理学療法士の自分が、家族が脳卒中になってしまった場合、脳卒中の保険外・自費リハビリを勧めるか?①
おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
先日、SNSで下記の様な記事が流れてきました。
脳卒中になってしまうと、片方の手足が動きにくくなってしまうなどの症状で、生活に必要な動作が難しくなってしまうことがあります。
医療制度により、脳卒中になってしまってから、一定期間が経過すると、手厚いリハビリが受けにくくなります。そのような方の受け皿として、医療保険を使わない、保険外・自費リハビリを提供する施設が増えているようです。
お金の使い道は、各人の自由ですので、それに関して良い悪いを言うつもりはもちろんありません。ただ、患者さんには正しい知識、データに基づいた上で判断してもらいたいです。
Q:理学療法士として、家族が脳卒中になってしまった場合、このサービスをその家族に勧めるか?と考えました。
答え:
このサービスの効果が期待できる対象であれば、勧める。それ以外は勧めない。
という当たり前の結論になりました。 ポイントとしては、
①『全部の場合に、勧めるわけではない』ということと、
②『対象は、一般に思われているよりもかなり狭い』ということです。
私が思う、適応のある対象は
①人ごみの中、長い距離を歩く、階段を昇り降りするなど、高度な条件での歩行ができれば復職が可能な方(手・指の機能や考える力、コミュニケーションに問題がない)
②サービス開始時に既にかなり手・指が動かせていて、手・指の機能があとほんの少しだけ回復すれば、復職可能な方
以上です。程度によっては①、②が併存していても可です。
『それ以外の方は、回復を諦めて下さい』という話ではなく、よりコストが安く、役に立つ方法がありますという話しです。それらの方向けのお話しは、先の回で話します。
私が設定した対象の方からすると、復職の必要がない、現在の65歳以上の患者さんは全て外れます。
厚生労働省のデータによると、平成26年度の全脳卒中患者は118万人だったそうです。
全脳卒中患者のうち70歳代が最大のボリュームゾーンです。65歳未満の方の占める割合は多めに見積もっても2割程度でしょう。
脳卒中患者の2割が65歳未満として、そのうち、上記で私が挙げたような機能の方、いわゆる軽症例の方は多く見積もって2割程でしょうか??
(超軽症の方は、半年のリハビリを終えるまでに職場復帰が出来ますし、中等度から重症の方は、別の対策が必要になるからです。詳しくは先の回で書きます)
118万人の2割(復職が必要)のさらに2割(その中で自費リハの適応がありそうな機能の方)となると、47,200人です。これは少し楽観的な設定で、年齢、適応のある機能をそれぞれ1割に設定すると11,800人になります。
日本全国でこの規模のマーケットがあるという風に私は考えます。なぜ、マーケット規模の話をいきなりしだしたかのと言うと、このマーケット規模以上に自費リハ参入者が増えてしまうと、
・価格競争が過剰になってしまう(働いている人が疲弊する)
・適性がない患者にまで必要ないサービスを買わせてしまう(患者さんが不利益を被る)
ということで、社会にとって、デメリットの方が大きくなってしまうと考えるからです。
長くなりましたので、次回に続きます。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。
理学療法士 倉形裕史
次回へのリンクです。
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