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九条 顕彰・台本置き場

ろくでなしマイヒーロー

2019.04.12 13:58


※必ず規約を読んでから台本をご使用ください。分からないことがございましたら、TwitterのDMまでご連絡お願い致します。


こちらは声劇台本となっております。コピーなどでの無断転載、自作発言、二次創作はおやめ下さい。

ネットでの生放送(ツイキャス等)のご使用に関しては自由です。

※YouTube等での音声投稿や有償での発表(舞台での使用等)に関しては作者の方に相談してください。

使用報告なしで構いませんが、なにか一言あるととても励みになります。飛んで喜びます。

物語の内容にそっていれば、セリフアレンジ・アドリブは自由です。

大幅なセリフ改変はおやめ下さい。

初めての声劇台本なので拙い文章ですが、よろしくお願いします。




──俺たちは、ろくでなしのヒーローだ…




演者:4人


比率

♂2:♀2



上演時間:約40分程度



登場人物

瀬名 京介(せな きょうすけ) ♂

未解決課の刑事。20代後半。何故かほとんど家に帰らない。皆森の先輩。やる気のない感じ。元々、公安課にいたが、とある理由で転属された。


皆森 梓(みなもり あずさ) ♀

新米刑事。20代前半。先輩である瀬名のことを放っておけない、オカン気質で真面目。とある事件の真相を知りたくて、自ら未解決課に志願。


石塚 真琴(いしづか まこと)♂

瀬名、皆森の上司。30代前半。3年前に妻と娘を事件で亡くしている。その時の犯人を殴って重度の怪我をさせ、捜査一課から未解決課に転属。飄々とした、掴めない性格。


川石 ユウ(かわいし ゆう)♀

瀬名の友人。普段は新聞記者をしている。裏で瀬名に情報を提供している。ある意味で情報屋。ハッキングが得意。一人称は僕。不思議ちゃんな感じ。



※←被せセリフです、被せ気味でお願いします




役表

瀬名京介:

皆森梓:

石塚真琴:

川石ユウ:







〇台詞〇





瀬名(M):俺たちは、ろくでなしのヒーローだ…






             走る音。瀬名がとある廃墟の階段を駆け上がっていく。

             普段の瀬名とは考えられないほどに、ひどく焦り、恐怖したような、必死な表情だった…

            勢いよく、屋上への扉が開かれる。

            しかし、時すでに遅く、目の前には、肉塊となった1つの死体と、血塗れの後ろ姿…瀬名は、その姿をよく知っていた。







瀬名:はぁ、はあ…はぁ……っ!……やっぱり、あんたがこの一連の事件の犯人なのか……なんで…なんでだよ!!どうしてあんたが…答えろ!!








                   数日前…

                   警視庁の片隅にひっそりある、未解決事件を取り扱う特別班、未解決捜査課。

                   自分のデスクで突っ伏して寝ている男が1人…そこへ、まだ若い女性捜査官が声をかける。








皆森:瀬名さん…もう!瀬名さんってば!!


瀬名:…あぁ…おはよ、皆森


皆森:おはよ、じゃないっすよ!今何時だと思ってるんですか!?また職場でお泊まりですか!?いい加減、家に帰ってくださいよ!男臭いです!匂いが!


瀬名:男臭いって…ひでえ奴…ま、帰る家があれば、な


皆森:何言ってるんすか、もう…こっちは心配して言ってるんですよ!


瀬名:仕方ねぇだろ、この間の未解決事件の資料、まだまとまってねぇんだからさ…


皆森:あぁ…連続少女殺人事件のやつですか…そう言えば、まだ犯人捕まってないんですよね…


瀬名:…俺たち警察がどんなに頑張っても、解決されない事件がある…こんな虚しいことねぇよな…


皆森:ですね…そう言えば、今朝のニュース見ました?


瀬名:見てるわけねぇだろ、ずっとここに引きこもってんだから


皆森:ですよね~、あのですね、1週間前に届いた未解決事件の資料あるじゃないですか


瀬名:あぁ…あの連続無差別強姦《ごうかん》事件か…それが?


