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KIMURA HARUKA

ぶっくぶっくから降りて…

2019.04.26 01:54

Pal's Sharer 第14回公演
「ぶっくぶっく」
@中野 テアトルBONBON

無事に全公演終了いたしました!
ご来場くださったお客様、

応援してくださった方々、

みなさまほんとうにありがとうございました!

私にとっては、初めてのカンパニー、初めての演出家さんの現場、初めての作家さんの作品、ということで、作品の全貌がなかなか見えず…稽古中は正直不安な時もありました。


と同時に、稽古が進むごとに作品の魅力を見つけ、これを上演する意義も感じて…

「どうしたらもっとお客様に伝えられるの??」

と、俳優として・座組のひとりとして考え続けた公演でした。


凄まじい転換と小道具を扱う段取りをこなし、目まぐるしさの中で幕を開け、危険な仕掛けも多くありましたから、とにかく無事に公演を乗り切ること、座組のだれひとり傷つくことなく千秋楽を向かえることを祈り続けました。


ですから、お客様からいただけた拍手には殊更安堵し、感想のひとつひとつは格別の喜びでした。

ほんとうにありがとうございました。

*知愛さん という役

劇中で明言されていないので、気づかれた方は少ないのですが、実は私の演じた知愛さんは文字が読めません。"ディスレクシア"という学習障害のひとつ、という設定です。

最終的に上演した第6稿というバージョンにおいては、その他の知愛さんのバックボーンに関しても記述がなくなっていました。

演じる私にとっては、役作りに際しなにひとつ確かな拠り所のない状況…(笑)

だれにとっても確かな「設定」があり、それに則った表現を模索し選択することは、俳優として極めてまっとうなんですが、そんなこんなで今回そうもいかなかったので、私は私の知愛さんをこねこね作っていくことにしました。

*知愛さんの人生を想像する

今のこの社会で「文字が読めない」ということは想像するだにとてつもないハンディ。パッと見てわかる特徴でもないし、知愛さんは凄まじい苦労をしてきたことでしょう。


なのに…

いや、だからこそ…!

あの優しく柔らかでマイペースな人柄。文字が読めないぶん味覚や嗅覚を研ぎ澄まして、優れた料理人になり、生きる術を身につけてきた。当たり前とされていることを当たり前にできないことが、今の彼女のすべてを形作っているんだと想像しました。

ぶっくぶっくには、喪失・欠落・絶望を抱えた女性たちが乗り込んできます。知愛さんも、きっとそうだったのでしょう。

そんな知愛にとって、永遠子、星、美央、という自分を受け入れてくれ、欠落を埋めてくれる友人・仲間は、なにものにも変えがたい宝物です。

永遠子に対しては、姉のような・母のような思慕。

星には、歳の近い姉妹のような気安い親しさ。

美央には、同じくぶっくぶっくに救われた者同士の共感。

周りの登場人物との絆を強く感じることで、私は知愛を形作っていきました。

そして特に、今回の物語の核にも深く関わる星に対しては、ひとつの願いを抱いて見つめていました。

それは…

「星が星の人生を生きていくこと」

最愛の夫を亡くし、それでも妻として生き続けようとする星、そうすることで、サイモンへの愛を証そうとしている星が、愛おしく同時に切ない。


自分はここまで、と決めなくてもいい。

決めても、取り消していい。

たくさん迷っていい。

ゆっくり選んでいい。


当たり前とされていることを当たり前にしてこられなかったからこそ、他の登場人物たちのありのままを心から肯定できる知愛さんだったんだと思います。


あの夜のシーンで彼女が語る言葉は、「ぶっくぶっく」という物語の根幹にあるメッセージでもあるので、つい力みそうになる。伝わってほしくて。でも、ふっと力を抜いて、ふんわりと。

星にも、見に来てくださったみなさんにも、伝わっていてほしい。

私の演じる知愛さんからの願いでした。


私は、自分でも物語を書いて、それを演じる人間ですが、今回のようにただ役者として演劇に関わることをとても楽しく感じています。これからもそのような機会に恵まれたなら幸せです。

その都度力を尽くしてまいりたいと思いますので、みなさんどうぞよろしくお願いいたします。

ありがとうございました!