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小田急ワイドドア車とホームドアの関係

2019.04.12 11:45

小田急電鉄の通勤型車両で特徴的なものといえば、ラッシュ時の乗降をスムーズに行えるようにドア幅を通常より広げたワイドドア車。1000形、3000形の一部編成、2000形が該当します。

その一方、小田急線でもホームドアの整備が本格的に始まっており、2019年4月12日現在では新宿駅・代々木八幡駅・東北沢駅下北沢駅が設置済みです(下線の駅は一部ホームのみ)。


一般車とワイドドア車のドア幅・ドア中心間のピッチを比較すると・・・

のようにドアピッチが異なっていますが、これにホームドアはどう対応しているのか、代々木八幡駅のホームドアを例にして解説します。

まず、代々木八幡駅ではホームドアと同時にTASC(定位置停止装置)を導入しました(電磁直通ブレーキ車は除く)。これにより停止精度±350mmを実現しています。

一般車・ワイドドア車とも2・3番ドアはほぼ同じ位置、つまり重ね合わせるとワイドドアに一般ドアが収まる形になるので、開口幅はワイドドア車のドア幅1,600mm+余裕700mmの2,300mmとなっています。一方の車端側1・4番ドアでは両車のドア位置にズレが発生しますが、開口幅を2,480mmと広めに取ることで対応することができています。


なお、下北沢駅・東北沢駅も同じくTASC整備済みですが、開口幅は推定2,500mm及び2,700mmと代々木八幡駅より若干広くなっていました。この2駅は進入速度が高いため停止位置許容範囲を多めに取っているのではないかと予想しています。

また、TASC導入以前の2012年に設置された新宿駅4・5番線のホームドアは、開口幅を推定2,700mm及び3,000mmとしてさらに許容範囲を確保しています。


以上のように、1・4番ドアの開口幅を広げることでワイドドア車もホームドアのある駅に入線が可能となっています。しかし、新宿駅にホームドアが設置されて以降、1000形ワイドドア車だけは新宿口に乗り入れる運用から撤退しました。

幅2mというワイドドアを採用し乗降時間短縮を狙った1000形ワイドドア車でしたが、逆にドア周辺に旅客が滞留し車内の流動性が悪化したことから、後にドア幅を1.6mに縮小する改造が施されます。これによって現在のドア幅・ドアピッチは後継車の2000形と同じになりました。

そのため純正の中間車ならホームドア設置駅に乗り入れても何の問題もないのです。ホームドアに対応できなくなった原因は先頭車及び先頭車から中間車化改造された車両のドアにありました。

1000形ワイドドア車では、スペース的にドア幅拡大が難しい乗務員室後位の客用ドアも車体中央寄りに後退させることで幅1.5mを確保しました。

一方2000形・3000形では同部分のドア幅を通常の1.3mとしたため、ドア位置は一般車とほぼ同じです。これにより1000形ワイドドア車だけが特殊なドアピッチとなってしまいました。


1000形ワイドドア車に対応できる大開口ホームドアにすることも不可能ではなかったはずですが、全6編成しか在籍しない車両のために特別なことはしたくはなかった、ということなのでしょうか。

現在1000形ワイドドア車は多摩線・江ノ島線などで運用に就いていますが、2022年度までには町田駅や新百合ヶ丘駅等にもホームドアが設置される予定です。同車は現在進んでいる1000形リニューアル工事の対象外となっていることからも、近いうちに置き換えが開始されるのかもしれません。



参考資料

小田急「代々木八幡駅」が刷新 10両対応のホーム、橋上駅へ - シブヤ経済新聞 https://www.shibukei.com/headline/13935/

1日の利用客数が10万人以上の全駅へのホームドア設置を推進します - 小田急電鉄 http://www.odakyu.jp/program/info/data.info/8615_4534017_.pdf

通勤車両1000形のリニューアルに着手! - 小田急電鉄 http://www.odakyu.jp/program/info/data.info/8107_0585407_.pdf

井上正志「小田急1000形ワイドドア車」『JREA』Vol.34-No.7、日本鉄道技術協会、1991年、p20128-20131

福田豊「小田急電鉄新形式通勤車両3000形」『JREA』Vol.45-No.5、日本鉄道技術協会、2002年、p28379-28382