person 64　　作・堀愛子

不安になった、

19歳になった

春が終わってしまう、夏が近づいている

不安になった

最近、

髪の毛を切った

新しく好きなアーティストができた

趣味で刺繍を始めた

特別、風邪をひいてはないけれど、

とても鼻水が出る

隣の人も鼻をすすっている

夏がくる

不安になった

アイスココアを頼んでしまった

後からメニューを見たら、

ハニーミルクがあった

そっちにすりゃ良かった

気づかなかった

隣の人が、席を立った

ひとりになって、不安になった

春が終わる

ストローで一気に飲んでしまった

アイスココアの余った氷を弾く

こんなに早くなくなるなら、

一杯で360円もするのは高い

暑い季節の飲み物の価値は

量なんて関係ないな、

スピードだこれは

イヤホンをして最近好きになったアーティストの音楽をひたすら聴いた

まだ聴き慣れていない音が

心地いい

まだ出会った瞬間を覚えている

あと10分したら、

店を出て、

帰って刺繍を始めよう

その時また同じようにこの曲を聴こう

このカフェもたぶん、

4回くらい来たら慣れるだろう

不安になる

春が終わるからか

夏がくるからか

またここに来たら、

360円のアイスココアを

同じように頼んでしまう気がしている

2019年4月26日

堀愛子