18. スパイラル現象
大河は蛇行しながら海にむけて流れていきますが、世の中の社会現象も同じような動きをしています。しかし大河が左右に蛇行するまでは同じ動きをしますが、社会現象の場合は竜巻のように「スパイル状(spiralらせん状)」に上昇してゆくところが違っています。大河は平地を蛇行する2次元の変化で、それに対して、社会現象は円を描きながら縦に上昇する3次元の動きをします。
「スパイラル状」はスプリングを見るとわかりますが、真上から見ると円形ですが真横から見ると直方体に見えます。ある現象がスプリングの底辺に生じると、しばらくするとその現象は円上を正反対の位置まで動いていきます。さらに時間の経過と伴に再び元の位置まで戻ってきます。しかし、再帰した場所は元の場所ではなく、スパイラルを一段階上の場所に到達します。その動きを繰り返すことを「スパイラル現象」と称しています。以前と全く同じ場所に戻らないのは、技術革新などにより生活環境や文化構造などが変化しているからで、本質的には核の部分は同じでも周りが異なっているので次元が異なってきます。
例えば、私たちの生活を見てみましょう。パソコンやインターネットの発達によって全く新しい社会が出現しました。これを「アナログ社会」から「デジタル社会」への変遷と言われています。アナログは人的要素が強く、デジタルは器械を重用する社会と言われています。
典型的な事例をあげてみると分かりやすいでしょう。それは鉄道駅の改札口です。昔は、アナログ方式で駅員が乗客の切符にハサミをいれていました。しかし、現在は駅員の代わりに自動改札口になりました。切符の購入も窓口から器械、それもキャシュレスにまでなっています。駅員と会話をまったくしないで電車にのれます。これこそがデジタル化の流れです。問題はこれからどこへ向かって社会は流れてゆくかです。
誰も正確な予測はできませんが、私はスパイラル現象に基づきながら、再び、アナログに戻ってくると考えています。しかしながら、そこで注意することは以前のアナログとは異なった高次元のアナログになるということです。現在の自動改札口がやがてアナログ的な自動改札口が出現すると予測できます。具体的な様相は提示できませんが、アイデアですが「駅員が鉄道案内をする改札口」はどうでしょうか。自動改札機能を取り入れ、更に新たなアナログ的な要素を取り込んだ方法です。それを具現化するマーケティング力がこれからは高く評価されるでしょう。また、それができたところが生き残っていきます。
ビジネスで成功するには、未来の動きを先取りすることができるかにかかっています。社会の流れをいち早く捉えるために貴方自身のアンテナの感度を良くしておく必要があります。
今後のマーケティング戦略を立てるには、まずは現在の位置を把握することが重要です。貴方の仕事に関して、現在はデジタル社会の真最中なのか、既に中点を過ぎ新たにアナログに向かっているのか、一体全体、円周のどこに位置づけられるのかを見極めなければなりません。貴方の現状把握が社会の流れと異なっていた場合はズレを修正しなければなりません。なぜならば、その想定地点によって展開すべき戦略が異なってくるからです。
「スパイラル現象」は色々と応用できる概念です。バブル時代には「大きければ全て良し」の時代で売上、組織、店舗数など全てを大きく拡大したり増やしたりさせることが経営目標でしたが、現在は「小さいほど全て良し」の時代に変化しました。旧態依然の経営手法に陰りが見えます。「スパイラル現象」に基づくと、将来は再び「大きければ全て良し」の時代に向かうと想定されますが、ここで注意することは、以前とは異なった高次元の「大きければ全て良し」の時代になることです。高次元とは、例えば、少数精鋭主義に基づく器量の大きさであり、売上額ではなく利益率の大きさになるなどです。その他にもいくつか実例を挙げてみましょう。
1 政治の世界に目を向けてみると、2009年9月から2012年12月まで、自民党が長い間政権を握った時代から野田政権が誕生し民主党中心の連立政権にかわりました。それから3年目に自民党が再度政権をとり現在にいたっています。このように政権も、両極端にある与党と野党が、相互に期間は異なりますが必ず交互に政権をとるようになります。したがって、近い将来再び野党が政権を取るときがくるはずですが、その際の野党は以前の野党の状態ではなく異次元の野党になっていなければなりません。これがスパイラル現象に応じることです。野党が政権を取るためには、当然のことですが、現在の与党政権の時代に再度政権を勝ち取るための準備を怠っていてはいけません。なにもせずに天から政権が落ちてくるはずはありません。
2 人類の歴史は常に戦争と平和の連続です。日本でも、戦後70年は特に戦争らしいことなく安穏とした平和の時代が続いていますが、忘れていけないことは、明治維新から昭和20年までの約80年間、毎年日本は戦争をしていました。これは事実です。それ以前の江戸時代250年は平和の時代で、その前は戦国時代でした。このように、歴史を見るとわかるように、戦争と平和は常に繰り返し起きています。「スパイラル現象」に基づくとこれからの日本は戦争に向かっていると想定されます。但し、戦争が勃発しても昭和20年以前の戦争とは異なった異次元の戦争になると予想されます。具体的に想定できませんが、世界で生じている経済戦争、政治戦争、局地戦争、テロ戦争、ロボット戦争などは「スパイラル現象」による方向だといえるかもしれません。
日本人は平和という温室をエンジョイして、戦争の当事者意識に欠如しているといわれています。いつ何時「まさか!」と言っても、その時では遅いのです。平和な時代は次の戦争の時代の準備期間だとみることを忘れてはなりません。戦争の時代が到来しないように平和の時代をできるだけ長く永続できるように叡智を結集する必要があります。「歴史は繰り返す」ことを忘れてはなりません。
3 ビジネスの世界から例を一つあげてみます。ビジネスも現在が順調だからといって、未来永劫に好調ばかりではありません。時には売上が不調になることもあります。常に、売上げはアップとダウンの繰り返しです。現在売上が好調ならば、必ずいつか売上が減少します。また、現在の売上不調が永遠に続くこともありません。必ず、いつか売上が回復してくるはずです。但し、前年と同じことを実施していてはダメです。お祈りしても不可能でそこには工夫と挑戦が必要です。何もしないで売上が回復することはありえないからです。近年、騒がれているインバウンドは天から降ってきた一時雨です。瞬間的に売上が上がっても企業の体質が改善されていなければ元の木阿弥です。前年と同じことを実施していてはダメで、それでは前年の売上さえも達成はできません。常に「工夫と挑戦」を実行してゆかないと「スパイラル現象」に乗じることはできません。
4 平家物語の一文、「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」に歌われている「無常」ですが、あの盛況を誇った平家一門も突然滅亡してしまいました。まさに奢れる平家久しからずです。「常に○○である」ということは世の中にありえません。「健康と病気」「幸福と不幸」でさえも常に交互にやってきます。これらを事実として受け入れ、健康で幸福の時代が長く続くよう努力すること、これが肝心なのです。生憎、今、病気や不幸の時ならば抜け出す努力をしていれば、必ず健康で幸福の時代の到来が来るはずです。ビジネスもプライベイトも同じ考えです。