精の妊娠率・流産率ともに改善しないとしています。 

・そこで効果があったという論文と効果がなかったという論文を併せて200本近い論文を比較し、鍼で妊娠しやすくするための条件を見出しました。それが当サロンの「子宝はり」です。         某治療院のホームページより


 前回、盲検化に関して書きました。 ここまで、この研究の信頼性を下げてしまっている原因に関して書きました。 ただ、『完璧な研究』というモノはありません。どれだけお金をかけたり、慎重に研究を設計しても完璧なものにはなりません。  

したがって、一個の研究をもって完全に結論が出るということは、通常ありません。 


この研究からマッサージと体外受精の成功率の因果関係は言えませんが、穴があるから全く役に立たないというわけでもありません。 このような穴を把握したうえで、どこまで、この結果を実際の現場に当てはめることが出来るかを考えれることが大切です。 


また、他の似たような研究の結果であったり、医学の既存の知識なども加えて総合的に考えることが必要です。 


この分野は、PubMedで調べてもほとんど似たような研究はされていないようですし、既存の医学の知識としてもマッサージを30分間行っただけで体外受精の確率が上がるというのはあまりにセンセーショナルな気がします。


このように考えても現時点では、マッサージを体外受精の前に、追加のコストを取ってまで行うというのは少し突飛すぎると考えます。 


もう少しこの研究に対して言いたいことはありますが、キリがないのでここでやめます。 


 次の問題は、 この治療院は、 

『この論文で紹介されている手順でマッサージを提供するというわけではない』

ということです。 


この研究では、体外受精の予約の30分前に来て、マッサージを受けてから体外受精を行うという手順でした。 この治療院のweb siteにはそのような記載はありません。 


この研究ではマッサージによって効果がでるメカニズムとして、子宮の血流改善とリラックス効果を挙げています(あくまで仮説です)。この様なマッサージ効果は、普通に考えればマッサージ直後に最も効果が出ていて、時間の経過とともにその効果が少なくなっていくと思われます。 


もし百歩譲って、この研究で30分後のマッサージ効果が示唆されたとしても、1時間後、1日後に効果が持続している保証はありません。 


さらに、この研究で使われているマッサージは機械が使われており、人の手によるものではありません。 


 ①この研究をもって、マッサージと体外受精の確率の因果関係を示すことには無理があり、  


②さらに治療院で提供されるマッサージは、引用された研究と手順もマッサージの仕方も全く異なります。 



なぜ、この研究をもって自身の施術の有効性をサポートできるという考えに至ったか理解に苦しみます(;'∀')  


ただ、専門外の方であれば、web siteの文言を読んで、「ふ~ん。医学研究で証明されているんだ。」と思うでしょうし、少し慎重な方でもリンクが付いたページに行って「英語で発表された論文があるんだ。タイトルは?・・・あっ、やっぱりマッサージは効くんだ。」と思ってしまうと思います。 


なかなかアブストラクトを読んで、Google scholarを使って論文まで辿って全文を読むというモノ好きはいないのではないでしょうか?  


このweb siteはそういうお客さんの心理を見越した結果なのかもしれません。この様にされてしまうと、専門家でない人には判断が難しいし、専門家であっても自分の専門外の分野になるとなかなか判断が難しいよな。。。 というのがここまでの感想です。 


長くなりましたので次回に続きます。 

次回でこのシリーズの最終回で、子宝はりに関して書きます。 



今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 








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