「Open Space」Kveta Pacovska
多くの方は現代チェコを代表する絵本作家としてその名前を記憶しているかもしれない、クヴィエタ・パツォウスカーですけれど、パツォウスカーは紛れもなく、現代美術作家のひとり、コンテンポラリーアーティストでもあります。
そうしたパツォウスカーのアート作品を中心に見ることの出来るのが本書「Open Space」です。
立体作品(彫刻作品?)/コラージュ/ドローイング/オブジェ、と言ったパツォウスカーの絵本以外の仕事をここでは存分に見ることが出来ます。
勿論それは、パツォウスカーのつくる絵本の作品と根本的に異なる、なんてことは全くありません。
彼女の絵本作品で感じることの出来る、不思議な調和、色彩感覚は、彼女の作り出すどの作品にも流れているものであることを、ここで確認することが出来るかと思います。
パツォウスカーの作品を多く見てみると、その作品たちを一番象徴するものとして、パツォウスカーの書く(描く)「文字」があるのに気付きます。
それはアルファベットで、直線と曲線の組み合わせで、何かを意味する言葉なのですけれど(文字なのだから当然です…)、パツォウスカーの書く/描く文字を見ると、パツォウスカーの描く絵が、作品が、ありありといつも、思い浮かぶのです。不思議なことです。
パツォウスカーの書く文字が、パツォウスカーの描く絵と似ているのか、それともパツォウスカーの描く絵が、パツォウスカーの書く文字と似ているのか。
パツォウスカーのつくる作品にいつも感じる、何処か記号的なもの、それは「文字」と言う記号でありしかし単純な意味に還元の出来ないもの、そんな「文字」の持つ特徴/性質を拡大したことから発しているようにも感じられます。
パツォウスカーの作品にいつも漂っている詩的な調べ。それはその意味と記号のあいだを揺れ動く彼の色彩と、直線/曲線に由来すると思うのです。
こんな風に考えると、パツォウスカーの作品はバッハと似ているなあ、なんてことまで思ってきてしまいますけれど、そんなことまで書いていたら大変なことになりそうなので、この本の紹介はここまでにさせて下さい。
日本ではあまり見ることのないパツォウスカーの作品集です。
ぜひ御覧ください。
当店のクヴィエタ・パツォウスカーの本はこちらです。