Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

筧克彦『皇国憲法大旨』【昭和11年小冊子復刻附注釈】④資料《大日本帝国憲法。第一章天皇》《皇室典範(戦前)》

2019.05.03 23:15



…或は亡き、『大日本帝国』の為のパヴァーヌ。その1



筧克彦『皇国憲法大旨』ヲ以下ニ復刻ス。


皇国憲法大旨

筧 克彦


[復刻及注釈亦資料附ス。奥附ケ等無シ。]





凡例。

[註]及ビ[語註]ハ注記也。

[]内平仮名ハ原文儘ルビ也。

[※]ハ追加シテ訓ジ又語意ヲ附ス。

底本ハ国会図書館デジタル版也。

同館書誌ニ昭和11年刊ト在リ。其レ以外未詳。

出版社、出版年月日等原書ニハ無シ。

蓋シ配布資料トシテ作成シタ小冊子ノ如キ文書乎。


    憲法第一条乃至第四条[註]のこころ

大日本帝国憲法は妥協条項たることを其の本質とせず、天地の公道・神ながらの大道たる立国の大法即 皇祖様 皇宗様の御遺訓を明徴にし給ひたるものである。皇国の憲法は皇法即国法にして、皇室典範と其の系統を分ちつゝ両両相持つて皇国の根本法典と為つて居る。

[註。大日本帝國憲法天皇ノ章ハ下ノ如シ

 大日本帝國憲法

 第一章 天皇

第一條

大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス

第二條

皇位ハ皇室典範[※こうしつてんぱん。註]ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ繼承ス

第三條

天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス

第四條

天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬[※そうらん。掌握]シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ

第五條

天皇ハ帝國議會ノ協贊ヲ以テ立法權ヲ行フ

第六條

天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス

第七條

天皇ハ帝國議會ヲ召集シ其ノ開會閉會停會及衆議院ノ解散ヲ命ス

第八條

天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル爲緊急ノ必要ニ由リ帝國議會閉會ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ發ス

此ノ勅令ハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出スヘシ若[※もし]議會ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ將來ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ

第九條

天皇ハ法律ヲ執行スル爲ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ增進スル爲ニ必要ナル命令ヲ發シ又ハ發セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ變更スルコトヲ得ス

第十條

天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ揭ケタルモノハ各〻其ノ條項ニ依ル

第十一條

天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス

第十二條

天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム

第十三條

天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ條約ヲ締結ス

第十四條

天皇ハ戒嚴ヲ宣告ス

戒嚴ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第十五條

天皇ハ爵位勳章及其ノ他ノ榮典ヲ授與ス

第十六條

天皇ハ大赦特赦減刑及復權ヲ命ス

第十七條

攝政[※せっしょう]ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル

攝政ハ天皇ノ名ニ於テ大權ヲ行フ

引用以上。]

[戦前皇室典範ハ以下ノ如シ

天佑ヲ享有シタル我カ日本帝國ノ寳祚ハ萬世一系歷代繼承シ以テ朕カ躬ニ至ル惟フニ祖宗肇國ノ初大憲一タヒ定マリ昭ナルコト日星ノ如シ今ノ時ニ當リ宜ク遺訓ヲ明徵ニシ皇家ノ成典ヲ制立シ以テ丕基ヲ永遠ニ鞏固ニスヘシ茲ニ樞密顧問ノ諮詢ヲ經皇室典範ヲ裁定シ朕カ後嗣及子孫ヲシテ遵守スル所アラシム

御名御璽

明治二十二年二月十一日

 皇室典範

 第一章  皇位繼承

第一條 大日本國皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ繼承ス

第二條 皇位ハ皇長子ニ傳フ

第三條 皇長子在ラサルトキハ皇長孫ニ傳フ皇長子及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇次子及其ノ子孫ニ傳フ以下皆之ニ例ス

第四條 皇子孫ノ皇位ヲ繼承スルハ嫡出ヲ先ニス皇庶子孫ノ皇位ヲ繼承スルハ皇嫡子孫皆在ラサルトキニ限ル

第五條 皇子孫皆在ラサルトキハ皇兄弟及其ノ子孫ニ傳フ

第六條 皇兄弟及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇伯叔父及其ノ子孫ニ傳フ

第七條 皇伯叔父及其ノ子孫皆在ラサルトキハ其ノ以上ニ於テ最近親ノ皇族ニ傳フ

第八條 皇兄弟以上ハ同等內ニ於テ嫡ヲ先ニシ庶ヲ後ニシ長ヲ先ニシ幼ヲ後ニス

第九條 皇嗣精神若ハ身體ノ不治ノ重患アリ又ハ重大ノ事故アルトキハ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シ前數條ニ依リ繼承ノ順序ヲ換フルコトヲ得

