北アルプス剣岳周回山行
【日程】2018/04/28-05/01
【メンバー】村上靜志 (単独)
【コースタイム】 1日目=室堂12:30---剣御前15:30---二股手前16:00(ツエルト泊) 2日目=二股手前6:00---三ノ窓出合6:40---池ノ平コル(池ノ平小屋)9:00---小黒部谷大窓出合9:50 ---大窓15:00(ツエルト泊) 3日目=大窓8:40---白萩川西仙人谷出合11:10---タカノスワリ12:00---馬場島15:10
【レポート】
昨年痛めた膝の半月板の回復具合を見る山行でした。途中痛くなった場合にエスケープできるコースとして剣岳をぐるっと回るスキー登山計画をたてました。剣岳の各尾根にあるコルに登って谷を下り次のコルに登りまた下って剣岳を1周する計画で25年くらい前に初めて出かけ何度か通過しましたが何時も魅力が衰えないコースです。 ます剣御前に登り剣沢を下降して池ノ平山のコルに登りそこから小黒部谷にくだり大窓に登り返して白萩川を下って馬場島。そこから立山川を登り室堂乗越から剣御前、真砂岳から立山の雄山、御前沢を下降して黒部平を経由して黒四ダムという周回コースです。3泊4日予備日1日の計画。一度馬場島に下るので途中下山が可能です。
1日目:東京を早朝の北陸新幹線で出かけました。新幹線のおかげで午前中には室堂に到着。お昼を食べて支度し,最初山岳警備隊の事務所によって入山を知らせます。実は富山県に剣岳の特定地域に入る登山届けは20日前までに出さなければならないのですが間際に出したので受付の自然保護課の方にお手数をかけてしまいましたが丁寧に対応してもらい許可がおりました。普通でしたら登山届済書を携帯しなければならないのですが、もらう日程的な余裕が無く入山のとき事務所によってくれとのことでした。 警備隊に挨拶をすませて最初のコル剣御前に向かいます。連休に入り沢山の人が登っていますのでトレースを利用して予定の時間で剣御前に。ユックリ休んで剣沢の下降にうつりました。 途中、剣沢のテン場によると未だ10張り程度、本格営業をしていない剣沢小屋も静かです。長治郎の出合でテント一張りと数人の人。真砂沢出合を過ぎると人影はなくなりました。割れた沢を下って近藤岩が見える所まで来てツエルトを張る事にしました。 割れたところから水を汲みたいのですが川底に下りるのは難しいので小さなコッフエルに細引きをつないで水を汲みますがなかなか上手くゆかず、1L汲んだところでやめてしまいました。日が暮れて満点の星空が明日の好天を約束しました。
2日目:コーヒーと朝食を済ませ出発です。本日は上手くすれば馬場島に下れます。スノーブリッジを渡って近藤岩を過ぎ、三ノ窓出合を過ぎ小窓出合を右に入って池ノ平山のコル、池ノ平小屋の有る所に登ります。雪の上ですが小屋だと思われる所に到着。小黒部谷をのぞき込みますが問題無く雪の斜面が続いていました。1525mの大窓の出合まで下降をします。出合に近づくと古い足跡が、誰かがはいったのかと思いましたが足跡はデブリに消えていたので熊の足跡のようです。ユックリ休んで大窓の斜面にはいりました。今回は斜面全体にデブリが出来てでこぼこの斜面が温度の上昇でゆるみ時々スリップを起こします。
何とかコースを選んで登りますがかなり時間がかかってしまいました。時々ガラガラと左右の壁から雪の塊が崩れ落ちます。見上げる大窓には何時も大きな雪庇があるのですが今回は中央部分が一部崩れて斜面になっていましたのでそこに向かいました。雪庇の下に到着すると突然右上の壁から大きなブロックが落ちて来ました。あと五分遅ければとハッとします。スキーをザックに着けてアイゼンで15m程をよじ登ると大窓に到着しました。
今回は高度で600mの登りに4時間以上かかってしまいました。
