春の奇蹟。緑の絨毯老梅石槽(2013年4月)
もうすぐ4月。
4月ごろになると、岩場に美しい緑の絨毯が現れる海岸がある。
冬の間波に浸食された岩面で成長した海藻が、春になり暖かくなると、美しい緑色の絨毯となって、岩場を覆い尽くすのだ。
この景観は「緑石槽」とよばれ、4月から5月にかけて現れ、台湾の夏の灼熱の太陽が照り付ける季節には色あせてみることができなくなる。手軽に観察できる観光スポットとしては、淡水から北上した石門地区あたりの海岸、とくに、老梅の「老梅石槽」が有名。
私が初めて緑の絨毯の老梅石槽を訪れることができたのは、2013年4月初めの週末だった。4月のはじめというのは、私の大学では毎年一週間ほどの「春休み」があるのだが、4月の半ばから末にかけては学期の中間テスト期間が控えているので、遊びに行くべきか勉強すべきか悩ましい季節。
この年は、できたら今年こそ老梅石槽を見に行きたい、と思っていたので、数日前からずっと天気予報とにらめっこをしていた。晴天であってほしいのはもちろんだが、老梅石槽の緑の絨毯は、満潮時には海水の下にもぐってしまうため、一番美しい状態でみたいなら、干潮の時間を狙っていかなければならない。だから、天気が良く、干潮の時間が早朝とか夜遅くではない、「観光に行きやすい時間」の日を狙っていた。
その日は、朝から天気が良く、しかし寝坊してもうじき昼。体が疲れていたのもあって、「ああどうしよう、やっぱやめようか、どうしようか」とヘタレな考えにとらわれかけたのだが、干潮時間を確かめると、夕方の行きやすい時間で、今から寮を出たとしても、間に合いそう。気合を入れなおし、すっぴんにデジカメと財布を手に、朝食も食べずに寮を飛び出した。
淡水の駅に着くと、トラベルインフォメーションセンターが目に入ったので、どのバスに乗っていけばいいのか聞きに行くと、詳しい案内の載った日本語版パンフレットを渡されたので、書いてあったバスに乗り、「燈台口」というバス停で下車。
降りたのはいいが、ここで本当に合ってるの??とう無人ぶり。
地図でもここであってるようだし、間違いなさそうだが、無人すぎて不安になる。
地図に従い、バスの進行方向に向かって前を見ると、道路に「富貴角燈台→」の標識発見。老梅石槽は灯台のそばなので、やはり正解。
あれ、でも地図的には海岸は左手のような…?
よくわからないが、標識が嘘つくわけもあるまいと、標識に従って歩き出した。
標識を右に曲がると、坂になっていて、登り切ったところを左に曲がれとなっていた。
曲がると橋を渡るようになっていた。あ、これ、さっきバス停から見えてた橋か。
渡ったところが公園の入り口になっていた。
「台湾最北端富貴角燈台」
萌えるな!! 最北端だよ!!
公園の地図を確認して、表示に従って、てくてく。公園の中に入ると、ちらほら人影もあり、ちょっと安心。駐車場に車もあったので、みんな自家用車で来るようだ。
数分で、砂浜が見えてきた。
あれ、あの、砂浜と波の間の緑っぽいの、あれがそうか…!!!!
思ったよりも長さがある海岸で、上から見た感じでは、私がいる灯台側の浜には人影まばら。海岸の反対側の方が人がたくさんいるようだ。遊歩道から浜に降りる道的なものも見当たらず、降りられるところを探す。(しかし、風が強風半端なく、日本海みたいな白波荒波でビクった。)
降りられるところを見つけ、浜に降りていくと、季節風に舞い上げられる浜の砂をよけるためだろう、幾重にも柵が張り巡らされていた。
砂浜に降りて、石槽とご対面。
なんて幻想的で美しいんだろう!!
残念ながら、太陽が陰って薄暗かったが、それでもしっとりとした緑が何とも言えず美しかった。
岬の向こうに燈台がある。
私が降りてきたのは、岬の向こうの灯台に向かう遊歩道。
この日、こちら側の海岸には本当に人が少なく、まるで海岸を独り占めしているような気分で、思う存分写真を……撮りたかったのだが、私のおばかなコンデジちゃんの充電器がご臨終一歩手前で十数枚撮影したところで電池切れ表示がでてしまい、恨めしい思いをしてしまった。
(このころはまだスマホじゃなかったので、デジカメの電池切れは致命傷だったのだ涙)
しずかな海岸でたっぷりと石槽の美しさを堪能でき、諦めずに出てきて本当に良かったと心から思った。
石槽鑑賞後、人でにぎわう海岸の向こう側にも行ってみようかと思ったが、朝から何も飲み食いしておらず、とりあえず何か食べたい、岬の燈台の先には漁港で海鮮が食べられたはず…というわけで、元来た遊歩道に戻り、次は灯台を目指すことにした。
海岸から燈台までは、ゆっくり歩いて10分ほど。
富貴角燈塔は、日本統治時代に一番初めに建てられた、白と黒のコントラストが美しい燈台。内部の一般公開はしていないが、外から見るだけでも、十分に美しさが堪能できる。
少し離れたところから眺めると、緑が燈台を引き立ててさらに美しい。
遊歩道では、野生の百合の花が満開を迎えていた。
電池の残りが少なく、写真がたくさん撮れず本当に悔しい。
燈台から富貴角漁港までは、ゆっくり歩いてだいたい15分ほどで到着。
観光向けの市場では、魚を買い求める人で賑わっており、観光客が買った魚を同じ建物の奥にあるレストランに持ち込んで調理してくれるサービスをしていたり、土産物を売っていたり。レストランを覗いたりもしてみたが、一皿料理で定価で出してるような店でも、財布の中の持ち合わせ的に一人で食べるには予算が足りず、涙を呑んでここでの食事は諦めることにした。
結局、観光漁港に来たくせにトイレだけ借りて、すきっ腹をかかえたまま、最初に到着したバス停の路までもどったのだった。
この日、がぁこが食べ物にありつけたのは、淡水に戻ってからだったとさ…。
(教訓:出かけるときは財布の中も確認してからでかけよう。爆)
老梅石槽
交 通:MRT淡水駅からバスで。今回は「燈台口」下車
詳しくは駅のインフォメーションセンターで確認すると便利。
ベストな時期:4月上旬から5月くらいまで。
台湾人によると旧暦の「晴明節」の時期がベスト、とのこと。
がぁこ訪問 :2013年4月(初)
https://goo.gl/maps/eytXpwkGXfK2