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プロセスの中で溺れないように

2019.05.14 22:13

プロセスはとても大切なことではありますが、プロセスの中にいることで安心して、肝心の結論や結果へ無意識に進もうとしていないことがあります。


僕が「ラッパの吹き方」というブログを書いていることもあって、「トランペットの上達するプロセス」を教えてほしいとレッスンにいらしてくださる方がとても多いです。他の多くのトランペット指導者の方に比べると、レッスンの中でそうした内容が占める割合が多い、と思います。多分。あまり見たことないからわからないけど。


例えばハイノートはどうやって出すのか、もっと良い音で鳴らすにはどうしたら良いのか。基本を見て欲しい、など。もちろん、レッスンですから現状の吹き方を拝見した上で、何をどうしたら良いのか、そしてどうすることで求めている技術や演奏が実現するのかを伝え、実践していくわけですが、当然簡単に克服できないことも多いわけです。


それは、すべての技術は基礎からの積み重ねによって成立しているから。


トランペットに限ったことではありませんね。何でもそうだと思います。


方法をお伝えすることは簡単です。実践もします。しかし、いたるところに「積み重ね」のアンバランスな場所があると、そこが障害となって前に進みにくくなります。その時、無我夢中で何度も何度も吹き続けてしまい、プロセスの中に溺れてしまうのです。


今自分は一体何をしているのか。そもそも、何を求めているのか。何ができるようになりたいのか。


それを忘れてしまっていることが多い。例えば、「山頂を目指す」という目標があったのに、「歩き方」を意識しすぎてその場で足踏みし続けていることに気づいていないような状態です。しかし、足踏みし続けていると疲労する「あー!よく頑張った!今日はもう終わり!」。一歩も進んでない。


音楽のレッスンにおいてもプロセスの中にいると「今、私はレッスンを受けている!トランペットを吹いている!」という充足感を得られるので、(無意識に)そこに居続けようとしがちです。


充足感があるうちはまだ良いのですが、ふと我に返ったときに「一体自分は何のために楽器を吹いているのか」がわからなくなり、そして一歩も進んでいない自分に気づき、途方もない感覚に陥り飽きてしまう可能性があります。それでは本末転倒。

ですから、最近のレッスンでは、もっともっと大きくて最も大切な「音楽」を意識してもらいたいと思い、そんな話や実践もできるだけバランスよく組み込むようにしています。



演奏は表現すること。

表現とは伝えること。

技術はそのための道具。




荻原明(おぎわらあきら)