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Angler's lullaby

令和ミノーイング

2019.05.13 09:00

「人の一生は重き荷を負うて、遠き道を行くが如し〜」とは徳川家康の遺訓。


彼みたいな偉人でなくっても、それぞれにとって人生なんてものは多かれ少なかれそんなものだろう。


そう言えば、最近ハマっている源流釣りにはまさしくこの言葉が当てはまる。


リュックにまぁまぁ重い荷物を詰め込んで、山の中、谷の底を1日軽く10㎞は歩き回るこの釣り。


一点、違うのは冒頭に書いた家康の遺訓の一節の直後に書かれてあるフレーズ。


「急ぐなかれ~」


だ。


朝は朝で早くフィールドに立ちたい一心で、前のめりのつんのめりな早歩きになり、夕は夕で迫る日没を恐れて走るように車へと急ぐ。


〆の台詞は毎回同じ。


「今日も目一杯遊んだなぁ!」


だ。


全く懲りない小学生とさほど違いがない。


令和初釣り。5月2日の源流釣行。


いつものMURAジムニーに乗せてもらい、前から目を付けていた谷へと急ぐ。重き荷物と遠い道などものともしないテンションで。


ところで、このサイトを始める前は5年ほど他で今と同じように駄文を綴っていた。


そこは「スプーン専門」というコンセプトがあり、それに賛同し、協力した私も5年間くらいは魚種を問わずスプーンしか使わなかった。


それから諸事情あって、今に至るのだけど、ことヤマメに関しては正直スプーンでは攻め切らなかったというのが本音。


ニジマスやイワナは試行錯誤して、まぁまぁのメソッドを見つけることが出来たと思うが、1番身近なトラウトには苦戦し続けた。


チェイスしてきた主(ヌシ)クラスを目の前にして、何度悔しい思いをしてきたか知れない。


前のサイトをやめた理由は他にもあったのだけど、現在の私のスプーンスキルではヤマメに太刀打ち出来ないということもその1つだ。



そして今はヤマメに関してはミノーオンリーで釣りをしている。しばらくは本気でこの釣りを突き詰めようと思っている。


幸い、ここ宮崎県には豊かな自然が多く残っていて、ヤマメのフィールドにはこと欠かない。


この日訪れた川でもほんの短いエリアの中で、ヤマメたちは実に様々なパーマークと色合いを見せてくれた。


上の写真、5月なのにまるで紅葉のように紅い個体が釣れたほんの上流で、



こんな暗く複雑な模様の個体がいたりする。


色鮮やかなヤマメにはだいぶ目が慣れてきてしまっているが、この灰色と暗緑色がヴェールのように全身を覆う個体には、しばらく目を奪われた。


そして共通しているのは、ヌラリとした深く美しい輝き。


ギラギラしたウロコはほとんど見えない。


まさしく九州、宮崎の森が育んだ清らかな水の精霊。



10連休の折り返しという普通の釣り場にとってはタフな時季だが、この川は幸いあまり人が入っていないようだった。


足跡も、ゴミも見当たらない新緑の渓流は本当に気持ちが良い。


こんな美しさを目の前にした時の感動は本当に他に例えようがない。


最近、めっきり腕を上げて私より良い釣果を出すことも多くなったMURA。


しかしこの日この川の神様はどうやら私の方を気に入ってくれたようだ。



大滝でアングロのHOBOミノーにバイトしてくれた一尾がこの日のクライマックス。


撮影場所に苦労しながら、色々と手伝ってもらいながら少しの時間付き合ってもらう。


この顔、色、そして目つき。


最高の出会いだった。


そしてまた秋に再び出会えるよう、元の場所に戻し、友人と2人、握手を交わした。


私は遊ぶ時には真剣に、とことん遊びたい方だ。その時その時で己の限界に挑むような何かをやりたい。何かしら己に負荷を掛け続けないと物足りない性格だ。


何の苦しみもない遊びに本当の楽しみなんてあるはずがない。そう信じている。


古文において「遊び」という単語の意味を調べると、まず真っ先に出てくるのが、神前での歌や舞い、詩を詠むこと。今と比べるとその意味合いは随分高尚だったのかもしれない。


たかが釣りに、と言われるかもしれないが、私の中ではそんなイメージなのだ。だから、渓流や源流を歩くときは太ももの乳酸が苦々しく充満するまで歩きたいし、出会ってくれた渓魚はなるべく美しくその記録を残したい。


そしてたまには空を見上げて山の木々の息吹を胸一杯に吸い込み、神を感じたい。


思えば、このサイトを始めたのが去年の9月。数年ぶりにミノーを使ったのがその前月だった。


そしてすぐ禁漁を迎え、今年。そして令和へと。


やっと、ぼんやりとだが自分自身のミノーイングが見えてきた。

まだまだ、もっともっとイメージを膨らませ、精度を高めて、この釣りを突き詰めていこうと思う。


そしていつか、ミノーイングのエッセンスをスプーンでの釣りにフィードバックする。

あの時自分自身に課した課題を、もう一度挑戦するために。


そして何より、こんな風変わりな人間に付き合ってくれる友人たちがいることに、私は深く感謝せねばならないだろう。