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九条 顕彰・台本置き場

Forget-me-not -約束の記憶-

2019.04.12 14:55



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こちらは声劇台本となっております。

コピーなどでの無断転載、自作発言、二次創作はおやめ下さい。

ネットでの生放送(ツイキャス等)のご使用に関しては自由です。

※YouTube等での音声投稿や有償での発表(舞台での使用等)に関しては作者の方に相談してください。

使用報告なしで構いませんが、なにか一言あるととても励みになります。飛んで喜びます。

物語の内容にそっていれば、セリフアレンジ・アドリブは自由です。

大幅なセリフ改変はおやめ下さい。


 


────この日を、待っていました…さあ、約束です…私を、殺してください


これは、不治の病を負った少女と、とある死神のお話。勿忘草の花が、枯れるまでのお話。






演者:2人


上演時間:約30分


演者比率

♂:1 ♀:1




登場人物

ルーナ・アンジェ♀

不治の病を負った少女。

ラングレン(略称:グレン)♂

死神の男。


※作中、ラングレンのセリフ語尾に「♪」の記号がありますが特に意味はありません、「♪」は気にせずに普通にセリフとして読んでください。



役表

ルーナ:

ラングレン:




セリフ




ルーナ(M):私の命は、この「勿忘草(わすれなぐさ)」が枯れるまで



グレン:…ふふん、ターゲット、みっーけた♪







──とある病院の一室、窓の外をベットの上から眺める少女







ルーナ:今日も、いい天気ね…はぁ…鳥はあんなに高く飛べるのに…なんで私はこんな病院のベッドの上で……まるで羽をもがれたチョウチョの気分だわ… 



ルーナ(M):私はルーナ・アンジェ、小さな頃から病弱で、体が弱く、ほかの子たちのように、外で走り回ることさえも、簡単にこなすことは出来なかった…そんなある日、お医者様から宣告された病名…不治の病だった…あと何年も生きられない、そう聞いた時は、とてもショックで、声すら出なかった…



ルーナ:…どうせなら、私の人生最大級のおかしな出来事でも目の前で起きてよ…1日中ベットの上で外を眺(なが)めるのは、もうつまらないわ…


グレン:へぇ、つまらない、か♪


ルーナ:!?






──振り返ると、真っ黒な服装の見知らぬ男が立っていた






ルーナ:あ、あなた…誰!?どこから入ったの!?ここはお医者様と看護婦さんしか入れないはず…


グレン:あー、それなら心配ご無用さ、そのお医者さまってのには、俺の事は「見えない」から


ルーナ:…え?


グレン:俺は、「死神」だからな♪






──空気が一瞬固まる






ルーナ:…えーと……あの、精神科病棟(せいしんかびょうとう)なら上の階ですよ…?


グレン:おいコラ!人を精神疾患者(せいしんしっかんしゃ)みたいに言うな!それに俺はいたって正常だが?


ルーナ:…正常な人がいきなり「俺は死神だ」なんて言わないと思うんだけど…


グレン:あー、お前、信じてねぇな?


ルーナ:当たり前でしょ、嘘もいいところよ


グレン:ふーん、そうか…じゃあ、俺が死神だって言う証拠を見せてやる、その花瓶の花をひとつよこせ


ルーナ:え、これ?






───ルーナ、ラングレンに花を渡す、すると、花はみるみるうちに枯れていく






ルーナ:!?…うそ…手に持っただけなのに、花が…枯れた…


グレン:どぉだ?これで信じたろ?♪ 


ルーナ:どんな手品を使ってるの!?私にも教えて!


グレン:意地でも信じねぇ気だなこのお嬢ちゃんは!…手品でもマジックでもなんでもねぇし、種も仕掛けもない、いい加減、現実を受け入れろ


ルーナ:…じ、じゃあ…あなた、本当に、死神さんなのね…?


グレン:だから、さっきからそう言ってんじゃねぇかよ


ルーナ:…死神さんが来たってことは…もしかして…


グレン:あぁ、お嬢ちゃんのお察しの通り…お前はもうすぐ死ぬ


ルーナ:!…そう、なんだ…


グレン:まあ、今更(いまさら)命乞(いのちご)いしても遅いけどなぁ♪


ルーナ:…そんな、命乞いなんて…しないよ…


グレン:ふーん、今回のターゲットは素直で扱いやすいな、もう少し怖がったっていいんだぜ?なんならそれらしくもっと怖がらせ※(ルーナのセリフ被せ)


ルーナ:※ねえ、死神さん…私を今すぐ殺して


グレン:……………は?


ルーナ:アナタ死神さんなんでしょ?なら、今すぐ殺してよ


グレン:…何言ってやがる…お前、死が怖くないのか?


ルーナ:怖くないかいって言われれば、怖いわ…けど…


グレン:けど?


