うまそうに食べるおんなの娘
お昼時は一端のカフェのように
「食後にコーヒーを下さい」ってお客さんが多いのですが
しっかり食べ終わった頃を見計らって
それでいてお皿を覗き込むようなことをしたのでは下品ですしね
品良く、さりげなく、「今だ!」ってタイミングで
コーヒーを提供したいと思っているのですが
これがなかなか早かったり遅かったりで
なかでも女の子のおひとり様はタイミングが難しくて
友達や恋人と一緒となれば会話の雰囲気で
「そろそろお皿が空いた頃かな」と
なんとなく察しがつきやすいものですが(それでも外しますが)
ひとりぼっちの女の子は静かですからね
まだ食べている最中なのか
まだもう少し早いのか
本を読みながら、時折休憩しながら食べる方もいますしね
どう見ても完全に手が止まっているように見えたので
「お皿を下げよう」
「早くコーヒーを淹れなくちゃ」とさりげなく近づくと
申し訳なさそうに細い声で「まだ食べます」と
こんな時のボクはだいたいが
慌てふためいて「ごめんなさい」と膝に頭が付きそうなくらいお辞儀をして
奥でひとり「また、やっちゃったなー」と反省することになる訳です
ある日の事です
いかにもフワフワとした可愛らしいおんなの娘がおひとり様
合言葉のように
またはボクを試すかのように
案の定の「食後にコーヒーを下さい」
「このタイプは絶対に休憩しながら本を読みながら
育ちが良さそうだしなー、ひと口につき30回は噛むはずだよなー」と
ひどく弱火でお湯を沸かしつつ
「豆はまだ挽かなくていいな、直前でギリギリで大丈夫だな」と
「食べ終わるまでに20分、いや待て待て、雰囲気的には30分か?」と
サンドイッチを持って行っておおよそ10分
「そう言えばちいさい口だしなー」
「飲み物がないとなかなかサンドイッチも食べづらいかなー?」と
さりげなくあくまで空気のように
おかわりのお水を注ぎに行くと
お皿は見るも綺麗にすでにぺロリ
お手拭きが綺麗にお皿の上に並ばれていました
うまそうに食べるおんなの娘
他に誰もいない店内で彼女はどんな風だったのかなーと
その食べる姿を見てみたかったなーと
「しまったなー」と思いつつ
急いでコーヒーミルのスイッチに手をかけたのに
肝心のヤカンの水はまだまだ冷たいままでした