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タイムトンネルと夏への扉。

2019.05.05 15:00

Naoyaです。

今日は二十四節気の7番目、立夏。ゴールデンウィーク中は肌寒い日が多く、暖かい日が待ち遠しかったのですが、5月2日の八十八夜を経て、いよいよ暦の上ではここから夏です。八十八夜とは立春から数えて88日目のことを示し、八十八夜の頃から霜が降りなくなり、不安定な春の気候も終わって夏になっていきます。

薫風とは「くんぷう」と読んで、夏の到来を告げる風のことを意味します。ちなみに、春の到来を告げる風は東風(こち)、秋の到来の風は秋風、冬の到来の風は凩(こがらし)と言います。

薫風は南から吹いてくる風です。薫風には「こういう香り」というものが具体的にあるわけではありませんが、鮮やかな新緑をたおやかに揺らす爽やかな風のイメージが思い浮かびます。薫風は嗅覚で感じる風というよりも、視覚や肌感でも香りを感じるように思えます。青嵐(あおあらし)なんていう風流な言葉もあります。ちょうど初夏の頃、若葉や青葉を揺らして吹き渡る風のことです。

昨日5月5日は端午の節句でした。昨年は夏至と端午の節句が同じ5月5日でしたが、今年は一日ずれています。旧暦時代には中国から伝わった五節句というものものがあって、端午の節句はそのひとつです。他は1月7日の人日(じんじつ)の節句、3月3日の上巳(じょうし)の節句、7月7日の七夕の節句、そして9月9日の重陽(ちょうよう)の節句です。

五節句にはそれぞれ、所縁のある植物と邪気祓いの食べものがあります。昔ながらの風習がそのまま残っている節句と、形を変えて残っている節句、そしてほとんど残っていない節句がありますが、端午の節句はほぼそのまま残っていて、鯉のぼりを立てて、ちまきや柏餅を食べて、菖蒲湯に浸かるのが習わしです。

柏の木には神が宿るとされていて、新芽が出ないと古い葉が落ちないため、子どもが生まれるまで親は死なないと意味づけされて、子孫繁栄の願いを込めて柏餅を食べるという説があるそうです。

旧暦の5月は「毒月」と言われていたそうで、「五月忌み」ということで邪気を祓うために菖蒲の葉や蓬を軒に挿していたそうです。菖蒲の香りが厄を祓うと信じられて、菖蒲湯に入る風習となりましたが、菖蒲の成分には打ち身や腰痛、肩こりなどにも効能があるそうです。そして、菖蒲を尚武(武を尊ぶという意味)に引っかけて、いつしか端午の節句は男の子をお祝いする「こどもの日」となりました。

今年のゴールデンウィークは、これまでにない特別なものとなっています。平成から令和へ変わる5月1日を中心に、今年だけ特別に祝日と制定された日もあるため、10連休という人も多いのではないでしょうか。月や日にち、曜日の感覚がどんどん麻痺しながら、終わりと始まりが混ざり合うような、時代の感覚がわからなくなりそうな、今、どこを歩いているのかという自覚が薄れるような、不思議なタイムトンネルを潜っているかのように思えます。

令和という元号の「令」という字やラ行の響きからは新しさを感じさせ、「和」は昭和の和だったりもするわけで。伝統を大切に継承しつつ、新しいものを取り入れていくような匂いを感じ取りました。

そんなタイムトンネルを抜けた先には、また「いつも」の日常がやって来ます。でもそれは前と同じ「いつも」が戻って来るわけではなく、令和という新しい時代から生まれる「いつも」です。そしてその日常の中に、夏へと続く扉が開いています。山下達郎さんの「夏への扉」が聴きたくなりました。光のトーンやニュアンス、肌に触れる粒子のタッチが、前よりだいぶ夏めいてきていることへの喜びを味わいつつ。