皆森:犯人、見つかったらしいですよ


瀬名:見つかった?捕まったじゃなく?


皆森:はい…それも、死体で…


瀬名:…は?


皆森:その事件の犯人、どうやら大手企業の若手会長で…普段は真面目で仕事熱心で…そんな酷いことするような人には見えなかったらしいんですけど…鑑識の結果、その死んだ会長のDNAと、犯人の残したDNA、一致したみたいなんです……そして会長の部屋からは、犯行時に使ったであろう凶器や衣服が見つかったそうで…


瀬名:…そりゃ、ただ報いを受けただけだろ…


皆森:でも…いきなり死んだ人間が実は連続事件の犯人で…今まで犯人の証拠すら見つからなかったのに…どうしてって思って※


瀬名:※ストップ、それ以上は詮索しない方が身のためだと思うぞ?犯人は見つかって、しかも死んでた、事件解決、それでいいじゃねぇか、俺たちの仕事も減るし、オールオッケー


皆森:瀬名さん、そんな言い方ないと思います……確かに、報いを受けたかも知れません…けど、殺された人をそういうふうに言うのは私は良くないと思います……私達は、たとえ腐っても刑事です、犯人を見つけ出して、捕まえて、罪を償わせる…それが私達の仕事です


瀬名:…悪かったよ、確かに不謹慎だった…刑事として言うべきことではなかった


皆森:はい


瀬名:…さて、そろそろ身体起こすか、石塚さん来る前に


皆森:そうですね、多分そろそろ来る頃だと※


石塚:※ん~?俺がそろそろ、なんだ、お前ら?






               後ろを振り返る2人

               いつの間にか、上司の石塚真琴がにこにこしながら立っていた。






皆森:いっ!?石塚さん…お、おはようございます!!


瀬名:(小声)…いつの間にいるんだよ…本当に神出鬼没だな…


石塚:京介~?聞こえてるぞ?


瀬名:…サーセン、はよっす、石塚さん


石塚:はぁ、なんだぁ瀬名、お前はまぁた泊まりか…たまには家に帰れ、布団で寝ろ


瀬名:…うっす


石塚:それと皆森!この前渡した宿題の資料、ちゃーんとまとめたか?


皆森:は、はい!まとめてあります!


石塚:よし!んじゃ、この資料と一緒に、保管室にしまってこい、そしたら、出かけるぞ、お前もな瀬名 


皆森:え?…出かける、って、どこにですか?


石塚:この前届いた未解決の連続少女殺人事件、うちが持つことになった、再捜査だとさ


皆森:え、うちで再捜査、ですか?あんな大きな事件…なんでいきなり…


石塚:さぁな?上がめんどくさくなったんじゃあないのぉ?さーて!久しぶりの捜査だ…気合い入れていくか!


瀬名:…あの、石塚さん…


石塚:ん?どした?


瀬名:…いえ、なんでもねぇっす…



瀬名(M):「気合い入れていくか」、そう言った石塚さんの横顔が、不思議と少しだけ強ばっていたように見えた…






                 外回りを終え、事務所に帰ってきた3人。






皆森:はぁ、結局、事件についての収穫なし、でしたね…


石塚:そうだな…証拠もないし、目撃者もいない…まるで煙みたいな犯人だな…一体どうなってんだか…


瀬名:今現在でわかってることは、毎週火曜日に犯行が行われること、被害者の血でハートマークを書いて残すこと…というか、資料に書いてあることくらい、っすね


石塚:はぁ~…こりゃ、上も匙を投げたがるわけだわ…久しぶりの捜査だってのに、全然空振りとは…


皆森:でも、私は諦めませんよ!現場百辺!ですよね!石塚さん!


瀬名:…古臭


皆森:瀬名さぁん?聞こえてますけどぉ?


