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人生と書物

2019.04.14 15:56

『人生とは一冊の書物である』と、ある作家が言った。


あなたが生まれたとき、その書物は白紙であった。

書物にはあなたが書きたいことを何でも書いて良い。

はじめは好き放題に落書きのように書かれていた頁が、しだいに読む者を意識した頁になっていく。

あなたが成長するにつれ、書物にはたくさんの文字が書き込まれていく。


美味しかった食べ物のこと。

楽しかった旅行。

感動した出来事。

はじめて恋に落ちた日のこと。


書物に書きこまれる頁はどんどん増えていく。

たまには怒りで書きなぐったような頁があるかもしれない。

ひどく傷ついて1人で泣いた日のこと。

病気の日もあった。

それでも、書物にはできるだけ楽しいことを書こうとあなたは思っていただろう。

書物は後半になるにつれ、穏やかで、思慮深い言葉に変わっていく。

残りの数頁、あなたは少しでも文字を書きこもうと努力するかもしれない。

いよいよ、最後の頁。

あなたはもう一度、その書物をはじめから読みたいと思うかもしれない。

だが、残念ながらそれはもう叶わない。

あなたはペンを置いて、人生という書物の頁を静かに閉じる。

書物の最後には、あなたの感謝の言葉が書かれている。

ありがとうと。