九条 顕彰・台本置き場

4月1日~嘘つきからの手紙~

2019.04.12 15:26


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大幅なセリフ改変はおやめ下さい。






──ある日、私の元に届いた一通の手紙…それは、去年亡くなった、私の婚約者からでした…






演者 2人


比率

♂:1 ♀:1


上演時間:約30分





登場人物

アリッサ ♀

ベクター ♂



※今回泣きの演技が終盤にあります…が、好きなように演じてください…難しいことを要求してしまって大変申し訳ございません…




 


役表

アリッサ:

ベクター:







セリフ




アリッサ(M):これは、とある夫婦の、結婚記念日のお話…4月1日…エイプリルフールの日の、お話…






アリッサ:んー、今日は何だか少し寒いわね…えっと、今日届いた郵便は、っと……!…この、便箋(びんせん)は…





アリッサ(M):突然届いた、夫からの手紙…それは、「届くはずのないもの」だった






── 一人の女性が、暖炉の前の椅子に座っている。手にはひとつの便箋、差出人の名前は、ベクター・リオネル







アリッサ:…アリッサ・リオネル様…ベクター…なんで、今更手紙なんて…






──封筒を開けるアリッサ






アリッサ:…『アリッサ・リオネル様…君が今、この手紙を読んでるってことは、今日が4月1日の午後で、僕はもう、この世にいないってことだ……』







───ベクターの手紙のM







ベクター(M):───アリッサ・リオネル様、君が今、この手紙を読んでるってことは、今日が4月1日の午後で、僕はもう、この世にいないってことだ…そういえば、今日は結婚記念日だったね!…なんでエイプリルフールの日に、君に結婚を申し込んだりしたんだろうか(笑)…あの日、君を大学で見かけてから、ずっと好きだった…一目惚れだったんだ…勇気出して思い切って告白したのに、嘘つき、なんて思われるとはな(笑)…あの時のことは、今でもよく覚えてるよ…


 







──回想シーン、大学時代の2人…2、3秒間を開けて








ベクター:あ、アリッサ!あのさ…君に話があるんだけど…


アリッサ:ん?なに?


ベクター:あの…その…


アリッサ:?…ふふ、なぁに、じれったいわね〜、ベクターらしくない、一体どうしたの?


ベクター:……っ…ぼ! 


アリッサ:ぼ?


ベクター:…(深呼吸)…僕と、結婚を前提に、付き合って欲しいんだ!


アリッサ:…え……?


ベクター:だ、だからっ…そのっ…僕のお嫁さんになってください!!


アリッサ:…ぷっ…あはは! 


ベクター:な、なんで笑うんだよ…


アリッサ:だって、まるで子供みたいに言うんだもの!あはは!


ベクター:おまっ…こっちは真剣なんだぞ!


アリッサ:…え?


ベクター:えっ?て…だから、本気なんだ…君を、僕のお嫁さんに欲しい


アリッサ:…本気……え、本当に…?


ベクター:こんな時に嘘ついてどうするんだよ!ああ、もう…今までの人生の中で1番勇気を使ったのに、なんだか言って損した気分だ…


アリッサ:ご、ごめんなさい!あの、私てっきり、今日がエイプリルフールだから…冗談なのかと…


ベクター:…え?……あ!うそ…今日ってまさか…4月1日!?…うわあ…最悪だ…あっ!いや!本当に本気なんだ!だからその…うああもう…やり直してえ…


アリッサ:…いいわよ…


ベクター:…へ?


アリッサ:っ…だから!…あなたのお嫁さん…なっても、いい…


ベクター:…本当に…?


アリッサ:確かに、今日はエイプリルフールだけど、だけど!…私も嘘はついてない…本当に、本気よ、ベクター


ベクター:………


アリッサ:ベクター?返事くらいしなさいよ?


ベクター:…ぃっ……やったぁぁぁぁ!!!


アリッサ:ふぇ!?なに!?


ベクター:アリッサ!君を必ず幸せにするよ!!