ルーナ:…私なんて、生きててもしょうがないもん…小さな頃から体が弱すぎて友達とも遊べなくて…いっつもひとりぼっち…親にも見捨てられて、今はこの病院が私のお家みたいなものよ…もうイヤなの、1人でこの窓の外を眺(なが)めるのは……イヤなの…


グレン:……まあ、お前の言いたいことは何となく分かった…けどナ?俺にも俺のルールと言うか、「死神のルール」ってモノがあるんだよ…お前の寿命はまだ残ってるからな、残念だが、今すぐは殺せねぇ 


ルーナ:…じゃ、いつなら、殺してくれる? 


グレン:うーん、そうだな……んじゃ、その花瓶の花が全部枯れる頃…そん時に、お前の生命(いのち)を取りにくる、だからそれまで勝手に死ぬんじゃねえぞ?この窮屈で退屈なベットの上でいい子で待ってたら、ちゃんと俺様が、ご褒美(ほうび)に殺しに来てやらぁ♪


ルーナ:この花が、枯れる頃………わかったわ…待ってる


グレン:ふふん、死神さんとの約束、だせ?ルーナ・アンジェ


ルーナ:え、なんで、私の名前……


グレン:死神様はお前のお医者様より、ターゲットであるお前のことをなんでも知っているのだ~


ルーナ:…ふはは…何それ


グレン:お、ようやく笑ったな


ルーナ:え、私、笑ってなかった?


グレン:全然、笑顔のえの字もなかったし、まるで石膏像みたいな顔してたぜ、お前、けど、今はちゃんと人の顔だ♪


ルーナ:石膏像みたいなって、酷いなぁ…ふふ…ねぇ、死神さん


グレン:なんだ?


ルーナ:お名前あるの?


グレン:お、俺の名前か?いいかよく聞け、俺様は世紀の大死神(だいしにがみ)、ラングレン様だぁ!まあ、グレンとでも呼んでくれ♪ 


ルーナ:グレン…待ってるから、殺しに来てくれるの


グレン:おお、クビ長〜くして待っとけ♪



ルーナ(M):そう言うと、死神さん…グレンは煙みたいにふわっと消えていった…私は、花が枯れるのを待っていた…






───数日後






ルーナ(M):グレンと会ってから、幾日(いくにち)か過ぎたある日、私は、看護婦さんが嫌味(いやみ)のように毎日毎日とりかえる花瓶の花を、ベットの上で終始(しゅうし)睨(にら)みつけていた




ルーナ:これじゃいつまで経っても枯れないじゃないの…あーあ、花、早く枯れないかな… 


グレン:んー?なんだ〜?そぉんなに俺に会いたかったか?


ルーナ:わぁ!?グレン!?い、いつの間にそこに!?


グレン:ほほ~、なぁんだなんだ、この花は見に来るたびにいつもイキイキしてるな♪…それに比べてお前と来たら、まるで石の下のダンゴムシみたいな顔しやがって


ルーナ:ダ、ダンゴムシ…?!失礼な!それに、私はあなたに会いたかったわけじゃないわ!


グレン:知ってるさ、俺じゃなくて、命を狩られんのを待ってんだよな?


ルーナ:…っ


グレン:ほんと、可愛くねぇなぁ


ルーナ:可愛くなくて結構です


グレン:あぁ~そうですかいそうですかい 


ルーナ:…可愛くなったら、殺してくれるの?


グレン:はぁ?馬鹿かてめぇは、この花が枯れる頃っつったろ


ルーナ:じ、冗談なんだけど…でも、看護婦さんが毎日毎日、このお花取り替えてるから、ちっとも枯れやしないわ…


グレン:そーかそーか~、じゃ、もうちょいかかるかもなぁ~♪


ルーナ:いちいちムカつくわね…ねぇ、この花、あなたの力で枯らしちゃダメなの?


グレン:それは俺のルールに反する


ルーナ:あなたのルールってごちゃごちゃしてて難しいわ…


グレン:お褒めの言葉ありがとう


ルーナ:褒めてないんだけど…


グレン:おや、それは失敬…んじゃ、またなぁ~


ルーナ:あ、ちょっと!!……消えた…もう、なんなのよ、あの人は…いや、あの死神さんは……ふふ、明日も、来るかな……




ルーナ(M):いつの間にか、私はグレンが病室に現れるのを楽しみにしていた、この病院で、唯一(ゆいいつ)の私の話し相手……でも、花の方は一向に枯れる様子はなかった…






───数ヶ月後、ルーナ、熱を出し寝込んでいる


 




ルーナ:はぁ…はぁ…ゲホッゲホッ…



ルーナ(M):あれから数ヶ月、グレンはあれきり、私の前に現れなかった…かわりに私は、流行病(はやりやまい)の熱病(ねつびょう)にかかってしまっていた…不治の病なうえに、熱病なんて…ついてない、そう思っていた…この時ばかりは、お医者様も看護婦さんも、私に付きっきりという訳にもいかず、病院内は流行病の患者で溢(あふ)れかえっていた…こんな辛い時は、いつもお医者様がたくさん励ましてくれた…でも、私が今、1番聞きたい声は…1番見たい姿は……



ルーナ:ゲホッ…はぁ、はぁ…グレン……ねえ、いないの…?






