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子どもたちに未来をわたしたい・大阪の会ブログ

ニュース冊子(2019年3月)後半に「放射線副読本」批判、最後に保養の家の報告等

2019.04.14 04:05

(報告)

今年2月10日「止めよう!放射能のばら撒き・学習交流集会in郡山」 2月11日「福島県内放射能のばら撒きを知るツア‐」に参加しました。 (H) 

  会場満席の「福島県郡山市での集会」では、まず「放射能ごみ焼却を考えるふくしま連絡会」から「現在日本政府と東電は放射能汚染ごみをどのように処理しているか」の報告がありました。「現在までに『仮設焼却炉』を福島市堀河町、伊達市霊山町、川俣町、国見町、郡山市日和田、田村市都路、相馬市光陽、南相馬市小高区蛯沢、飯館村小宮沼平と蕨平、浪江町棚塩、富岡町毛菅、楢葉町波倉、広野町下北迫岩沢、葛尾村、川内村五枚沢、二本松市東和に建設。『廃棄物処分施設』は、大熊町・双葉町に『中間貯蔵施設』を、楢葉町と富岡町の境に『放射性廃棄物埋め立て処分場・フクシマエコテック』を昨秋建設。ここでは8000~10万ベクレル /Kgまでの汚染ごみを処分する。環境省が69億円で買収、富岡町楢葉町にあわせて100億円の迷惑料を払い建設を強行した。そのほぼすべて事業主体は環境省、 受注業者は、新日鉄住金、JFE,神戸製鋼、三菱重工、大林組、日立造船、西松建設等のゼネコンである。事故後も大手ゼネコンだけがおお儲けしているという構図が続いている。」 「市民放射能監視センタ-ちくりん舎」から「止めよう放射能のばらまき~除染ごみ焼却とバイオマス発電を考える」の報告が続いた。「環境省は県内県外各地で、汚染土の「再利用」を進めている。木質バイオマス発電も「放射能ごみ処理」の柱に。燃やすと飛灰の放射能は100倍に濃縮される。微小粒子が大量に。吸い込むと内部被ばくの被害を受ける」と。その後、長野県飯山市の「木質バイオマス発電計画を白紙撤回させる!」、宮城県大崎市からの「農林業系汚染廃棄物焼却に反対する取り組み」、栃木県那須町の「汚染土壌の『再利用』実証実験を巡って」、福島県田村市大越町「計画中のバイオマス発電について」と、現地でのたたかいの報告が怒りと熱気にあふれる中で次々となされました。          


 「東北ショックドクトリン」の著者、古川美穂さんの講演は「3・11以降、安倍首相は『汚染水のアンダーコントロール』と『オリンピック開催』を決めて『創造的復興をめざす』と宣言した。~『創造的復興』とは、1995年の阪神淡路大震災で生み出された言葉。いま東北で亡霊のようによみがえり、東北の被災地を覆っている。~~それを『福島イノベーション・コースト構想』として華々しくたちあげ、浜通り地域等の産業を回復するためとし、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトとして進めているのだ。その費用は復興予算を使い、ここでもまた大手ゼネコンだけを大儲けさせている」というもので、「ショックドクトリン(惨事便乗型・火事場泥棒的資本主義)の中には、『水産特区構想』『カジノ建設計画』も含まれる」と話され、関西での状況ともつながる内容でした。

  この「福島イノベ‐ション・コ‐スト構想」には、一番重要な問題「住民の健康を守る研究や病院の増設、放射能汚染から市民・子どもたちの健康を守るための取り組み」について、計画も実施も全くありません。震災と原発事故の被害者・避難者、住民にとっての“イノベ‐ション”ではなく、原発事故と放射能問題は解決していると思わせ、ゼネコンを儲けさせるだけの事業展開なのです。被害者・県民の生活と不安は、いっそう無視され置き去りにされています。             -1- 


  今の県内には「福島イノベーション・コースト構想の概要図」が至る所に提示されています。  2月11日「廃棄物ばら撒きを知るツア‐」 に早朝、車5台で出発しました。 まず国道288号線沿いの伐採地を通り、田村 市で「バイオマス発電所建設絶対反対!これ 以上の放射能をまきちらすな!」ののぼりを目にしました。ここに市と田村バイオマスエナジ―㈱が木質バイオマス発電の建設計画を進めています。福島県内の木材を燃料にする予定であり周辺への放射能の再拡散など住民の不安の声が大きいのです。田村市と田村BEは昨年「安全安心対策」と称して「バグフィルター後段にHEPAフィルターを設置することによりさらに集塵効率を上昇させる」という説明をしてきています。この建設反対運動を担っている人も、ツア‐に同行されていて「公開質問状を出したたかいを続けている」と説明されました。                  