──喜びのあまり大声を上げ、アリッサの両手を握りしめるベクター






アリッサ:っ!はっ!?ちょ、ベクター声大きい、はずかしい…


ベクター:あはは、ごめんごめん、アリッサ、改めて、これからよろしくお願いします


アリッサ:…うん、こちらこそ…よろしくお願いします







──回想終わり







アリッサ:…ふふ、確かに、そんなことあったわね…あの時のことは私もまだ覚えてるわ…本当は、ちょっとだけ、冗談だと思ってたけど…あれだけ熱のある告白だったもの…冗談なわけ、ないのにね…







───ベクター、手紙のM、アリッサと手紙で会話するような感じ








ベクター(M):そんなこんなで、まぁ、色々あったけど、君と過ごした時間は、すごく眩しくて、楽しい日々だった…けど、もう結婚記念日、かぁ…1年が経つってのは、早いもんだなぁ…今日は…ご馳走(ちそう)、だったのかな?(笑)例えば、ハンバーグとか?


アリッサ:ふふ…ええ…そう…ご馳走…に、するはずだった…あなたの大好きなハンバーグよ…


ベクター(M):あはは、そうだろうな…君は僕のことはなんでもお見通しなんだなぁ…でも、君こそ、ハンバーグ以外まともに作れないじゃないか(笑)


アリッサ:まあ、ほんと、意地悪(いじわる)な言い方ね…これでも、最近はなんでも作れるようになったのよ?


ベクター(M):そうか、でも…もっともっと、君の手料理を食べたかったな…何故、こんなことになってしまったのか…事の発端(ほったん)はあの日…僕らが結婚して間もない頃だったね…


アリッサ:…そう…あの日…あなたの誕生日の日に……あなたは私の目の前で倒れたのよね…慌てて救急車を呼んで、それで…ほんと、飛んだサプライズだったわ…







──回想シーン、病院にて…2、3秒間を開けて









ベクター:……ここは…?


アリッサ:!!ベクター!気がついたのね!? 


ベクター:…あぁ、おはよう、アリッサ…


アリッサ:っ…おはようじゃないわよ!…すごく心配、したんだから…


ベクター:あはは、すまない…それで、ここは? 


アリッサ:病院よ…あなた、急に倒れたから……慌てて救急車を呼んだの…


ベクター:そうだったのか…


アリッサ:身体の調子はどう?


ベクター:…うーん…頭が少しぼーっとしてる感じ…でも、もう大丈夫だ、ごめんな、アリッサ


アリッサ:謝らないでベクター、きっと、仕事の疲れが溜まってたんだわ…私のことは気にしないでゆっくり休んで


ベクター:あぁ、そうするよ……ごめん…







──回想終わり







ベクター(M):……実は、あの時、君にひとつだけ、嘘をついていたことがあるんだ……僕が倒れた理由、そして、僕の病の事…本当は、僕自身すでに分かっていたんだ…



アリッサ:えっ…どういう事…?



ベクター(M):ある時、身体に違和感を感じて、病院へ行って…余命わずか、もう治る見込みはない…そう医者に言われた時は、すごく辛かった…



アリッサ:そんな…あなたは知っていたのに…何故それをすぐに私に言わなかったの…?



ベクター(M):君に心配をかけたくなかった…泣かせたくなかったんだ……君の前では平然としていたけど……本当は、君を1人にしてしまうと言う恐怖と、病の痛みで苦しかった…辛かった…怖かった…本当、もっと早く言うべきだったね…遅くなって、ごめん



アリッサ:…本当に…今更、遅いわ、ベクター…



ベクター(M):…ねぇ、去年のエイプリルフールの時のこと、覚えてるかい?



アリッサ:ああ…あの日ね…あれは、ひどい嘘だったわ…







───回想シーン、病院にて…2、3秒間を開けて







ベクター:…ゲボっ…






──ドアのノック音、アリッサが入ってくる






アリッサ:こんにちは、ベクター、お見舞いに来たわよ


ベクター:…あぁ、アリッサ、いらっしゃい


アリッサ:ふふ、今日はリンゴを持ってきたの、好きでしょ?


ベクター:はは、君は本当に、僕のことはなんでもお見通しなんだな(笑)


アリッサ:ふふふ、自慢の奥さんでしょ?


ベクター:自分で言うのか(笑)


アリッサ:いいじゃない、別に、今、皮を向くわね


ベクター:…なぁ、仕事、大変じゃないか?


アリッサ:あぁ、ちょっとね、でも、平気よ、あなたのためですもの、こんなの全然苦じゃないわ


ベクター:…ごめん、君に、僕の代わりに働かせてしまって…僕がこんな体じゃなければ…


アリッサ:なぁに、どうしたの急に?大丈夫よ、お医者様も根気よく付き合って行きましょって言ってたじゃない!めげずに頑張りましょう?ね?………ベクター?


