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ぬっきー

Monday No.1(10) 神戸へ。第1.5話【夢であって、ハイパーリアリティですぞっ。】

2019.05.06 02:22


だらりんだらりん遠征

神戸へ。だいありぃ。第1.5話


空調機のファンの音がうるさかった。これを切ったら、カプセルの中の空気はこもり暑くなるんだろうな、と思った。やっぱりうるさいのでファンのスイッチをOFFにする。眠る。どこかのカプセルからか物音がして起きてしまう。それとやっぱり暑い。息苦しい。さすがに暑くなったのでスイッチに手を伸ばす。なにかがぼくの手首を掴む。ガシッ。

「わっ!えっ!?」

ぼくは驚き声が出てしまう。周りの寝ている客のことを思い出しとっさに口を押さえる。

「だめですよ、ファンをつけたら。」

と声とともにカプセル内の蛍光灯がつく。パチリ。すると目の前にはぼくと添い寝するように『オッター・ラッコ』がいる。ラッコ特有の黒茶色の長い毛むくじゃらの手でぼくの手首を握っている。

「あっいや、でももぉこれは動かないかなぁ。」

なにやら、歯にニラだかが挟まったようにモゴモゴ言っている。彼はラッコだからニラは食べない。昆布が挟まることならあるのかも知れない。

「オッター・ラッコ!?なんでここに??てか、早くその手を離せっ。」

ぼくは彼の手をもぎ取る。

「あぁ、ぬっきー久しぶりです。熊本・キャッスル・コテージぶり。またこうやって会えてよかったです!」

彼はぼくのことをぬっきーと呼ぶ。そして彼がぼくの前に現れるのに理由はない。

「暑いからファンをつけてくれない?」

「いやそれがぼくも暑いのですが今はつけられません。」

「はいぃ?いいからどいて、、、、」

パチリ、ファンのスイッチを押す。しかしファン動き出さない。パチリパチリ、と繰り返してみるも動かない。

「えっ壊れた??」

「いやちがいます、さっきまではついたんですよ、まだホテルにいるときは。空を飛んでるときはつけてはいけなかったのです。今は宇宙に出ているのでスイッチの主電源は切られています。」

なにを言っているのかわからない。暑さもあってイライラする。ぼくは確かにカプセルホテルのカプセルのまま、宇宙空間をさまよう妄想をした。

「ほらっ、見てください!これが六甲山です。」

カプセル内のTVには上空からの六甲山が写し出される。神戸は海と六甲山に挟まれたところだ。

「ほらっ、ここがカプセルホテルでここが昼間行ってた横尾忠則現代美術館です。そして兵庫県立美術館。」

まるでGoogleマップを見ているかのようで、だからどうした?と思った。それが顔に出たのだろう、オッターはカプセル内の狭い壁を指差して、

「そこのそれを上げて開けてみて下さい!」

「えっ?こんなのあったけ?」

壁には飛行機内のゆるい円形の窓が取り付けられていて、プラスチックの上下に開閉する仕切りが閉じられている。

「いや、ありませんでしたよ。宇宙に入る前にトランスフォームしました。どうぞ開けて下さい!」

はいはい。と二回返事をしてそれを持ち上げる。一瞬どこかでみた映像が目に入る。しかしそれとは明らかに異なっていて、初めて見るするそのどこまでも果てしなく続く空間はぼくの視神経を無限に引き伸ばす。どれくらい瞬きをしないで見ていたのだろうか?不意に水族館での『水中で光る生き物を見たときに宇宙みたいだ』記憶が思い出される。

「ほらっ、すごいでしょ!ここは宇宙ですよ!」

オッターのハイトーンの声がカプセル内に響く。

「しかし、そうは言っていられません。それではいきますよ!」

と言うなり、ファンの格子状になっている四角い枠を押す。壁に数センチめり込む。何かが確実に起動する音がしたかと思うと、カプセル全体から機械的な音がする。

「ちょっ、なに今度は!?」

オッターは口髭を震わせながらなにやら笑う。

するとカプセルの天井がドアを開けるように開き始める。棺桶に入ったドラキュラの目覚めのように。

「えっ?なになに!?」

目の前には満点の宇宙。

オッターはぼくの腕を掴み、

「さぁ、行きますよっ。」

と言った次の瞬間、力いっぱいジャンプした。ぼくらは宇宙空間に飛び出した。

「宇宙には酸素がないのになんで呼吸が苦しくならないの?と思っているでしょう?」

オッターはぼくに聞いてきたが、そんなことを考える余裕は無い。

「驚いてますねっ、でも大丈夫です。これは夢であって、ハイパーリアリティですぞっ。」

ぼくは耳抜きをするように、ツバを一度大きく飲み込んだ。ゴクリ。心臓のあたりがなんだか軽くなり、少し楽しくなってきた。

「まぁ、見てて下さい。」

オッターが見ている方向を見る。

カプセルは展開される。パカリ。直角に曲げられていた壁と床は一枚の板となる。立方体なのに、その展開はどこまでも続く正方形の平面になった。想像していた展開図と目の前にできた平面が異なってるのは、双眼鏡で近くのものを見ている感覚に近い。

オッターは肩からかけていたサザエ(もしくはチョココロネ)のような大きなねじまき貝からホタテ貝のような貝を取り出す。手頃な惑星を宇宙のその辺から掴み取ると、お腹の上でそのホタテ貝を割り始めた。

「少々お待ちを。」

カン、カン、カン、カン、カン、カン。

どこからともなく音がする。

「お待たせしましたっ。」

貝を割ると中から筆が出てきた。ぼくに渡す。また、ねじまき貝からホタテ貝を取り出し、少々お待ちを。と言って割り始める。

カン、カン、カン、カン、カン、カン。

今度は夜光虫のような光が貝から垂れ流れる。

「どうぞ、これで絵を描いて下さいっ。」

ぼくは頷き、筆を夜光虫に浸す。開かれたカプセルはキャンバスになっていた。

オッターはまた別の貝を取り出して割る。

カン、カン、カン、カン、カン、カン。

宇宙空間でぼくは一晩中、キャンバスに向かった。



『今日』にトマッテくださり、

ありがとうございます。

またね。

天貫 勇

Monday No.1(10)