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哀しきモルダー。

2019.05.06 04:34

X-ファイル(S-1)Ep.03「導管<Conduit>」

再びミソロジー系のお話しで、第1話にも少し前振りのあったモルダーの妹、サマンサの失踪事件。今回は、その出来事が、どれだけモルダーの人物形成や人生に大きな影響を与えているのかを、観る者に伝えてくれる一作となっています。ストーリーそのものは、子どもの頃にUFO目撃証言をしたことで、周囲から疎外されてきた母親が、今度は自分の娘をUFOと思しき何者かに誘拐され、それを調査するためにモルダーとスカリーが動き出すという、しごくシンプルな内容ですが、行方不明となった娘・ルビーに、サマンサの面影を重ねてしまうモルダーと、それを気遣いながらも捜査官として冷静さを失わないように努めるスカリー、それぞれの心理描写に注目ですな。


ルビー、失踪の夜。

​​アイダホに住むシングルマザーのダーリーン・モリスは、ある夜、子ども達を連れてオカボジー湖へとキャンプに出掛け、その夜、強烈な閃光と振動、そして金属を発熱させる不可思議な現象に出逢い、長女ルビーの姿を見失います。オープニングで残された弟・ケビンにすがりつかれながら、なぜか空を見上げてルビーの名を呼ぶ、ダーリーン。既にこの時に彼女は、ルビーを連れ去った者の正体に気付いていたんでしょうね。


アメリカンなキャンプと言えば。

​​焼きマシュマロ!ってことで、オープニング早々に出てくるこのシーンですが、形状から察するにアメリカでもポピュラーな、ロッキーマウンテンのクラシックマシュマロでしょうか。僕もキャンプで何度か体験しましたが、そこまでマストだとは思えず。アメリカ人の味覚が良くわかりません。余談でございました。


サマンサ登場。

​​8歳の時にモルダーの目の前で謎の失踪を遂げたサマンサ。スカリーを呼び出したブレビンス課長は、当時のX-ファイルを持ち出し「モルダーが、今回の事件に興味を示した理由はこれにあって、彼は公私混同し過ぎているのではないか?」と詰め寄るが、スカリーは「そうではないと思う」とその場を切り抜けます。


モルダーの目のつけどころ。

​​オフィスに戻り、もっと上手くやらないとダメだと諭すスカリーに、モルダーはこの事件に興味を持った理由を話します。現場となったオカボジー湖周辺では、過去に何度かUFOが目撃されていること。そして、今回の事件の当事者ダーリーンが、1967年の目撃事件の一人だったこと。このへんの下調べの能力に関しては、本当にモルダーは凄いです(笑)


ケビン、電波受信中。

​​早速、ダーリーンの自宅を訪ねると、彼女は彼らの到着を待ちわびていた様子。過去の経緯もあって警察もメディアも信じてくれないと嘆くダーリーン。スカリーに対しても「あなたの表情も彼らと同じね」と一言。一方のモルダーは、ケビンが何かを見ているのでは?とコンタクトを試みますが、なにやらケビン君は砂嵐のテレビ画面を見ながら、一心不乱にメモ中。よく見ると無数の「0」と「1」が書きならべられていました。「(テレビ)の向こうから来るんだよ」と言うケビン。モルダーはそれをケビンから受け取り、局の友人に解析を依頼します。


掻き回す女、テッサ。

​​三角関係のもつれからグレッグを殺害し、ルビーに濡れ衣をきせようとしたテッサ。おかげで、そもそも素行が悪いとされていたルビーに、グレッグとの駆け落ち疑惑が生まれ、捜査は混乱してしまいます。彼女を演じているシェリー・オーウェンズは、シーズン5から登場するジェフリー・スペンダー捜査官(実はCSマンの息子)を演じるクリス・オーウェンズの姉妹。年齢的には彼女がお姉さんなのでしょうか。役者としては、クリスのほうが断然活躍している感じですね。


今夜のお宿は?

​​​​今回、2人が投宿したモーテルは、いつもよりもなんだかゴージャスだったので調べてみると、2000年頃までは「Stay'n Save Motor Inn」だったようですが、今は経営母体が変わっているようで「Accent Inns」という名前に代わっておりました。口コミで見ると、設備はモーテルにしては清潔でいいけど、立地的(カナダ・ビクトリア州メイプルストリート沿い)には割高、という評価のようであります。GoogleMapって便利で楽しいなあ(笑) ここでもグッスリ眠れることなく、朝の5:30に国家安全保障省の役人に踏み込まれてしまうお二人さん。


これみよがしな痕跡だらけ。

​​ケビンが書いていた謎の数字の羅列が、人工衛星からの発信データだったことが判明し、有無を言わさず家宅捜査を受け、連行されてしまうダーリーンとケビン。その引き金となったモルダーへも、ダーリーンの非難の目は向けられてしまいます。ケビンの書いた二進数のメモは、ダヴィンチの絵画やDNAの二重螺旋構造、バッハの音楽など、アメリカが地球外知的生命体に向けて人工衛星から発信していたメッセージの寄せ集めでした。ダーリーンの家に置いてあったキャンピングカーの屋根に、不自然な焦げ跡を見つけたモルダーは、まだ足を踏み入れていない事件現場に向かうことにします。そこで、落雷とは考えにくい、異常な熱を帯びて様変わりしてしまった森の木々や、湖岸の砂を発見します。「砂がガラス化するには最低でも1400度の熱が必要なんだぜ」と言うモルダーですが、そんな高熱だったら、ルビーどころかケビンもダーリーンも無事じゃ済まないはずなんだけど・・・どうなんだ、そのへん。