 第二章  踐祚卽位

第十條 天皇崩スルトキハ皇嗣卽チ踐祚シ祖宗ノ神器ヲ承ク

第十一條 卽位ノ禮及大嘗祭ハ京都ニ於テ之ヲ行フ

第十二條 踐祚ノ後元號ヲ建テ一世ノ間ニ再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制ニ從フ

 第三章  成年立后立太子

第十三條 天皇及皇太子皇太孫ハ滿十八年ヲ以テ成年トス

第十四條 前條ノ外ノ皇族ハ滿二十年ヲ以テ成年トス

第十五條 儲嗣タル皇子ヲ皇太子トス皇太子在ラサルトキハ儲嗣夕ル皇孫ヲ皇太孫トス

第十六條 皇后皇太子皇太孫ヲ立ツルトキハ詔書ヲ以テ之ヲ公布ス

 第四章  敬稱

第十七條 天皇太皇太后皇太后皇后ノ敬稱ハ陛下トス

第十八條 皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃內親王王王妃女王ノ敬稱ハ殿下トス

 第五章  攝政

第十九條 天皇未タ成年ニ達セサルトキハ攝政ヲ置ク

天皇久キニ亘ルノ故障ニ由リ大政ヲ親ラスルコト能ハサルトキハ皇族會議及樞密顧問ノ議ヲ經テ攝政ヲ置ク

第二十條 攝政ハ成年ニ達シタル皇太子又ハ皇太孫之ニ任ス

第二十一條 皇太子皇太孫在ラサルカ又ハ未タ成年ニ達セサルトキハ左ノ順序ニ依リ攝政ニ任ス

 第一 親王及王

 第二 皇后

 第三 皇太后

 第四 太皇太后

 第五 內親王及女王

第二十二條 皇族男子ノ攝政ニ任スルハ皇位繼承ノ順序ニ從フ其ノ女子ニ於ケルモ亦之ニ準ス

第二十三條 皇族女子ノ攝政ニ任スルハ其ノ配偶アラサル者ニ限ル

第二十四條 最近親ノ皇族未タ成年ニ達セサルカ又ハ其ノ他ノ事故ニ由リ他ノ皇族攝政ニ任シタルトキハ後來最近親ノ皇族成年ニ達シ又ハ其ノ事故既ニ除クト雖皇太子及皇太孫ニ對スルノ外其ノ任ヲ讓ルコトナシ

第二十五條 攝政又ハ攝政タルヘキ者精神若ハ身體ノ重患アリ又ハ重大ノ事故アルトキハ皇族會議及樞密顧問ノ議ヲ經テ其ノ順序ヲ換フルコトヲ得

 第六章  太傅

第二十六條 天皇未夕成年ニ達セサルトキハ太傅ヲ置キ保育ヲ掌ラシム

第二十七條 先帝遺命ヲ以テ太傅ヲ任セサリシトキハ攝政ヨリ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シ之ヲ選任ス

第二十八條 太傅ハ攝政及其ノ子孫之ニ任スルコトヲ得ス

第二十九條 攝政ハ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シタル後ニ非サレハ太傅ヲ退職セシムルコトヲ得ス