───しんとする病室






ルーナ:…うぅ…身体中が痛い…熱で喉が焼けそう…私、もうすぐ死ぬのかな…………いやだ……こんな真っ白な部屋で、ひとりぼっちで死ぬのは…寂(さみ)しい、寂しいよ……なんで、こんな時に傍(そば)にいてくれないの……約束、どうしたの………もしかして、もう、忘れちゃったの?…私のことも、約束も…ねぇ……返事してよ…死ぬ前に、あなたの声が聞きたい…あなたの姿が見たいの……ねえ、グレン…!


グレン:よォ~、ずいぶん久しぶりだなぁ、お嬢ちゃん♪


ルーナ:…!


グレン:いやぁ~もう、参っちまうよ、例の流行病(はやりやまい)?だったか?そのせいで俺の仕事が増えちまってよ~、もうてんやわんや、ほんと、残業代払えって感じ~♪


ルーナ:…グレン…


グレン:んだよ、そんな泣きそうな顔しなくてもいいだろうが、もっと喜べ!約束通り、お前を「殺しに」来てやったのによォ♪


ルーナ:……え?


グレン:…見てみろよ、花瓶…花、枯れちまったな…看護婦さんが世話しないからか?


ルーナ:あっ…


グレン:だーから言ったろ?いい子で待ってたら、殺してやるってな


ルーナ:…約束…覚えててくれたんだ…


グレン:俺様は1度した約束は破らない主義なのだ~♪


ルーナ:…もう、忘れられたのかと、思ってた


グレン:はぁ?聞き捨てならねぇなそいつは、俺がいつ何を忘れたって?


ルーナ:だって…ずっと顔見せてくれないし…忘れられてるんじゃないかって、心配になって……


グレン:へぇ~…その忘れられてるってのは、約束の事か?それとも…お前自身のことか?


ルーナ:!…ど、どっちも…


グレン:ふはっ、あはははは!ほんと、可愛いやつだな♪そぉんな心配しなくても、俺は約束もお前のことも忘れたことなんて1度もねぇよ♪


ルーナ:…っ……(ルーナ、泣く)


グレン:おいおい、何泣いてんだ、可愛い顔が台無しだぜ、お嬢ちゃん?


ルーナ:っ……ばかっ…グレンの、ばか…


グレン:あはは、俺を罵(ののし)るくらい元気なら、もうちょい生きてみるか?


ルーナ:なっ…!


グレン:冗談だ、安心しろ、その苦しさから解放してやる






───グレン、手を頭上にかざし、大鎌を出現させるズシッと重い音を立て、持ち上げる







グレン:さぁ、今日がお前の命日(めいにち)だ、ルーナ・アンジェ…最期に言い残す言葉はあるか?


ルーナ:…グレン…ちゃんと、約束守ってくれて…ありがとう……私を、殺して…


グレン:…最後の言葉、しかと受け取った……この苦しみから解放してやろう…ルーナ、またどっかで会おうぜ、来世でな♪


ルーナ:ふふ…キザな……ことば、ね………






───グレン、大鎌をルーナに向けて振り下ろす、ルーナの病室に響きわたる、心肺停止のピーーーという音…






グレン:ルーナ・アンジェ…アンジェ…天使、ねぇ…お前は天使というより、むしろ小悪魔みたいなやつだったよ……ほんと、ここまで殺すことに心が揺らいだやつ、他にいなかったぜ…来世では、こんな会い方したくねぇな……お前がこの数ヶ月、少しでも生きたいと思えたなら、俺は嬉しいぜ……さよなら、天使(アンジェ)様





ルーナ(M):これは、不治の病を背負ってしまった少女と、優しい死神さんのお話。私を救ってくれた、ヒーローさんのお話。




グレン:さぁ、今日もお仕事と行きますかぁ♪いいかぁ、お前ら、よく聞け、俺様は世紀の大死神、ラングレン様だぁ♪…なぁ、死ぬのは怖いだろ?そうだよなぁ、普通はそうだ…でもそんな俺にも怖いものがあるんだ…勿忘草(わすれなぐさ)って花だ…その花を見るとな、思い出しちまうんだよ、とあるお嬢ちゃんのことを…そのお嬢ちゃんの部屋に、最期に花瓶に飾(かざ)られてた枯れた花が、勿忘草だったんだよなぁ…勿忘草の花言葉、知ってるか?「私を忘れないで」…だとよ…おっといかん、無駄話はここまでにするか!んじゃ、おまえの魂、いただくとしようかな♪…お前が生きたいと思えたその時に、な…?






-終わり-