感じているものをなんとか描き出したい「睡蓮の池」(クロード・モネ 作 1915-26年)
【「新・美の巨人たち」<2019.4.6放映番組> 主な解説より引用)
(はじめに 2019年4月より、「美の巨人たち」は「新・美の巨人たち」として再スタートしました。引き続き、綴っていく予定です。よろしくお願いいたします】
タテ2メートル、ヨコ6メートルの大作。画面の右側には、睡蓮の葉と花。左側には、薄いピンクに染まる部分がある。これは、夕焼けが水面に映り反映している。作品の左下には、様々な色が入っている。遠くと近くでは、ずいぶんと印象が違う。
「睡蓮の池」は、モネが70歳になって描いた作品であり、それまでに300を超える蓮をひたすら描いてきた。43歳でジヴェルニーに移り住み、睡蓮の地をつくり、それから30年間ひたすら睡蓮を描きつづけたという。
ゲストの又吉直樹氏曰く「普通の人間の目ではない」「絵の中で溶け合っている」と。モネの「印象 日の出」(1872年)は、荒々しいタッチが残っていることから、パリの周辺からは、未完成作品と揶揄された。
さらに、モネを敬愛する画家の松本陽子さんが、モネの描きかたを再現して見せた。絵の具をパレットで混ぜないで、そのまま画面に叩きつける描きかたに特徴があるとする。
モネは語っている。「感じているものを、なんとか描き出したい」と・・・。
《地中美術館は「自然と人間を考える場所」として、2004年に設立。瀬戸内の美しい景観を損なわないよう建物の大半が地下に埋設され、館内には、クロード・モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの作品が、安藤忠雄設計の建物に恒久設置されている。地下でありながら自然光が降り注ぎ、一日を通して、また四季を通して作品や空間の表情が刻々と変わる。アーティストと建築家とが互いに構想をぶつけ合いながら、つくり上げたこの美術館は、建物全体が「巨大なサイトスペシフィック・ワーク」といえる。》
《 》部分は、「ベネッセアート直島」サイトより引用。
(番組を視聴後の私の感想綴り)
<モネ作品に対する印象>
19世紀後半のフランスに発した絵画を中心とする芸術運動に「印象派」がある。当時のフランスの保守的な美術界からの激しい批判にさらされながらも、独立した展覧会を連続して開催することで、突出した存在になった。この運動の名前こそ、クロード・モネが描いた作品「印象・日の出」に由来している。
ルイ・ルロアは、嘲笑の意味も含めて、「印象派の展覧会」とタイトルをつけた「ル・シャリバリ」の記事の中で、「モネの絵画はせいぜいスケッチであり、完成した作品とはいえない」と断じた。
一方、モネ、シスレー、モリゾ、ピサロは、一貫して自由気まま、日光、色彩のアートを追求し、「最も純粋な」印象派と評価された。印象派絵画の大きな特徴は、光の動き、変化の質感を、いかに絵画で表現するかに重きを置いている点である。
写実派の「圧倒的な臨場感」を観てきた視点からは、正直今回の作品のような印象派的作品は、私にとってはインパクトが薄い、まさに「印象」であると把えた。
<地中美術館に対する印象>
舞台は、瀬戸内海に浮かぶ「直島(なおしま)」。紹介される作品「睡蓮の池」(クロード・モネ作 1915-26年)の前に、度肝を抜いたのは、建物のほとんどが地中に埋まっている「地中美術館」であった。
この作品「睡蓮の池」を展示するために、この地中美術館をつくったと紹介されて、さらに驚いた。
《幾何学形の開口部が地上にある以外は、施設全体が地下に埋められている。2人の美術家とクロード・モネを担当するキュレーター秋元雅史氏が、建築を担当した安藤忠雄と意見をぶつけ合った。その中からこの美術館以外では見られない・成立しない、場所限定的な作品(サイト・スペシフィックな作品)を構想し、制作・設置した。》
《 》部分は、ウィキペディアより引用。
直島だからこそ、そうした構想も実現したのだろうと直感した。博物館経営論の視点からすれば、なかなか許されないアプローチかもしれない。
一方、地下空間とは思えないくらい広々とした展示室そのものが、無個性であるもののフレキシブルである、「ホワイトキューブ」という空間で構成されているのが、鮮烈であり印象的であった。
安藤忠雄氏の建築により、地下にありながら自然光を採り入れ、一日の中でも時間によって作品の見え方が変化する。 あたかも建物全体が、巨大な芸術作品であるような印象を与える。
これからの美術館は、単に作品を展示するだけの機能のみに留まらない。ということを提起しているのだろう。美術館そのもののもち方、あり方に、積極的な意味で一石を投じる美術館作品のようにも感じた。
また、おそらくは建物そのものも、作品とともに地中に存在させることで、瀬戸内海の自然豊かな景観そのものも損なわない。その意志が明確なメッセージとして、毅然と読みとれるものと感じた。
これからの時代は、バーチャルミュージアム、デジタルアーカイブ、テクノロジカル・アート、インタラクティブ・アートといった、様々な媒体やメディアによる、展示そのものの情報発信の形態も、グローバルに、瞬時に、時間と場所の制約をいともたやすく超えて、多様化の一途をたどることになるのだろう。
このことは、「アートの本質は何か」、3D作品の中で「複製技術による全く真正のアートと変わらない作品」をどう解釈するのかという問題を、突きつけることになるのか。
学芸員課程の学習の中でも、さらに探求してみたい分野であり、自らのアート表現のこととも重なる問題であると受け止めた。
写真: 「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2019.4.6>より転載。同視聴者センターより許諾済。「睡蓮の池」(クロード・モネ作 1915-26年)
「地中美術館」外観・上空より<建築設計 安藤忠雄建築研究所
管理運営 財団法人 福武財団>
「睡蓮の池」(クロード・モネ作 1915-26年)
「地中美術館」<建築設計 安藤忠雄建築研究所
管理運営 財団法人 福武財団>外観・上空より