リハビリ職種に必要な症候診断④
おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
イギリスで勉強したことを共有したくてこのテーマで記事を書こうと考えました。
日本の理学療法士には開業権がないため、養成課程では、診断に関する科目がありません。
理学療法の先進国と言われる国々の理学療法士は診断に関する教育を受けています。もちろん、医師が受ける診断のトレーニング程は深くないです。主な目的が「理学療法の適応の有無を正確に判断すること」だからです。
診断に関しては、「日本人理学療法士には理解できない」のではなくて、『系統的に学習すれば身に付く』と私は考えています。
その理由は下記の二つです。
①日本人は諸外国と比較して知能は劣っていないか、むしろ優れている
まず、日本人は知能的に劣っているわけではなく、勤勉であったり、知識や技術の習得に関しては世界的にみても秀でています。その証拠にあらゆる学問分野で日本人のトップランナーがいます。
日本の教育システムは、世界的にみても高校までは最高のシステムの一つのようです。高等教育(大学以上)の質に関しては、日本はやや遅れをとっている所があるようですが、高校卒業時点の平均的な学力という点では、世界トップレベルのようです。PISAという国際的な学力テストがあります。科学的リテラシーや数学的リテラシーといった、「診断」という知的なスキルに関わってきそうな分野は日本人が得意としているところです。最近は以前と比較して、日本の順位は低下していますが、依然としてトップグループです。
UCLの教育系の学部に通っている方から教えて頂いたのですが、人口一億人を超えるような大きな国でトップグループに入っているのは、日本位だそうです。なぜ国が大きくなると教育システムがうまく機能しなくなるのかは門外漢の私にはよく分かりませんが、単純に組織が大きくなることで統率が上手く取れないというのがあるのかも知れません。
②理学療法士になる人材の質もそこまで大きな違いはない。
全体的な知能は劣っていないとして、理学療法士になる人材の質はどうなのか?
→これに関しても私は悲観していません。
欧米諸国の多くの国において理学療法士は、大学院レベルの資格です(大学卒業後、1年から3年間大学院で教育を受けることで免許をとることができます)。日本では、最短で3年制の専門学校を卒業することで免許が取得できます。アメリカなどは高校卒業後、7年間の教育(大学4年+大学院3年)を経て理学療法士になるのに対して、日本では最短で、半分以下の高校卒業後3年間の教育で理学療法士になることが出来ます。
このため、「欧米諸国と日本の間に『理学療法士になる人材の質の差』があるのではないか?」と言われています。
こういったこともあり、理学療法士の養成校の期間(年数)を増やして諸外国の教育に近づけようという活動の根拠になっています。
この様な活動の是非は私が述べてもしょうがないので述べませんが、少し誤解が含まれてしまっているようにも感じます。
学ぶ学問分野にもよると思いますが、ヨーロッパの修士課程は、日本の大学3年生、4年生のような位置付けです(詳しくはわかりませんが、恐らくは北米の修士課程も同様だと思います)。日本のリハビリ関係の修士課程の多くは、ある研究室に所属して、2年間かけて研究を行います。授業が中心と言うよりは個々の研究室での活動がメインです。一方、欧米の修士課程は専門的な内容の授業を受けること、ゼミの様なディスカッションを含む授業がメインです(もちろん学問分野によると思います)。研究室での活動が主になるのは博士課程においてです。
また、アメリカの大学はリベラルアーツ教育という日本の一般教養のようなものが重視されているので、理学療法に関わるような解剖、生理学などは3年や4年生にならないと始まらないとも聞きます。
アメリカの理学療法士は7年間かけて作られるが、日本の理学療法士は3年で作られる
と言われると、「同じ理学療法士という括りでいいのかな?(;'∀')」と不安になるかも知れません。しかし、アメリカの大学では4年生になって初めて専門科目の教育が始まると考えると、アメリカ4年(大学で1年間の専門教育+大学院3年)、日本3年で、景色の見え方はだいぶ変わってくるのではないでしょうか?
日本の多くの3年生の専門学校では一般教養はカリキュラムに入っていないはずです。
(諸外国のリベラルアーツ教育と日本の一般教養科目の授業の差も話すと面白いのですが、話の趣旨とはズレますのでいつか機会があれば・・・)
このような高等教育の位置付けの違い、大学入学時点での平均的な学力を合わせて考えると、日本の理学療法士人材の質が諸外国と比較して、極端に人材の質が劣るとは私には思えません。 ただ、総人口に対する理学療法士の数が、日本は世界の中でトップクラスに多いです。このため人材の質に幅はあると思いますが。。。。
という様な理由から、日本の理学療法士も、系統だった形で診断のスキルを学べば、身に付くと私は考えています。
長くなりましたので次回に続きます。
そのうち、必ず『リハビリ職種に必要な症候診断』の話に入りますので、ご容赦ください。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。
理学療法士 倉形裕史
次回へのリンクです
自分と似たような考えを持った医療職の方が下記のキーワードで検索した際に、繋がりやすくなることを目的に下記のキーワードを書くことにしました。やや見苦しいですがご容赦下さい。
EBM、Evidence based medicine、EBPT、Evidence based physical therapy、根拠に基づくリハビリテーション、rehabilitation、リハビリテーション、理学療法、physical therapy、physiotherapy、統計、statistics、研究デザイン、study design、留学、study abroad、ロンドン、London、ユニヴァーシティー カレッジ ロンドン、University College Londn、UCL、ロンドン大学、University of London、 腰痛、lowback pain