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nessseas

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2006.01.16 14:40

2006年1月中旬 その日

あたしは滅びに行くのだとしか思えなかった。

終わらせるために行くのだとしか。


自分の事なんて、ほぼどうでもよかった。

彼にとって自分が、あとで気づく大切な何かのための経験値になれるのであれば、それで良かった。

子供に篭に入れられ、いじられて死ぬ虫のように、好意を持たれても扱い方がわからずにこわされる

それで良かったんだ。


会えるのが嬉しかった。

大切な人に望みを与えられる自分が、嬉しかった。

けれど心の何処かは、悲観的だった。

一回会えば、終わるだろう。そう思っていた。

…とりあえず気が済むだろうし。(わ



前の晩は、殆ど眠れなかった。

始発、人もまばらな新幹線の中、あたしはフラスコを取りだし、中のスコッチの匂いを嗅いでは、ちびちび飲んでいた。

流れる風景の中、闇が薄れ夜が明け、朝日が差し込んだ。


2時間15分後、あたしは姫路駅に居た。

遠くに姫路城が見えた。

電話で誘導してもらいながら出口へ向かった。

(ちなみに初めて声でやりとりしたのは、この日の3日前だった)


改札の向こうに、見せられたケータイ写真と変わらない人が居た。

眼鏡かけてやせ型の、よくゲーセンに居そうな人。

アは『いらっしゃい、ねすこ』と、手を差し伸べてくれた。

彼がとても緊張しているのがわかった。

あたしは精一杯の笑顔で、その手を握った。


・・・

実は初めて会った時のことは、殆ど覚えていない。

(寧ろ、会う前の鬱々とてんぱっていた頃の方が、メッセのログも残っているせいか、記憶に残ってたり。)

写真も撮っていない。

チャレを後ろから見た記憶はあるけれど、何か凄いと感じることもなかった。

ただ、色々な事を、ずっとずっと話していたおぼえがある。

彼の声は好きだなあと思った。今も変わらず大好きだ。


しかしながら、アがあまりに不慣れで、緊張しすぎていて。。

結局帰る時まで、それは変わらなかった。

彼自身がそれを一番よくわかっているのが見て取れた。

心底くやしくて悲しいのだろうけれど、それが上手く表に出せなくて

ただ一言 無表情に 『困ったな』と。


それがあたしには本当に…泣きそうになるくらい切なくて。

けれど、どうにもならなかった。


・・・ 与えたかったのは喜びだった。
残したかったのは希望だった。
私は一体何をしたかったのか。

・・・

与えたものは悲しみだった。

残したものは絶望だった。

私は一体何をしたかったのか。


「もう逢ってはくれないの?」

これから帰路につこうという時、言葉少なだった私に君はそっと尋ねた。

君のせいじゃない。

でもなんで、まるで自分が悪いかのように言うの?



その時あたしに出来た事はただ

彼が傷つかないように

全てを自分の所為にすることだけだった。


帰りの新幹線の中、これで二度と会わなかったらあのひとは

ずうっと挫折感を味わうことになってしまうのだろうなと

それはあまりに悲しいことではないかと


 ・・・

 与えたかったのは喜びだった。

 残したかったのは希望だった。

 あたしは一体何をしたかったのか。

 ・・・

 与えたものは悲しみだった。

 残したものは絶望だった。

 あたしは一体何をしたかったのか。


おそらく、この日が普通に有意義な日であったならば

現在こうやって一緒に暮らしていなかっただろう。

あまりにこの日、お互いに何もできなかったからこそ

滅びではなく、未来が生まれたのだ。


私が与えた悲しみならば、私が剥がす以外になにがある?
私が残した絶望ならば、私が剥がす以外になにがある?
次があれば、それらを剥がす機会を作ることが出来る。

次の機会を作るかどうかは私次第なんだ。



「また逢うよ。必ず逢うから」

次があれば、きっと今回味わった不幸を避けて歩くことが出来る。

今日の経験は必ず血肉となって残るんだ。

 "失敗の為の時があり、成功の為の時がある"

――失敗の為の現在。だがそれは、成功の為の現在でもあるんだ。

だから・・・必ず逢う。



 アがあたしに心からリラックスしてくれるようになったのは結構後で。

3回目に会った時ぐらいからだったろうか。

それまでは大変だったなあ。




―♪Contact(Duft Punk)

 * 好意があれば不慣れでも何でも可愛く思えるんだよなあ。ふしぎ!