森町と炭。昔ながらのやり方を守り今も炭作りを続ける職人
森町と木炭の話
森町のシンボルでもある秀峰「駒ケ岳」の山麓にはナラやイタヤなどの広葉樹林が広がっています。広葉樹は杉や松などの針葉樹に比べて細胞の密度が高く堅いため、一度燃えればゆっくり時間をかけて燃えるので 木炭の原料として昔から重宝されてきました。
昔から水産業が盛んに行われている森町では、作業場や一般家庭でも暖房の燃料として木炭が使われていたため 森町には多くの炭小屋がありました。 しかし、ガスや石油、電気の普及に伴い木炭の需要が減ったため 木炭を作っていた炭小屋も非常に少なくなってきています。
森町においても、最盛期の昭和初期には50戸以上いた木炭生産者も、今では7戸にまで減ってしまいました。そんな中、今でも駒ケ岳の麓で昔ながらのやり方を守り、家族3人二人三脚ならぬ三人四脚で木炭を作り続けている人がいます。
森木炭組合の会長である「幾良木炭」の幾良定春さんです。
幾良さんの炭作りは、山に入って、木を切り倒すところから始まります。木炭の原料となる木材は、業者から買ったものを使うほうが手間がかからないので、そうしている生産者が増えてきている中、木を切り倒すところから自分たちでやっているのには理由があります。
「業者から木材を買って作った方が楽ですが、業者に頼むと細い木や枝は捨てられてしまいます。それが勿体なくて嫌なんです。木に余すところはありません。」
木炭を作る際に、軽石や粘土で作られた「炭焼き窯」の中に原料となる木材を隙間なく敷き詰めていきます。敷き詰めるのが大きな木材だけだとどうしても隙間ができてしまい、炭が折れやすくなります。幾良さんは、業者に頼むと捨てられてしまう細い木や枝をその隙間に詰め、炭を折れにくくすることで捨てることなく有効に活用しています。
炭の世界では堅くて火持ちが良いものが良い炭と言われています。 炭小屋の跡を継いで約45年の幾良さんは焼き上がった炭を見ただけで、その炭の堅さや火持ちが全てわかってしまいます。 そんな幾良さんも跡を継いだ初めの頃は、なかなか良い炭を作ることができず苦労したそうです。
「小さい頃から手伝いをしていたので、炭作りのだいたいのことはわかっているつもりでした。だけど、なかなか良い炭を作ることができませんでした。最初の頃は、”もっこ”に入れて炭を出しているのかとバカにされました。」
当時は木箱のことを”もっこ”と呼んでいました。良い炭は堅く元の形を保ったままで出来上がるのですが、出来が悪いと炭は途中で折れたり、砕けたりして細かくなってしまうので、入れ物に入れないと運べない状態になります。そのため、あまり出来の良くない炭を揶揄する時に”もっこに入れた炭”という言葉が使われていたそうです。
しかし、今では幾良さんが作り出す良質な木炭を求めて、町外の居酒屋が直接買い付けに来る様になり、 炭焼きの時に出る灰は、静岡と山梨の藍染工房が媒染剤として使用しているそうです。
春になりポカポカと暖かい日が増えてきて、外でバーベキューがしたくなる季節になってきました。
森町で採れた新鮮な食材を森町で作られた良質な木炭で焼いて食べる
これに勝る贅沢はないのではないかと思います。
今回ご紹介した幾良さんの「駒ケ岳木炭」は、幾良さんから直接購入することができますし、森町内の燃料店やホームセンターでも購入することができます。
■直接購入する場合
幾良さんから直接購入する場合は、事前にお電話で幾良さんにお問い合わせください。
作業中の場合等、お電話にでることができない場合もございますのでご了承ください。
幾良木炭
住所:北海道茅部郡森町字駒ケ岳59
TEL:01374ー5ー2367
炭作りの風景
本編では載せきれなかった写真の紹介です。