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ダンス評.com

北尾亘、スズキ拓朗、KENTARO!!/日本女子体育大学 ダンス・プロデュース研究部「ぴちぴちちゃぷちゃぷらんらんらん'19」あうるすぽっと

2019.05.12 15:01

振付:北尾亘(Baobab主宰)、スズキ拓朗(CHAiroiPLIN[チャイロイプリン]主宰、コンドルズ所属)、KENTARO!!(東京 ELECTRONICK STAIRS主宰)

出演:日本女子体育大学 ダンス・プロデュース研究部

5月11日(土曜) 19:00

5月12日(日曜) 14:00 / 18:00

一般 2,500円(当日3,000円)


2006年に始まり、2009年から毎年行われているらしい、旬の振付家・ダンサーを招いての、日本女子体育大学 ダンス・プロデュース研究部の現役大学生たちによるダンス公演。今回初めて見たが、プロダンサーの公演に決して引けを取らない魅力的な振付で、学生ダンサーたちも立派にその振付に応えて踊っている、素晴らしい作品群だった。


■「UMU - うむ - 」

振付:北尾亘(Baobab主宰)

出演:青沼沙季、菅谷有紗、安保菜々子、竹田奈央、赤堀佑夏、内堀愛菜、大地泉美、杉本麗衣、鈴木梨音、須田美玲、俵原真帆、椿実歩子、中村萌、原山真凜、浅倉智尋、荒木美結、伊藤奏、佐藤うらら、内藤遥菜、中山綺夏、根岸咲和、古谷美咲、茂木瑛美里、山内理沙

吉祥寺シアターで見たBaobab 第11回本公演「FIELD‐フィールド‐」よりも、振付としては今回の作品の方が好きかもしれない(!)。今回の公演の3作品の中でも、好みの問題だが、一番好き。

全3作品において、照明も非常に効果的だった。

1人1人の動きがとても複雑というわけではないと思うが、とてもかっこいい。大人数がバラバラに動いたり、2人か3人で動いていたり、全員か大半が同じ動きをしたりなど、どんどん変遷していって、いろんなことが同時進行するので、ダンサーはその辺りが大変そう。

振付家の北尾さんの頭の中がどうなっているのか不思議なくらい、目まぐるしく動きの構成が変わっていくのに、どの場面を取っても調和が取れている。より正確に言うと、一見バラバラに見えても舞台全体としてまとまっている。

選曲も良い。歌が入っていない曲、歌謡曲のような歌、リズム感のいい曲など、音楽もさまざまだが、全体としてどれもはまっていて、適度なタイミングで曲と踊りの転換が起こり、飽きない。もっと見ていたくなる作品だった。

パンフレットによると、作品名の「うむ」には、「産む・有無・膿む」が含まれているのだそうだ。ダンサーが両腕で見えない赤ちゃんを抱いてあやしているような動きが何度か出てきた。見る前は、女子大だから「産む」だとしたら安易だなと少し思ったのだが、テーマが何にせよダンスとしての強烈な力、魅力に魅了、圧倒された。


■「踊る詩集『二十億光年の孤独』」

作:谷川俊太郎

振付・構成・演出:スズキ拓朗(チャイロイプリン)

歌指導:清水ゆり(チャイロイプリン)

出演:木村素子、志筑瑞希、鈴木伽実、角川詩織、平田祐香、安部美佑、甘利羽菜、鵜澤玲奈、浦島優奈、江浦若菜、小笠原美優、小野塚茉央、窪田夏朋、黒木芽依、小菅ひかる、安藤紗瑛、市川茉幸、関戸彩子、仲里知華、中田未来、中村椎菜、増田裕月、間中あや

「踊る戯曲」「踊る小説」「踊るシェイクスピア」「踊るマンガ」「踊る絵本」と称する、文学や本のテキストをせりふや歌もあるダンス作品にしてきたスズキさんが振り付けた、谷川俊太郎さんの「踊る詩集」。

パンフレットに詩「二十億光年の孤独」が掲載されている。インターネットで調べたところ(そして作品中でも声で語られたように)、最後は「二十億光年の孤独に/僕は思わずくしゃみをした」となるようだが、パンフレットには「僕は~」の行が掲載されていない。これが今回のダンス作品で重要な意味を持っているのに(笑)。

とにかく楽しめる舞台だった!この詩は合唱曲になっているらしく、その歌を歌いながら、3人の地球人と大人数の火星人が、郵便ポストを通じて、りんご、手紙、二酸化炭素などをやりとりする。交流のレベルまではいけていないかもしれないが、自分たちの思いが向こうの星の人たちに届いたかどうかで一喜一憂する。この星で疲れている地球人たちは、時に異星人、他星人と交信することがきっと必要なのだ。

冒頭、スーツを着て宇宙ヘルメットらしきものをかぶった3人が踊る姿が非常にユーモラス。シュールな姿に、ショーン・タンの絵本の世界を思い出した。くしゃみをしたり、身振りをしたりと、全体的に演劇的要素が求められる作品だが、この3人の地球人役たちは特に演技派。1人目が日本語、2人目が英語、3人目がでたらめ中国語で話す。客席の中に入り、客に声を掛けてちょっと参加してもらう場面でも、見事に笑いを取っていた。

最後、バレエのグラン・フェッテのような回転をしているダンサーがいたが、「白鳥の湖」の黒鳥みたいに32回転したらどうしようかと思ったが、さすがにその回数は回っていなかった(笑)。

短いながらも、観客が自らの身を振り返るような、一編のドラマを見終えたような感覚を味わった。


ここで15分の休憩。


■「Yahiote Bible」

音楽・振付:KENTARO!! (東京 ELECTRONICK STAIRS)

ボーカル協力:出演者

出演:大森瑶子、八木橋華月、梶みなみ、栗田紗采、河野陽、佐々木かおる、杉山いちご、安田咲穂、小泉結佳、古村唯、平賀莉乃

振付のKENTARO!!さんは、ヒップホップなどのストリートダンスをやってきた方なのだそう。音楽も担当とはすごい。

キレのあるかっこいい踊りだが、完全に趣味の問題だとは思うが、こういうダンスは見ていて割とすぐに飽きてしまう。「技を見せつける」ように見えるのと、集団で(振り付けられて)踊る場合は学校の体育や軍隊のような雰囲気を感じてしまって、あまり好きにはなれない。個人個人がもっと自主的に自由に踊っている感じならいいのかもしれないが。


作風が異なる注目の3人の振付家の作品を踊り切ったダンサーたち、期待を上回るダンスを見せてくれた。恐るべし!将来が楽しみだ。