-フクロウからの学び「生を全うすること、愛するを全うすること」-『かあさん ふくろう』
-フクロウからの学び「生を全うすること、愛するを全うすること」-
『かあさん ふくろう』
作:イーディス・サッチャー・ハード
絵:クレメント・ハード
訳:おびか ゆうこ
発行所:偕成社
この絵本は、息子がまだ保育園の年中だったころに、保育園から配付された案内で見つけ、妙に惹かれて注文した。
なぜか、「こどもに優しさを届けてくれそうな気がする」と直感的に思ったからだ。
この絵本は、まるでふくろうの生態を伝える本であり、
それなのに、
心が温かくなる。
不思議と優しくなる。
9歳になった息子は今でも読んでいる。
なぜか、読み返したくなるからだ。
起承転結があるような物語ではなく、
ふくろうの生態を、同じ色だけをつかった絵として紹介している絵本。
同じ色だけ、という展開のない単調さが、描写とマッチしている。
一年を通してふくろうの母親はどのように子どもを守り、
そしてまた、新しい命を育てているのか。
子どもたちは生まれてからどのように育ち、守られ、巣立ち、親になるのか。
その物語調の展開がないことが、
かえって読者の“感じる”や“考える”を生み出しているのかもしれない。
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かあさんふくろうととうさんふくろうは、ガやカブトムシ、小さなヘビの狩りが上手なこと、
ふくろうの目は正面にあり、めだまを動かすことができないが、頭はくるくる動かせること、
獲物を食べたあと、体の中で溶かせなかった獲物の骨や毛が詰まった黒いかたまりを吐き出していること、
ふくろうを襲い掛かるワシミミズクやアライグマを鋭いかぎつめでひっかいたり、くちばしをぱちん!と鳴らしておどかし追い払うこと、
木の枝から落っこちた雛が、少し飛んでは少し木をよじ登り、また飛んでよじ登り・・その様子をかあさんふくろうととうさんふくろうは近くでずっと見守っていること、
眠っていてもカラスやカケス、小さなとりたちに見つかると大勢で追い立てられること、
春から夏になり、子どもたちの羽毛が赤茶色の大人の羽に生え変わること、
ウッドチャックやネズミたちが冬眠するころも獲物を探し続けていること、
春になり子どもたちは自分の子どもをつくって一緒に育てる相手を見つけに自分の住むところを探すために飛び立つこと、
そして、新しい命を迎えること。
最後の一文は、以下の「」内だ。
春になったばかりのある晩に、かあさんふくろうととうさんふくろうは、卵を産む準備を始めた。もうすぐ古いりんごの木の巣穴で、新しい命が生まれる。
「前の春と、前の前の春と 同じように。」