石塚:ははは、けど確かに、皆森の言う通りだな、まあ、まだ捜査は始まったばかりだし、張り切っていくか


皆森:はい!あ、これから一緒にご飯行きませんか?


石塚:お、いいね、瀬名も来るだろ?


瀬名:俺はちょっと、野暮用があるんで


皆森:えー、瀬名さん、ノリ悪い…たまには行きましょうよォ!


瀬名:すまん、また今度な


石塚:そうか、なら、これから2人でイチャイチャしようか、皆森~?♪


皆森:すんません石塚さぁん、私ぃ、彼氏いるんでぇ♡


石塚:おお?これは禁断の恋のはじまりかなぁ?


皆森:いやなんも始まりませんからね!!??


石塚:なーんだよォ、釣れない奴、んじゃ、瀬名、また明日な


瀬名:はい、また






          皆森達と別れる瀬名。

          飲み屋街の裏路地へ入っていく…今はもうやっていないBARの扉をガンガンと叩くと、1人の女性が、眼鏡を、Tシャツに下着という出で立ちで、扉を開けた。

          寝癖がまるでメデューサのようだ。







川石:ふぁぁ…一体誰だい、こんな時間に…今は営業時間外だよ?


瀬名:…川石、せめて服を着ろ、ズボンを履け


川石:おや、なんだセナくんじゃないか、久しぶりだね


瀬名:お前は相変わらずだな…なんで毎回Tシャツにパンイチで出てくるんだよ


川石:仕方ないだろ、これがボクのスタイルなんだからね


瀬名:はぁ…中、入っていいか?


川石:どーぞどーぞ、心友のセナくんなら大歓迎だよ






                BARの中は色んな新聞記事て張り巡らさせており、さっき撮ったばかりであろう写真が印刷されていた。






川石:あー、毎度の如く汚い部屋だが、ゆっくりしてくれたまえ、そこら辺に座っていてくれ、今コーヒーを出すよ


瀬名:…?…未解決事件の新聞の切り抜き…お前、まだ探偵ごっこかなんかしてんのか?


川石:ん?まあね、でも、探偵ごっこではなく情報収集と言ってくれないか?…ほらコーヒー 


瀬名:…砂糖あるか?


川石:ここにそんなものあると思うかい?それに僕はコーヒーはブラックが好きなんだ


瀬名:…ほんと、お前変わんねぇな…


川石:それは褒め言葉として受け取っておこう。しかし、君から僕のところに尋ねてくるなんて、余程「困っている」とみた、一体、何を知りたいんだい?


瀬名:…今、ある事件の再捜査をしてる…その事件について、もっと情報が欲しい


川石:ふーん…そういうことか…協力するよ、大親友のセナくんの頼みだからね…あ、先に言っとくが、僕の情報は高いよ?


瀬名:知ってる、構わない


川石:ふふん、では、詳しく聞こうか、どんな事件だい? 


瀬名:未解決の連続少女殺人事件だ


川石:ふーん。なるほど…では、こちらでもその事件の情報を集めておくよ。何か進展があったら連絡する。


瀬名:頼む……毎度すまんな…危険な情報収集させて…


川石:いいのさ、僕が好きでやってる事だし、どうせ僕は根無し草だからね、好きな所に行って好きに生きるさ


瀬名:…


川石:どうしたんだい?浮かない顔だね?


瀬名:…いや、今回の事件とは関係ないんだが…気になることがあるんだ…嫌な予感がする


川石:君の嫌な予感は当たるからね〜、警察辞めたら占い師にでもなったらどうだい?


瀬名:冗談きついぜ…そんなの死んでもなりたくねぇよ


川石:ははは…で、最近は帰ってるのかい? 「あの家」に


瀬名:お前までそんなこと言うのか…


川石:ということは、帰ってないんだね…まあ、帰りたくないのも分かるがね


瀬名:…あの家には嫌な思い出しかない…息が詰まる


川石:そうかい…あの事件は、もう時効だと思っているがな…でも、君の家だ、たまには帰らないと、ホコリだらけになってしまうよ?