ベクター:……もう、頑張れないんだよ、アリッサ…僕はもう、ダメなんだ…


アリッサ:…なに、それ……どういう意味…?


ベクター:今日、医者が言ってた…僕はもう、あと3ヶ月も持たないだろうって… 


アリッサ:!?…そんな……そんなの嘘!!なんでそんな事言うの!!あなたは大丈夫よ!まだ若いんだし、体力があるから、治る可能性も充分にあるってお医者様が言ってたじゃない!……そんな…そんなのって…


ベクター:……なぁんてね♪


アリッサ:…え…?


ベクター:あはは、嘘だよ、うーそ!ほら、アリッサ、今日は何月何日?


アリッサ:え…今日?…4月1日……ああ!!もう!ベクター!心臓に悪い嘘は止めてよ!!


ベクター:あはは!ごめんって!


アリッサ:はぁ、もうほんとに…なんでそんなひどい嘘つくの…本気で心配したじゃない…


ベクター:…ごめんな、アリッサ……でも、この嘘は、エイプリルフールのジンクスを信じて言ってみたんだ!


アリッサ:…エイプリルフールの、ジンクス?


ベクター:うん、エイプリルフールについた嘘は、1年間、本当にならないんだってさ!ということは、僕はあと1年間、絶対に死ぬことは無い、いや、下手したら病気が治って退院するかもしれない、ってこと!


アリッサ:…それ、私を慰(なぐさ)めてるつもり?


ベクター:うぅ…本当にごめん…確かに、これはひどい嘘だった


アリッサ:…ふふ、そのジンクス、本当だったら最高ね!


ベクター:!…あぁ、そうだな、あはは!


アリッサ:…ねぇ、ベクター


ベクター:ん?


アリッサ:このジンクスが本当になって、あなたの病気が治ったら、一緒に、旅行に行きましょう、長い旅行!


ベクター:…あぁ、いいね!行こう!


アリッサ:後、水族館にも行きたいわ!


ベクター:はは、君は行きたいところが沢山あるんだな


アリッサ:そりゃそうよ!…あなたとの思い出、まだまだこれからなんだもの…行きたいところも、見たい場所も、たくさんあるわ


ベクター:…そうだね、たくさん出かけよう、アリッサ


アリッサ:…あ、そろそろ時間になるから、今日は帰るね、また明日、ベクター


ベクター:あぁ…またね、アリッサ







───回想終わり…(…ここからだんだん感情がたかぶって泣きの演技でお願い致します…)







アリッサ:「またね、アリッサ」…それが、あなたの最期の言葉だったわね……結局、ジンクスの魔法は効(き)かなかった……あの嘘の日からすぐに容態が急変して…あなたは本当に、私の目の前からいなくなったわ……綺麗な顔で、目の前で、息を引き取った………何が…何がエイプリルフールのジンクスよ……何が嘘は本当にならない、よ……あなたを失って1年、私がどれだけ悲しんできたと思ってるの…?それなのに、死んだ後に手紙を届けるなんて……すごい嬉しいサプライズだわ…さすが、私の旦那様ね…



ベクター(M):…本当に君には、嘘をつきっぱなしにして悪かったと思ってる…君を1人にする訳にはいかない…そう思って頑張ったんだけど……運命ってやつは時に残酷で…身体は悪くなる一方だった…だから、今までの嘘を、守れなかった約束を、この手紙に詰めこむことにしたんだ…ごめんな…本当にごめん、一緒にいることが出来なくて…水族館にも…旅行にも、連れて行けなくて…もっともっと、君と、たくさん思い出を作りたかった…もっともっと、君に言いたい言葉がたくさんあった……はは、ほんと、汚い字でごめんな…痛みで手が震えて、上手く書けないんだ…



アリッサ:…っ…いいのよ…ベクター…あなたは本当に、よく頑張ったわ…あなたのついた嘘は、最期まで、本当に綺麗な嘘だった……私は、あなたの妻で本当に良かったわ……あのね、私、あなたに、言いたいことがあるの



ベクター(M):…もっと書きたいことが!伝えたいことがたくさんあるんだけど…ごめん…もう、限界みたいだ……けど、最期に、これだけは言わせて…




(できれば同時に言ってください)

ベクター:君に出会えて良かった…

アリッサ:あなたに出会えて良かった…






アリッサ(M):これは、とても優しい、嘘つきの夫と、とても優しい妻の、幸せな結婚記念日のお話…4月1日…エイプリルフールの日の、お話…








-終わり-