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地図の進化論: 地理空間情報と人間の未来

2019.05.01 09:05

引き続き地図関連です。しばらく続きます。

以下、本書を読もうと思った理由は、そもそも「地図」ってなんだっけ?という根本的な問いに対する自分なりの回答を持ちたいな、と思って歴史をざっくり振り返れる本を読みたかった、というのが動機です。

最初は昔の地図の歴史から引用されています。地図と呼ぼうと思えば確かにそうだよね、ってものを含めると、数万年前からあったと言えるみたいですね。


紀元前25000年 チェコのパブロフ図。最古のもので文字が誕生する以前。マンモスの牙の表面に居住地や蛇行する河川を彫刻。

紀元前1500 イタリアのベドリーナ図。村の景観を壁面に彫刻。

紀元前750 イラクのバビロニア粘土版。首都バビロンとユーフラテス川など古代バビロニアの世界観を表現。


■地図の種類

地図について、一般図と主題図という分け方が説明されています。一般図は、いわゆる国土地理院が出しているような、汎用性の高い地図。例えば、河川や道路、等高線などの国土の骨格となる情報が記載されたもの。この分け方でいうと、GoogleMAPも一般図の分類のようです。

一方で、主題図というものは、特定のテーマを強調するために描かれたもの。例えば、ハザードマップ、グルメマップ、統計地図、言語地図、犯罪地図、疾病地図、などなど。特定の用途(ニーズ)に応じた情報をハイライトしているものだそうです。


■メルカトル図法

小学校とかで習った記憶がうっすらある懐かしい単語が出てきました。現在の一般的な地図はほぼメルカトル図法で、GoogleMAPもそうらしいです。ただ、ここで筆者が言及している点として、メルカトル図法のメリデメについて。メルカトル図法では緯度経度が直角で表現されてるため、人間の脳みそからすると捉えやすい反面、北極や南極の国が実際より大きく表示されてしまうサイズ問題があるとのことです。


■地図の功罪

ここは難しいところですが、地図って人間に分かりやすくするためにデフォルメされやすいのだとか。前述の主観図はまさにそうですが、無機質な情報の羅列だと人間からは理解しがたいので、例えば、地下鉄路線図(駅間隔は実距離ではない)など。これは罪の無いデフォルメと表現されていますが、都心部の人が田舎に移り住む際に、あの路線図で見るとそこまで遠くに引っ越した感覚は無いので、いわゆる「都落ち」的な感覚も弱めてくれるのだとか。

一方で、罪のある嘘として地図デフォルメで挙げられるのが、北朝鮮ミサイルのニュースがあった時に報道された同心円(日本危ないって騒ぎ立てる用)や、不動産の「駅から◯分」の地図など。例えば、実際の距離や建物などを極力省いた簡素化した主観図によって、「田園調布駅そば」という印象を与えれば、高級物件と錯覚させやすいのだ、と。


■男女差

これはネタ的な章立てかと思いますが、男女の空間把握能力に対する差異を、地図を捉える能力に置き換えて説明していたりします。よく言われるのが、男性は古代からマンモスとかの狩りに出ていたため、遠方までの空間をイメージしやすい脳みそになってるとか。本当かしらんけど。

面白かったのは、男女差=絶対感覚vs相対感覚的な話でした。例えば、男性は頭の中に全体像を絶対感覚として持っているため、どっちが北で、何kmを◯◯の方角へ進むと目的地かとか大枠の認識は捉えやすい。一方で、女性の場合は、「◯◯の看板を起点にして右へ◯m、□□の店を左に曲がって」みたいな、今いる地点、目標物、途中で出てくるランドマークなどの相対情報を取り入れて判断するのが上手い、とかなんとか。知らんけど。自分の理解力ではそんな感じでした。


■女性用地図

ちなみに少し上記の男女差の件からのネタですが、相対的な(?)リンク!っていう地図が発刊されたそうですが、それの女性購入率は6割強で11万部売れたそうです。東京・横浜のみの、いわゆる目印を起点にした女性目線での相対感覚者向けの地図らしいので、確かに定量的に同意できるかもしれません。


■認知地図

マウスを使った実験で、「認知地図」というキーワードが出てきました。地図の捉え方の中でも、かなり高等な考え方のようで、自分の頭の中で全体像をイメージするような感覚です。例えば、マウスに①②の実験を受けさせるとして、①では餌場までを色々と迂回させて辿り着く一本道を歩かせる。その後、②では一本道を除去した上で、同じ場所に餌場をセットすると、マウスは直線的にその餌場に向かう、という面白い話です。これは自動運転の空間認識にも技術的に取り入れられていくんでしょうね。


■OSM

OpenStreetMapの出現で、地図はインタラクティブなものに変わったよね、という話です。現在のGoogleMAPなんてまさにそうで、ユーザーが情報を書き換えながら、常に複数の人間が作り上げていくスタイルですね。この動き自体を後押ししたのは、専門家でなくても使える地理空間データやGISのフリーソフトが広まった事が背景にあるようです。ブロックチェーンもそうですがインターネットをきっかけとして分散型の社会がどんどん拡がっているのを感じます。


■Web2.0時代の地図

OSMのようなボランティア的にユーザーが勝手にコンテンツ提供に協力して作り上げていくような世界観の広がりの中で、いくつか面白いサービスも誕生しているようです。例えば、Wikipediaの地図/GIS版としてWikiMapiaがあったり、ジオタグ付きの写真が共有できるFlickrであったり。


■視野を狭める?地図

ありがちな締めくくりですが、最後に筆者が警鐘を鳴らしている点として、Googleに代表されるように、地図がルート案内や交通情報をサジェスチョンすることで、ユーザーはその答えをありのままに受け入れてしまうため、プラスアルファの発想が生まれにくい(テクノロジーのレコメンドの中だけで完結してしまう)と言われています。自分もテクノロジー真っ只中の世界で働く立場として、ここは今後も考え続けて行きたいな、とは思います。お後がよろしいようで。