瀬名:…ホコリよりも嫌なもんが、あの家には残ってるんだよ…


川石:そうかい…今日は泊まっていくかい?


瀬名:や、今日は近くのビジネスホテルにでも泊まるわ…さすがにずっと事務所で寝泊まりは怒られるからな…じゃ、またな、川石


川石:そうかい、では、また



瀬名(M):あの家には帰りたくない…恋人が俺の友人に強姦され、殺されたあの家には…もう…






              その頃、皆森と石塚は、いつもの居酒屋で酒を飲み交わしていた。

              いつにも増して、皆森が酒をあおっている。






皆森:(ビールを飲む)~っはぁ!! 


石塚:お、おいおい、さすがに飲みすぎじゃないか?


皆森:いいんれすよぉ~!最近ぜんっぜん飲めてないんで、飲みだめしてます~


石塚:はぁ…だいぶ酔ってるね、皆森くんよ…(汗)


皆森:もー、瀬名さんも来ればよかったのにぃ~


石塚:はは、なんだかんだで、瀬名のこと好きなんだな、皆森は


皆森:は!?いや、そ、そういう意味で言ったんじゃ…


石塚:分かってるよ、お前は優しいからな


皆森:…石塚さん、私のことからかってますよね…


石塚:いんや、ちっとも…お前なら、瀬名の心の傷も、少しは取り除くことができるんじゃないか、と思っただけだ


皆森:瀬名さんの…?


石塚:…あいつな、若手の頃、付き合ってた子がいたんだ…その子と結婚する約束までしてた


皆森:ふぇ?!なんすかそれ!初耳です!


石塚:でもな、その約束も、彼女も、奪われたんだ…


皆森:え…奪われたって…?


石塚:…あいつの親友で、同期の警察官だったやつにな…彼女を強姦されて、あげく口封じで殺されたんだ


皆森:え…


石塚:サイコパスは、普段普通に見えるやつが多いんだよ…瀬名はそいつのせいで、何もかも奪われた…だから、あいつは家には帰らない…家に帰れば、色々思い出しちまうからな…


皆森:…そう、だったんですか…私、なんにも知らないで、帰れとか口やかましい事ばっか言って…不謹慎なのは私の方だ…


石塚:…でもな、お前と出会って、関わってから、あいつの表情も少し変わってきてるんだぞ?


皆森:…え?


石塚:前までは本当に岩みたいでな、全然笑わねえし、すごく暗い表情してたけど…お前が未解決課に来て、お前と話してるうちに、あいつ、だんだん表情が明るくなってきたんだ…俺はそれが嬉しかったよ、お前がうちに来てくれて、本当によかったと思ってる


皆森:石塚さん… 


石塚:だからさ、これからも瀬名に話しかけてやってくれな、皆森…俺だけじゃ、なかなかあそこまでアイツの心を柔らかくしてやれなかった…頼んだぞ?


皆森:…ぐずっ…いじづがざぁぁぁん 


石塚:お、おいおい泣くなよ、せっかくの美人が台無しだぞぉ、皆森?


皆森:うう、びじんじゃないれすうう~…うわぁぁん!


石塚:ちょ!?頼むから真面目に泣き止んで!本泣きしないで!ほ、ほら、お客さんこっち見てるから!…あ、あはは~、すみません、ち、違うんですよ、彼女泣き上戸(じょうご)なんで…





               次の日…






皆森:うぅ…頭痛い、昨日飲みすぎたぁ…頭の中が頭痛のオーケストラを奏でてる…


瀬名:…なぁんだ?皆森、今日はお前がデスクで突っ伏してる日か?


皆森:!せ、瀬名さん!お、おおおはようございます!!


瀬名:?あぁ、おはよ


石塚:おはよう〜、お、みんな揃ってるな~


皆森:あ、石塚さん!おはようございます!昨日はお疲れ様でした!