番組初のモルダー射撃は威嚇。​​

​​まあ、それもモルダーらしいと言えばモルダーらしいですが。オカボジー湖での捜査中、不意に現れた白いオオカミに導かれるよう(ここはホントに唐突に神がかり的(笑))に森に向かい、威嚇射撃で追っ払うと、そこには岩を積んで隠されたグレッグの死体が・・・。ルビーの死体ではないことに安堵しつつも、グレッグが死んでいるということはルビーももう・・・という悲壮感を漂わせはじめるモルダー。その様子を心配したスカリーが「ルビーはサマンサではないのよ」と、ズバリ言うものの、「どっちにせよ僕は遺体が見つからない限りはあきらめない!」と息巻きます。


受信機ケビン、釈放。

​​あんだけ大騒ぎしといて、さしたる重大機密でもなかった的な判定が下され、あっさり釈放されるダーリーンとケビン。だったら最初から無茶な連行するなよって思いますけども、どうなんですか国家安全保障省の皆さま? 本棚荒らされたり貯金箱壊されたり、さんざんな目にあわせてますしね。ケビンに謝れ、ケビンに! てなわけで、すっかりモルダーに不信感を抱いてしまったダーリーンに「もう構わないでくれ」と宣言されてしまいます。その時のケビンですが施設のモニター画面にくぎ付けに・・・ここからも何か電波を受け取っていたんでしょうな。


このデッカいアンテナ、何用? 

​​何気に映ってて、モルダーも国家安全保障省も触れないのでスルーされてますけども、この庭のデッカいアンテナはなんでしょう。前の御主人の趣味のアマチュア無線なのか・・・。あるいは海外衛星放送受信用なのか。ダーリーンと子どもたちとは無縁の代物のように思えるんですけどね・・・。このパラボラのせいでルビーが狙われて、ケビンが受信機になっちゃったとか?? ううむ。謎だ。


オバサンみたいなルビー。

​​もう一度ケビンに話を聴きたいというモルダーたちは、ダーリーンの家に赴きますが2人の姿はなく、ケビンの書いたと思しき謎のメモがリビングに並べられているだけ。それを2階から見下ろした時、そこにはルビーの姿が・・・って。なんだか回りくどいメッセージを宇宙人もよこしてくれるもんですねえ・・・(笑) 並べてみる、という発想に行きついたのはケビンなのか、ダーリーンなのか。はたまた宇宙人から「並べてみそ!」とヒントがあったのか・・・。とにもかくにも、これを見たダーリーン親子はオカボジー湖へ向かったのでありました。モルダーたちもそう察して、後を追います。


思わせぶりなこのシーン。

​​オカボジー湖に向かってみると、なにやら怪しげな光に向かって歩いていくケビンの姿が。慌てて追いかけるモルダーでしたが、実はこの光は暴走族たちのバイクの光だったというオチ。ケビンを抱きかかえ「もうルビーは戻ってこないんだ」と、自らの境遇を当てはめて語りかけるモルダー。しかしケビンは「お姉ちゃんは戻ってきた」と言います。ダーリーンとスカリーを置いていった場所に戻ってみると、蘇生措置を受けているルビーが。どうやって戻ってきたのか、ここでは明らかにされず。


語らずのルビー。 

​​モルダーに言わせれば、長期間無重力状態にいたと思しき検査結果を示したルビーは、意識を回復するものの「あの人たちに言うなと言われた」と、真実を話そうとしてはくれませんでした。ダーリーンからも「娘はバイクで旅に出ていたと思うことにする」と言われ、今回もまたモルダーは真実への道を閉ざされてしまいます。ルビーの言う"あの人たち"とは誰なのか、ここでは明らかになっていません。


もう一人のモルダー=ケビン。

​​ダーリーンに拒絶され成すすべもないモルダーを見つめる、ケビン。非常に印象的なシーンです。目の前で姉を誘拐され、その秘密を知る立場になったケビンですが、自分の口からはその真相を語ることはありませんでした。誰にも言えない真実を知ったケビンは、ある意味、もう一人のモルダーなのだと思わずにはいられません。この先のダーリーン親子の人生は、どうなっていくのだろう。モルダーでなくても、心配になります。


嗚咽のモルダー。

​​エピローグでは、かつてモルダーが受けた催眠逆行治療の録音テープを聴くスカリーと、ひとりぼっち教会でサマンサの写真を見て嗚咽を漏らすモルダーの姿。「いつか必ず戻す」という謎の声を信じるとあの時答えたモルダーは、今もまだ、これからもまだ信じ続けるのか。そんな彼の心の中をあれこれと想像させる場面です。


今週の気になるキャスト。

​​ケビン役のジョエル・パーマーや、ジャック・ウィザース保安官役のマイケル・キャヴァナーも気になるキャストですが、今回はこちらのキャリー・スノッドグレスさんをピックアップ。彼女は1969年の『イージーライダー』のチョイ役でスクリーンデビューし、翌年の1970年には『Diary of a Mad Housewife(邦題:わが愛は消え去りて)』で早くも主演に抜擢され、25歳にしてゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディー部門)と新人賞を同時に受賞するという快挙を成し遂げた女優さん。下の写真は、上の写真から23年前頃の彼女。可愛いですね♪ この映画そのものは未見ですが、こうした演技派俳優さんたちが脇を固めるのも、海外ドラマの見所です。いや、本当に脇役レベルでも皆、微細な演技がお上手な方ばっかりなんですよ。それもまたドラマにどっぷりハマれる重要なファクターですからね。キャリーさんは、惜しくも2004年の4月に他界されています。合掌。


と、ここまでが過去に書いていた『Xファイル』レビュー記事になります。この密度であげていくのはちょっとしんどい(笑) 他のドラマについても書いているので、それもこちらにあげてしまおうと思います。思い付きでいろいろ書いてしまっているので、この機会に集約してしまうのである。