40代からのボクシング 第3話『ジム初日』
いよいよ迎えたジム初日。仕事を終えて、電話で会長から教えていただいた持ち物、トレーニングウェア、水筒、タオル、綺麗に洗ったジョギングシューズをバッグの中につめて出発。緊張しながらも、楽しもうと、意気揚々とジムに向かいました。
初日まずこれだけは絶対に気をつけようと最初に決めたこと。
それは、『礼儀正しく』、『謙虚』に、『元気』にやること。バンドやってる人ならわかると思いますが、ライブハウスだと当たり前のこと、例えば髪型とか眉毛とか服装とか体の落書きとかが、世の中では警戒されたり、敵意を抱かれたり、煙たがられたりする場合もあります。私自身決して派手なタイプではありませんが、そういう経験は多々してきています。ゆえに、見た目のマイナス以上に『礼儀正しく』、『謙虚』に、『元気』にやることを常日頃から心がけています。もちろん初対面の方が多いこの日はなおさらです。そんな心意気でのぞみました。
ジム到着。いよいよ入口のドアをあけました。
こんばんは、と元気に挨拶しながら入っていくと、ものすごく感じの良い40歳くらいの方、会長さんですね、が笑顔であたたかく迎えてくれました。また、ジム内にはシャドーやミット打ちで汗を流している会員さんたち(4名くらいだったかな)からもこんばんはと挨拶がとんできました。ありがとうございます。そこから、『とりあえず見学しますか?』、『できれば今からやらせてください!』の流れで即入会。やると決めたらすぐがいいですからね。会長が入会書類の準備をしてくれている間、ジム内を見渡す私。リング、グローブ、サンドバッグなどなど、はじめて見るボクシング空間にワクワクでした。いいですねー。入会手続きを済ませると、キャンペーンでプレゼントがもらえるということで、簡易バンデージとグローブをいただきました。マイグローブにむっちゃ興奮ですやん。もちろんカラーは赤ですやん。ありがとうございます。目標は、『一年以内に人と対峙する』に設定しました。
更衣室にて。
着替えはじめようしたところ、こんばんはーと30代くらいのお兄さんが入ってきました。すると僕のズボンを見て笑顔で、
『あれ、こんなクラストの方いましたっけ?』
『今日からなんです、よろしくお願いします』
『僕、元プロボクサーでここのトレーナーなんですよ。よろしくお願いします』
なんて会話をしているお兄さんのカバンには、なんとPUNKTRIBEのパッチが!そして着替えたTシャツにはOLEDICKFOGGYのロゴが!なんだか趣味が合いそうな方でとっても嬉しくなりました。
ついに練習開始。
まずはストレッチから。股関節と肩甲骨中心のリズミカルなストレッチでした。会長がマンツーマンで丁寧に教えてくれました。そして次はボクサーの練習風景でよく見る、アレです、縄跳びです。ボクシングに大切なリズムとスタミナを鍛えられるそうです。これはバンドにも活かせそうでいいですね。3分飛んで30秒の休憩を2R。初めての縄跳びの1R目、開始2分あたりで肘の下あたりの筋肉が悲鳴をあげだしました。練習用の縄跳びって重いんですねー。飛ぶのもしんどいけど回すのもきつかったです。ひっかかったりしながらもなんとか2R終了。この時点でけっこうえらい。でもまだへこたれんぞと。
そして、シャドーからのサンドバッグ。
鏡の前で、基本的な構えを、次にジャブ、続いてストレートを教えていただきました。ヒザ、軸、回転、脱力、握り、呼吸 . . . 、覚えることはたくさんありますが、やっぱりパンチを教えてもらえるのはすごく楽し嬉しですね。何度も繰りかえし、しばらく練習した後、次サンドバッグいってみましょうということで、ついにバンデージとグローブを着用。ここ興奮ポイントでしたね。初めて柔道着の帯を締めた時に近い感じですかね。いくぜって感じです。サンドバッグってすんごい硬いってきいたことあったんですが、その情報ありきだったからか、そういうタイプなのか、自分が思ったよりは柔らかかったです。そのサンドバッグに先ほど教えてもらったジャブとストレートを駆使し、さらにワンツー、ワンツースリー、左左右、左左右右、など会長からの声で打ち込んでいきます。こちらも3分打って30秒の休憩を2Rだったかな、すごく楽しかったです、が、もちろんすんごくえらかったです。
ついに、リングの上へ。
次ミットいきましょうってことで、ついに人生初のリングの上に立ちました。ここももちろん興奮ポイントです。が、その興奮とはうらはらに、私のHP、ヒットポイント、すなわち体力はもうかなりあぶないところまで削られておりました。なんとか気力を振り絞り、会長のかまえるミットめがけて、ジャブとストレートを打ち込んでいきます。テレビとかでみる、あの、パーン、パンパーンみたいな音はもちろん出せず、ポスポスなんとか打ち込んでいきます。こちらも3分打って30秒の休憩を2Rの予定でしたが、2R目開始すぐ、わたしのHP、ヒットポイント、すなわち体力は底をつきました。呼吸がしんどすぎ膝をついてしまいました。その姿を見た会長から、今日はここまでにしときましょうかと声をかけていただきミット打ち終了。そのままジムの隅っこの椅子に座り込む私。呼吸が戻ってくると悔しさがやってきました。ぐぐぐぐうううう。悔しい。ここ数年は柔道の乱取りも3分やったら10分休むみたいな自分に超甘々な感じでやってて、それでも何回も吐きそうになってたから、新しいことにチャレンジしたらなおさらまあそりゃそうだと。まさにこれが今の自分の体力の限界。この悔しさをバネにしてやるしかないですね。
クールダウンのストレッチ。
最後のストレッチは世の中でよくやる感じのストレッチをして終了。お疲れ様でした。一番最初の書類を書いているところから、最後のここまで、けっこう頻繁に、こんばんはー、と会員さんたちが練習にやってきました。その日は私が見ただけでも20人くらいはいましたかね。本格的なプロの方や、フィットネスのマダム、私より年上の男性の方もちらほら。練習の合間合間にすこしずつ会長が紹介してくださいました。これは本当に本当に本当ですが、みなさん本当に和気藹々としとるんです。アットホームってやつです。まさに。会長の人柄でしょうか。本当にいいところに入会できたと思います。
最後に。
今日は最初ということもあるのでしょうが、お褒めの言葉もたくさんいただきました。また、リングの上で体力切れを起こしたことについても、みんな最初はそうですよ、縄跳びで限界を迎える人もいますよ、など温かい言葉をかけていただきました。そして、トレーナーの皆さんは口を揃えて『続ければ絶対にできるようになる』と力強くおっしゃってました。しんどいですけど、修行なのでしんどくて当たり前、めちゃ楽しいし張り切って続けていきます。
最後の最後にまた感動。
ジムから帰るときに会員の皆さんに挨拶すると、会長が出入口まで見送りに来てくれました。お疲れ様でしたと私がドアを開けてでていき、二、三歩進んでふと振り返ると、ガラス窓のむこうの会長はまだ頭を下げつづけてくれていました。最初の電話の時から感じていましたが、本当に人を大切に思える方なんだなと心底感じました。感動をありがとうございます。
つづく