石塚:おう!お疲れさん!…あぁ…早速だが、お前らに報告せにゃならん事がある…今回の再捜査は、打ち切りだ


皆森:…ええ?!


瀬名:は?なんでいきなり…


石塚:上からの命令だ、なんでも、犯人の目星が着いたから捜査一課に資料回せとかなんとか…まあ、捜査一課が数稼ぎしたいだけだろけどな


皆森:そんな…うちの事件なのに…


石塚:そんな事もあるわな…仕方ない…さて!じゃ、資料整理の続きはじめるぞ


皆森:…はぁい…


瀬名:…


石塚:瀬名、どした?


瀬名:いえ…


石塚:そんな気を落とすなって、次があるさ


瀬名:別に、気は落としてないんすけど…


石塚:おー?じゃあなんだ?最近流行りのあれか、かまちょってやつかァ?仕方ねぇな、よしよしよーし♪


瀬名:うわぁ!?違うって!頭撫でんな!アホ上司!


石塚:はははは…




瀬名(M):俺がそう言った後、石塚さんは優しい笑みを浮かべた…その意味を知ることになるのは、全てが終わったあとだった…

  





              瀬名のスマホが鳴る

              川石からの電話だった






瀬名:あ…すんません、俺ちょっと電話に…


石塚:おう、行ってこい


皆森:んー?怪しい…まさか彼女さんですかぁ? 


瀬名:違うっての、アホか


石塚:ははは!…あ、皆森、俺もちょっと出てくる、資料整理よろしくな


皆森:え!?この膨大な数の資料残してどこ行くんすか!?ちょっと、石塚さん!!…行っちゃった…もう…今度ご飯奢ってもらうからなぁ






瀬名:…もしもし


川石:やぁ、瀬名氏!元気かね!? 


瀬名:声でけぇよ、耳が痛い


川石:あぁ、すまない、実は、この間の事件の話だがね※


瀬名:※あー、それはもういいや、終わったから


川石:むむ?それはどういうことだい?


瀬名:なんか、犯人の目星が着いたから捜査一課に回されたよ、なんか悪ぃな、川石


川石:…それ、本当かい?


瀬名:あぁ…なんでそんなこと聞く?


川石:…セナくん、これから話すことは、僕の独り言だ…聞き流すもよし、しっかり受け取るもよし、好きにしてくれたまえ


瀬名:?なんだよ急に


川石:僕はこの連続殺人事件について調べていた…そして、犯人がわかった 


瀬名:!?


川石:この事件の犯人は、元警察官、そして…最近、仮出所《かりしゅっしょ》したばかりだ、「君なら」、その元警察官が誰か、わかるはずだよ


瀬名:…それって…まさか…


川石:そう、君の愛する人を奪った相手だ


瀬名:っ!?…なんで、あいつを外に出しやがった…それに仮出所にはまだ早いはずだ…頭おかしいんじゃねえのか!?


川石:大声出すな、耳が痛いよ…僕が怒鳴られるのは筋違いだが…けど、彼の父親の権限、といえば分かるかね?


瀬名:そう言えば、あいつの父親…


川石:そう、警察庁の上層部だ


瀬名:!!そうか…だから、捜査一課に回せって命令が来たのか?…ちっ、どいつもこいつも…この世界にはろくな奴がいない…


川石:…そしてな、僕はもう1つ、気になることがあった


瀬名:?


川石:この前、大手企業の若手会長が殺された事件があっただろう?しかも、そいつはなんと、連続殺人事件の犯人だった


瀬名:あぁ…それが?


川石:僕は興味が湧いてね、その事件についても色々と単独で調べてみたんだ


瀬名:はあ!?また危険なことを…


川石:こーらこら、話は最後まで聞きくもんだよ、瀬名くん…それで、僕はなぜ、証拠すら見つかってもいないのに、被害者が連続殺人の犯人という事がわかったのか、気になってね…色んな手を使って手当り次第に探りを入れた……そして、見つけたよ


瀬名:見つけた?