   田村市と大熊町の境あたり―山に入ると雪。 山が伐採され廃棄物をこの仮置き場に置い ていました。           

 富岡町夜ノ森(よのもり)桜通り 東側(右写真)は帰還困難区域、西側(左写真)は解除されてい。道一本隔てているだけ、線量はほぼ同じなのに。 (ここでも分断政策!)        -2-



 東電廃炉資料館が富岡町に昨年11月に開館されていました。

資料館内の展示物「映像」  事故の責任を取ろうとせず、賠償もまともに行わない東電は、今原発再稼働にも動きを加速化させています。しかし「廃炉資料館」を作り、このようなことをぬけぬけ図々しく展示していたのです。私たちは、許せない!と怒りがあふれました。「こんなものを建設するなら、その費用もすべて、被害者・住民への賠償にまわすべきである」と強く思いました。

 富岡・毛萱仮設焼却炉「がんばろう富岡町 鹿島 環境省 三菱重工」と並び書かれています。     -3-


 楢葉町と富岡町の境にある「放射性廃棄物埋め立て処分場・フクシマエコテック」を見学。    9.4㏊の巨大な埋め立て処分施設 

 エコテック入り口近くのお寺の前の大きな看板 「楢葉町一歩会」のもの   

 これを読むと、今の福島県の痛切な怒りと絶望の声が聞こえてくるようで、涙があふれました。「避難解除されたから年配者はもどったが、若い人や子どもは戻らない。そのさみしさの中で今度は 廃棄物処分場が町内に作られた。再び町が汚染される。もはや町の再生などないではないか?なぜ無責任にも、避難解除をしたのか?!」と。                       -4- 



エコテック近くの 富岡駅 に到着―富岡駅は、津波で全壊しましたが、2017年10月竜田駅まで運行を再開。現在業務委託駅になっていました。駅から常磐線に乗り帰路へ。        

 駅の海方向(両写真の奥側)は、昨年夏まで膨大な量の廃棄物置き場でした。  


(まとめと感想)  

 昨年(2018年)福島県を訪問したときは、飯館村の中にたくさんあるフレコンバックの膨大な山と福島駅近くの信夫山ふもとに運ばれているたくさんの汚染物を見て、驚き苦しくなりました。今回の訪問では、その膨大な放射性廃棄物が、県内に次々と作られた「仮設焼却炉」で燃やされ、巨大な「廃棄物処分施設」に運ばれ、できるかぎり直接目に触れないようにするために驚くばかりの強行さと迅速さで処理をし続けている実態を目の当たりにし、さらに心が締め付けられました。     


  これまで政府は、20ミリシーベルト基準で形だけの除染をし、放射線量は高いままであっても次々と避難地区を解除、住民の帰還強要、住宅支援の打ち切り、賠償の切り捨てを強行してきました。そして帰還させた村の中や近くに次々と「仮設焼却炉」「廃棄物処分施設」「バイオマス発電所」等の施設を建てているのです。大量の汚染土の処分に困り果て、‟道路の盛り土″〝防潮堤の基礎″などに再利用する方針も打ち出しています。県民、住民、子どもたちを再度被ばくの危険にさらしているのです。またそれらを「創造的復興」「福島の再生」「イノベーションコ‐スト構想」という言葉・政策でごまかし、人々は不安をいっそう口にできなくされています。また、反省のかけらもなく公然と「廃炉資料館」や「廃棄物処分施設の“安全性”を説明するPR館」まで建設し、県内の町内会や子ども会、学校からの見学を招請しているのです。「東京オリンピックまでに、福島原発事故と放射能汚染を完全になかったものとしたい、見えないものとしたい。そのためには 住民・帰還者・子どもたちの命と健康などたいした問題ではない。放射能汚染はないこととする。また大量の汚染物の焼却は今後全国各地にも広めざるを得ないし、日本が汚染列島になってもかまわない、やむをえない。そして原発再稼働も日本の経済力維持のためどんどん進めていく。」というのが、現在の政府・県・電力会社の基本姿勢・基本政策・ホンネなのです。 市民国民の生存権、健康に生きていく権利、人権がここまで蹂躙されていること、放射能汚染がさらに広げられている実態を、今後も知り学び知らせて、取り組んでいかねばならないと強く思わされた福島県現地訪問でした。                                     -5- 