ここからは雪の付き方の状態が良ければ3~4時間もあれば馬場島に着けるのですが大窓の登りで疲れてしまいここに泊まることにしました。春や夏に何度か訪れている大窓がとても気に入っている事もあります。ツエルトを張って足りなくなって水を作って食事をすませると静かな夜を迎えました。
大窓と後ろに見える小窓尾根
3日目:今日も好天の朝を迎えました。食事をすませ未だ硬い雪が緩むのを待っていると赤ハゲの方から2人の男性が下りて来ました。言葉を交わし池ノ平山に向かって登って行きましたがその後また男女2人が下りて来ました。前夜は赤谷山頂に泊まっていたそうでもう大窓とは若い人は流石に早い。今日は三ノ窓まで、翌日剣岳に登って下るそうですが天気が持つか気にしてるようです。私は下るだけなので余った水をあげると池ノ平山に登って行きました。8時40分ごろ滑りやすい堅さになって来たので出発しました。大窓から流れる白萩川の上部は左右から西仙人谷と東仙人谷が合流して流れていて中仙人谷とも呼ばれています。大窓から下ると左右に斜面が分かれ左が滑りやすそうに見えますが、最後は崩れ落ちているので途中ルンゼ状になっている右の斜面を下ります。200mくらい下るとこのルンゼがデブリで埋まりドロも巻き込んで茶色の帯になって流れていました。それに中央に深い帯が出来てスキーで下る事が困難になってきましたのでアイゼンを付けて下りました。200mくらい下って西仙人谷の合流点に近づいてやっとスキーを使える事が出来ました。
上から見た白萩川と下から見た白萩川.中央が大窓
それでも時々大きなデブリにふさがれ苦労しました。池ノ谷出合を過ぎると先に見える狭くなった出口、通称タカノスワリの壁には雪は無く、かなりの水量が流れていました。これでは通過は困難で確保も成しに渡渉も出来そうにありません。 しばらく休んで巻き道で進むことに決めました、が巻き道はかなり昔一度通過しただけで雪の斜面では見えるわけでもないので斜面を登りますがなかなか道らしき所が見つかりません。100m近く登ってしまい無理矢理トラバースを開始しました。尾根を越えたあたりで木につかまりながら急斜面を下っていると赤い布が目に入り巻き道に合流したようでホッと、雪も消えて踏み跡が見えてきました。この巻き道通過に2時間あまりかかってしまいましたが堰堤下の道に出てここまで来れたことに安堵しました。しばらく馬場島までの道路を歩きますが、昨年毛勝三山を縦走し、ここに下った時は未だ雪が残っていましたから昨年より雪解けは早かったようです。15時すぎ馬場島に着きましたが今年の馬場島荘は未だ開いてはいませんでした。当初の予定はここから立山川を登って室堂乗越に向かうのですが,膝に痛みを感じてきましたし疲れも溜まって下山する事にしました。でも下山したくなったが正解です。 馬場島荘が閉まっているのでビールも飲めませんが装備をかたづけていると一台の車がやってきましたので上市まで乗せてもらえないかとお願いしたところ快く応じていただきました。地元富山の方で数日前にゲートが空いたので山の様子を見に来たそうで伝蔵小屋(今の早月小屋)で働いたこともあるそうで山の話しをしながら上市まで送ってもらいました。何かお礼をと言うと来年また来て下さいと言われ帰って行かれました。 地鉄に乗り途中の「満天の湯」でお風呂に入って富山駅で最終の新幹線の指定を買って駅前の小料理店で富山の幸を楽しみながら一人打ち上げをやって山行を終わりました。 今年は今まで通過した中で一番状態が悪いと感じました。やはり年々温暖化が進んで雪解けが早くなっているのか。それともたまたまなのか分かりませんが危険度が増していると感じる山行でした。
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