川石:その会長を殺した人物を、ね…この人物が殺したのは、この会長だけじゃない、未解決事件の犯人を手当り次第に殺しているんだ、証拠も残さずに…それで僕は思った、こんなことができるのは、警察内部の人間なのではないか、そして、警視庁のデータベースをできうる全ての力を使ってハッキングして、ついにその犯人の爪痕を見つけた…見つけたんだよ!僕の頭脳は、この連続殺人犯よりも優れていたってことさ!いやぁ僕って天才だよねぇ!


瀬名:それはどうでもいい、それで?


川石:はぁ、相変わらず冷たいなぁ…まあ、いいだろう、それで君に、キチンと伝えておこうと思ってね…


瀬名:は?


川石:未解決事件の犯人を次々と殺している、その人物の名前を、ね…






            廊下を走る瀬名。

            事務所の扉を勢いよく開ける

 




瀬名:っ!!


皆森:うわっ!?びっくりした…もう、電話長いですよ瀬名さ※


瀬名:※石塚さんは!?


皆森:え?


瀬名:石塚さんはどこだ!?


皆森:い、石塚さんなら…10分前くらいに出ていきましたけど…どうしました?


瀬名:…止めないと…あの人止めないと… 


皆森:え、どうしたんですか?何が※


瀬名:※お前は留守番してろ!!


皆森:は!?ちょ、瀬名さん!?…もうなんなのよ、石塚さんといい、瀬名さんといい……ん?あれ?電話…?






             川石に電話をする瀬名






瀬名:川石!石塚さんの居場所がわかるか!?


川石:はぁ、君は本当にいきなりだねぇ、いきなり電話切って、またいきなり電話かけてきて──


瀬名:早くしろ!


川石:ハイハイ、言われなくても、もうやってるよ…彼のケータイのGPSをキャッチした、今キミのスマホに位置情報を送るから、あとは頑張ってね、セナくん







              走る音。瀬名がとある廃墟の階段を駆け上がっていく。

             普段の瀬名とは考えられないほどに、ひどく焦り、恐怖したような、必死な表情だった…

            勢いよく、屋上への扉が開かれる。

            しかし、時すでに遅く、目の前には、肉塊となった1つの死体と、血塗れの後ろ姿…瀬名は、その姿をよく知っていた。

           それは、石塚真琴の背中だった…。







瀬名:はぁ、はぁ……っ!?


石塚:…よぉ、瀬名、どうした?


瀬名:い、石塚さん…本当に…あんたが、殺したのか……なんで……なんでだよ!!どうして、こんなこと…!!答えろ!!


石塚:なぁ、瀬名…こいつ、今回の連続殺人の犯人で、お前の彼女を殺したやつ、だよなぁ…


瀬名:っ!?…石塚さん…あんた…自分のしてることが分かってるのか…!?それでも刑事かよ!?


石塚:ああ、分かってるよ?…裁かれない犯罪者に裁きを下してる、これが俺の仕事だ 


瀬名:っ…上層部に命令されてるのか…そうなんだよな?…誰だ!誰に言われてこんなこと…言えよ!!


石塚:そんなことされてねぇよ…全部、俺一人でやった事だ、上は関係ない


瀬名:…嘘だ…そんなの嘘だ…


石塚:サイコパスってのはさ、普段普通に見えるやつが多いんだよ…俺も、そのうちの1人だった…それだけだ


瀬名:やめてくれ…そんなの、俺は信じねえ…


石塚:お前が信じようが信じまいが、結果は変わらない…お前の知ってる石塚真琴は、もう居ねえんだよ…俺はさ、許せなかったんだ…人殺して平気でのさばってる奴らが…まだこの世でのうのうと生きてるなんてな…だから、俺がそいつらを裁いてやろうと思った


瀬名:…石塚さん、今ならまだ間に合う…自首してくれ…俺はあんたを逮捕したくない…


石塚:ははっ…お前は本当に、爪が甘いんだよ、瀬名…俺は立派な犯罪者、そしてお前は刑事だ、捕まえるのは当たり前だろ?それなのに、犯人に向かって、自首してくれ、なんてな…


瀬名:俺は…あの時…あんたが……あんたが、心も何もかもズタボロになった俺に、未解決課で声をかけてくれて…本当に感謝してんだ…あんたがいなかったら、今の俺はいなかった…あんたは俺にとって、ヒーローだった、ヒーローだったんだよ……それなのに、なんで…なんでこんなことになっちまったんだよぉぉぉぉ!!!!