 学校現場に放射能の安全性をすり込む「放射線副読本」に、 政府・復興庁主導の原発事故隠しの策動に 強く抗議し反対します!  (K)  


 国家を挙げた被ばく者・避難者切り捨て「風評払拭・リスコミ」戦略

 安倍政権・復興庁は2017年12月「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」をまとめました。その狙いは明らかに、来年の東京五輪・パラリンピックまでに原発事故の痕跡を一掃しよう とするものです。これは、被災者だけでなく全国の一般市民に対して、原発事故の影響は少なく放射線は心配ないという情報を発信し、福島県産品の販売拡大や観光誘致などを政府主導で進め、原発事故を覆い隠すための国家戦略です。この中で、「1.情報発信の対象は、①児童生徒及び教職員、②妊産婦並びに乳幼児及び生徒の保護者、③広く一般国民」とされ、「2.伝える内容としては、①日常生活で放射線被ばくはゼロにはできない、放射線による遺伝影響は出ない、放射線による健康影響は放射線の「有無」ではなく「量」が問題となる等の8項目 ②世界で最も厳しい基準によって食品・水の安全性が守られていること ③被災地の復興の進展の発信の3点」が示されています。 


狙い打ちされる学校現場 ――「放射線副読本」で子ども達を“だます?!”のか 

 強化戦略の中で一番の対象者に児童生徒及び教職員が挙げられています。戦前、学校が皇国史観を養い、戦争への道を開くのに使われたように、今学校を風評払拭・リスコミに利用しようとしているのです。復興庁は2018年3月に「放射線のホント」という小冊子を作成し、ホームページで公表し、2000部を印刷して地方公共団体等に送りました。文科省は、その「放射線のホント」に説明を加える形で、2018年10月、放射線副読本を改訂しました。そして、全国の小中学校、高校に児童生徒数分を直接送りつけたのです。それだけでなく、出前授業や教職員研修も予算化するなど徹底した情報発信をしています。学期末に配っただけの学校、理科の授業で説明を加え配った学校、倉庫に保管したままなど対応は各学校に任されていましたが、教育委員会から配布指示が出た市も多くあります。


  放射線教育は、子どもたちが放射線の危険性を知り、被ばくを避けるために必要なものです。しかし、副読本には、福島第一原発事故では健康影響は見られず、避難解除されれば普通に暮らせるかのように記されています。副読本を読んだ子どもは、放射線はそれほど怖いものではないと信じ、無用な被ばくを受け入れることになるのです。小学校低学年の子どもには内容が難しいですが、持ち帰った副読本を保護者が読んで「福島はもう大丈夫そうだ」「放射線の影響も少なくてよかった」など政府の狙い通り、疑いもなく受け取っている人が出ています。一方、原発事故による避難者は「国が避難指示を解除して、復興を進めているのになぜ帰らないのかと責められているようだ」と強く感じさせられます。被害者の実態とは無縁の学者や省庁の協力でできた「副読本」は、避難者いじめをなくすという意図とは逆に、いじめを助長する内容であり、たいへん危険なものです。


 「副読本」の危険その1――ウソとごまかしで放射能は安全と説く 

 「副読本」は放射線の説明から始まります。まず、自然放射線の存在を示し、放射線の性質 -6- としてα線は紙一枚、β線は薄いアルミニウム板で遮られる等透過性だけを書いています。宇宙創生期からある自然放射線と人工放射線では、生物への影響が全く違うことを説明しません。そして、エネルギー単位eVの分子結合に単位MeV(100万倍)のエネルギーを持つ放射線が働いて起こす電離作用には触れていないのです。また、外部被ばく1mSvと内部被ばく1mSvは同等というだけで、内部被ばくの危険性を説明していません。現在原発事故で放出された放射性物質の中で問題になっているのはセシウム137です。セシウム137は体内に取り込まれると血液に乗って体中を巡り、γ線と共にβ線を出し続けるのです。β線による内部被曝はγ線による外部被曝に比べてはるかに電離作用が強く、DNAを切断しガン等を引き起こします。甲状腺がんも事故直後に大量に放出された放射性ヨウ素が口や鼻から取り込まれ、甲状腺に吸収されて起こる内部被ばくが主な原因です。放射性ヨウ素も放射性セシウムも、自然界にはなく原発が生み出した人工放射性物質なのです。  「副読本」は世界最高水準の食品線量基準と言い切り、各国の食品基準表を載せています。その欄外に小さい字で日本の基準値は算定方法が異なり、海外に比べ小さい値になるため比較できないと言い訳しています。こんなごまかしまでして「被ばくの安全性」をすり込もうとしているのです。 