 第七章  皇族

第三十條 皇族ト稱フルハ太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃內親王王王妃女王ヲ謂フ

第三十一條 皇子ヨリ皇玄孫ニ至ルマテハ男ヲ親王女ヲ內親王トシ五世以下ハ男ヲ王女ヲ女王トス

第三十二條 天皇支系ヨリ入テ大統ヲ承クルトキハ皇兄弟姉妹ノ王女王タル者ニ特ニ親王內親王ノ號ヲ宣賜ス

第三十三條 皇族ノ誕生命名婚嫁薨去ハ宮內大臣之ヲ公吿ス

第三十四條 皇統譜及前條ニ關ル記錄ハ圖書寮ニ於テ尚藏ス

第三十五條 皇族ハ天皇之ヲ監督ス

第三十六條 攝政在任ノ時ハ前條ノ事ヲ攝行ス

第三十七條 皇族男女幼年ニシテ父ナキ者ハ宮內ノ官僚ニ命シ保育ヲ掌ラシム事宜ニ依リ天皇ハ其ノ父母ノ選擧セル後見人ヲ認可シ又ハ之ヲ勅選スヘシ

第三十八條 皇族ノ後見人ハ成年以上ノ皇族ニ限ル

第三十九條 皇族ノ婚嫁ハ同族又ハ勅旨ニ由リ特ニ認許セラレタル華族ニ限ル

第四十條 皇族ノ婚嫁ハ勅許ニ由ル

第四十一條 皇族ノ婚嫁ヲ許可スルノ勅書ハ宮內大臣之ニ副署ス

第四十二條 皇族ハ養子ヲ爲スコトヲ得ス

第四十三條 皇族國疆ノ外ニ旅行セムトスルトキハ勅許ヲ請フヘシ

第四十四條 皇族女子ノ臣籍ニ嫁シタル者ハ皇族ノ列ニ在ラス但シ特旨ニ依リ仍內親王女王ノ稱ヲ有セシムルコトアルヘシ

 第八章  世傳御料

第四十五條 土地物件ノ世傳御料ト定メタルモノハ分割讓與スルコトヲ得ス

第四十六條 世傳御料ニ編入スル土地物件ハ樞密顧問ニ諮詢シ勅書ヲ以テ之ヲ定メ宮內大臣之ヲ公吿ス

 第九章  皇室經費

第四十七條 皇室諸般ノ經費ハ特ニ常額ヲ定メ國庫ヨリ支出セシム

第四十八條 皇室經費ノ豫算決算檢査及其ノ他ノ規則ハ皇室會計法ノ定ムル所ニ依ル

 第十章  皇族訴訟及懲戒

第四十九條 皇族相互ノ民事ノ訴訟ハ勅旨ニ依リ宮內省ニ於テ裁判員ヲ命シ裁判セシメ勅裁ヲ經テ之ヲ執行ス

第五十條 人民ヨリ皇族ニ對スル民事ノ訴訟ハ東京控訴院ニ於テ之ヲ裁判ス但シ皇族ハ代人ヲ以テ訴訟ニ當ラシメ自ラ訟廷ニ出ルヲ要セス

第五十一條 皇族ハ勅許ヲ得ルニ非サレハ勾引シ又ハ裁判所ニ召喚スルコトヲ得ス

第五十二條 皇族其ノ品位ヲ辱ムルノ所行アリ又ハ皇室ニ對シ忠順ヲ缺クトキハ勅旨ヲ以テ之ヲ懲戒シ其ノ重キ者ハ皇族特權ノ一部又ハ全部ヲ停止シ若ハ剝奪スヘシ

第五十三條 皇族蕩產ノ所行アルトキハ勅旨ヲ以テ治產ノ禁ヲ宣吿シ其ノ管財者ヲ任スヘシ

第五十四條 前ニ條ハ皇族會議ニ諮詢シタル後之ヲ勅裁ス

 第十一章  皇族會議

第五十五條 皇族會議ハ成年以上ノ皇族男子ヲ以テ組織シ內大臣樞密院議長宮內大臣司法大臣大審院長ヲ以テ參列セシム

第五十六條 天皇ハ皇族會議ニ親臨シ又ハ皇族中ノ一員ニ命シテ議長タラシム

 第十二章  補則

第五十七條 現在ノ皇族五世以下親王ノ號ヲ宣賜シタル者ハ舊ニ依ル

第五十八條 皇位繼承ノ順序ハ總テ實系ニ依ル現在皇養子皇猶子又ハ他ノ繼嗣タルノ故ヲ以テ之ヲ混スルコトナシ

第五十九條 親王內親王王女王ノ品位ハ之ヲ廢ス

第六十條 親王ノ家格及其ノ他此ノ典範ニ牴觸スル例規ハ總テ之ヲ廢ス

第六十一條 皇族ノ財產歲費及諸規則ハ別ニ之ヲ定ムヘシ

第六十二條 將來此ノ典範ノ條項ヲ改正シ又ハ增補スヘキノ必要アルニ當テハ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シテ之ヲ勅定スヘシ

引用以上。]