石塚:…ヒーローなんて、とんでもねえ…俺ぁな、ただのろくでなしだよ…3年前の事件の時もそうだった…妻や娘も守れない、目の前の犯人を殺すことしか頭になかった、心の汚ねえろくでなしだ…さぁ、早いとこ捕まえてくれ


瀬名:……


石塚:…瀬名ァ!!?何やってる!?早くしろ!!!


瀬名:っ!


石塚:…ダメだな、お前は…刑事失格だ


瀬名:失格でもいい…世話になったあんたを、俺は逮捕できない…


石塚:はは、そっか…でもな、俺も自首する気はサラサラないんだわ、悪ぃな


瀬名:!?






                 持っていた拳銃をこめかみに当てる石塚






瀬名:は…?石塚さん、なんで、拳銃なんか出して…


石塚:これから未解決課はお前に任せた


瀬名:!!いや、待ってくれ、早まるな石塚さん!!死んじゃダメだ!!


石塚:すまん…もうこれしか残ってねえんだよ…許してくれ、瀬名…


瀬名:石塚さん…けど※


石塚:※頼んだぞ!…瀬名京介


瀬名:!!まっ…



(ES銃声、石塚、死亡)


        

瀬名:っ…あ…あぁあ…あぁぁぁぁああぁぁぁ!!!!!





 





川石(ナレ):1発の銃声が、夕暮れのビル街にこだまする。しわがれたカラスの鳴き声が、遠くから聞こえた気がした…それから数日後…石塚真琴は、連続殺人犯として、その死体と共に、警視庁に書類送検された








瀬名:……


皆森:…瀬名さん…


瀬名:…なんだよ…


皆森:私、まだ信じられないです…石塚さんが…


瀬名:俺だって…信じらんねぇよ…


皆森:…私、あの時…石塚さんから、電話貰ったんです…


瀬名:…え…


皆森:録音しとけって言われたんで…今流します…






             皆森はスマホを出すと、録音した声を流した






石塚:あー、皆森、ちゃんととれてるか?よし、うーんと、俺はこれからさ、ちょっと遠くの方に行くことになったんだわ…まあ、左遷《させん》ってやつ?(笑)だから、未解決課はお前ら2人に任せた!頑張れよ!んじゃ!




皆森:…私もはじめは訳が分からなくて…瀬名さんが石塚さんのこと必死に探してるって言ったら、あの人、急に録音しろとか言い出して…石塚さん、分かってたんですね…こうなることも、瀬名さんのことも、何もかも全部……だから…


瀬名:……ほんと、どいつもこいつも…ろくでなしばっかだな…俺も含めて…みんな…


皆森:え?


瀬名:皆森、石塚さんの最後の頼みだ、未解決課を潰さないように、頑張ろうぜ


皆森:…はい!瀬名さんの背中は、私が守ります!


瀬名:…っはは…それは俺のセリフだっつうの…




瀬名(M):ろくでもない世界に生まれて、ろくでなしのヒーローに出会って…ろくでなしの俺がいて…ほんと、毎日ろくでもないことばっかだけど…それでも、俺は刑事として、これからもこの未解決課で過ごして行くんだろう…俺には、石塚さんのようなことは真似できない…けど、犯罪を少しでも減らすために…未解決課に回ってくる仕事が、少しでも無くなるように…その願いが叶うなら、俺は悪魔にだって死神にだって祈ってやるよ…俺たちは、ろくでなしのヒーローだ







-終-