「副読本」の危険その2――健康被害の実態を覆い隠す 

 健康影響調査について「副読本」には「福島県が実施した内部被ばく検査の結果によれば、検査を受けた全員が健康に影響が及ぶ数値(100mSv以上)ではなかった」と書かれています。これは、事故2週間後30km圏外の子ども1080人を測定した結果だけから判断したものです。しかし、原発爆発時、原発立地の双葉町にいた11歳少女に甲状腺等価線量100mSv相当の被ばくが確認されていたことが、今年1月21日東京新聞で明らかにされました。さらに、原発事故避難時のスクリ-ニング検査では除染基準1万3000cpm(甲状腺等価線量100mSv相当)を超える人が続出し、3月13日に除染基準値を10万cpm(甲状腺等価線量770mSv相当)に引きあげています。基準値引き上げと同時に、内部被ばくを測定する手順もなくなり、多くの初期被ばくが消されてしまいました。チェルノブイリでは現在のウクライナ・ロシア・ベラルーシ3国にわたる汚染地域30万人の被ばく線量を測定しています。日本では避難時、除染が間に合わないほど被ばく線量の高い住民がいたにもかかわらず、線量増加時30㎞圏内は避難完了、または屋内退避していたという理由で、30㎞圏外のわずか1080人の子どもの被ばく検査だけで「健康影響のない数値」と決めつけ、副読本に記載しているのです。 福島県の甲状腺検査(事故当時18歳以下約40万人)では、100万人に1~2人と言われる甲状腺がん・がん疑いが206人(2018年12月)と公表されましたが、この多発すら原発事故の影響だと認めていません。 2011年ウクライナ政府報告書には、チェルノブイリ原発事故から25年経て、被ばく者の子どもの健康被害が深刻であることが示されています。しかし「副読本」は遺伝的影響を示す根拠はないと言うのです。そもそも放射線の健康影響は閾値(しきいち)がなく、被ばく線量は最小限に抑えるべきというのが国際的常識です。100mSv以上で初めて影響が出るなどと言っているのは「副読本」に関わる学者たちだけです。 


「副読本」の危険その3――今も続く事故の深刻さの記述がない 

 「副読本」には事故炉について何の記述もありません。事故の始末のため毎日数千人が被ばく労働に携わっています。しかし、8年経っても廃炉作業は進まず、汚染水はたまる一方です。福 -7- 島では、空間線量年20mSv以上を避難指示基準としています。経年変化と除染によって、年20mSv以下になれば避難指示は解除、住宅支援も賠償も打ち切り、帰還を強いています。ところが、国の放射線管理区域(18歳以上の放射線作業従事者が、飲食禁止で働く場所)は避難指示基準より低い年5.2mSv以下と決められており、公衆の被ばく限度は年1mSvです。福島第一原発周辺地域だけ、放射線量年20mSv未満で子どもも妊婦も普通に暮らせというのです。除染ごみは増え続け、福島第一原発のある大熊町・双葉町の広大な土地が除染ごみの「中間」貯蔵施設になった。最近は除染ごみを減らすために、焼却、再利用までされようとしている。「原子力緊急事態宣言」はいまだに解除されていないのに、避難指示だけが解除されるのです。除染ゴミの「中間」貯蔵施設がある原発立地大熊町の一部でも、4月10日避難指示が解除されます。帰りたくても帰れない避難者の声を無視して、「副読本」は「復興」を強調しているのです。  

政府は国連勧告を尊重せよ! 

 日本政府は国連から原発事故に関わる勧告を再三受けています。2013年5月の国連人権理事会選任の特別報告者アナンド・グローバー氏による勧告(年20mSvを避難基準とする日本政府に対し、国際基準の年間1mSv以下になるまで、住民に帰還を促したり、賠償をうち切るべきではない等)、2014年、自由権規約委員会は『福島第一原発事故によって影響を受けた人々の生命を保護するため全ての必要な措置を取ること』を勧告、2016年には女性差別撤廃委員会からの勧告、昨年は国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)の作業部会で、オーストリア、ドイツ、ポルトガル、メキシコから勧告が出されています。 「副読本」はこれら国連勧告にも背を向け、原発事故被害者の人権を侵害する内容です。被害者切り捨て原発推進政策のための「放射線副読本」に反対し、使用・配布にストップの声をあげていきましょう。