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民法のお勉強 物権編 第6日

2016.03.13 03:24

※所有権移転の時期

1、所有権の移転の具体的な時期は、民法では明記されていない。

⇒民法では、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」(民法第176条)と規定している。

2、所有権は物権のひとつであるので、所有権もまた、「当事者の意思表示のみによって」、「移転する」ことになる。

⇒問題は、何をもって「当事者の意思表示」とするか、という点である。

※この点については、さまざまな判例・学説があり、状況や契約内容によって結論が異なる。しかしながら、一般に実務上では、「契約書」の記載をもって意思表示とする。

このため、業務委託契約書の場合も、目的物の引渡しがともなう契約内容であれば、所有権の移転の時期を明記したうえで作成することになる。

3、当事者以外の第三者との間では、「登記」(不動産等の場合)や「引渡し」(動産の場合)がなければ、その第三者に対して対抗できないとされている(177条、178条)。

⇒つまり、「登記」や「引渡し」によって対象となる不動産や動産が、現実に自分のものとして移転して支配下になっていないと、第三者に対しては、その所有権を主張できない。


【参考】

1、所有権は、物を自由に使用・収益(賃貸等)・処分(売却等)することができる権利である(206条)。委託者にとっては、業務委託契約の目的物を使用したり、貸したり、転売したりするには、その目的物の所有権がなければならない。

⇒製造物請負契約の場合で、目的物の引渡しを受けても所有権が移転しない契約内容のときに問題となる。このような場合、委託者は、その目的物を勝手に自社の製品に組み込んだり、第三者に売却したりすることができないとされる。

※このため、委託者にとっては、所有権の移転の時期は、より早いほうがいいといえるのである。

2、これに対して、受託者にとっては、業務委託契約の目的物の所有権が移転してしまうと、その目的物の返還請求ができなくなる。

⇒この点は、後払いの場合で支払いが滞りなく完了したときは特に問題はないのだが、支払いがなされないときに問題となる。

※後払いの支払いがなされなかった場合、所有権が移転していないと、まだ受託者のものとされるので、目的物返還が請求できるが、所有権が移転していると、目的物はすでに委託者のものとなるから、目的物の返還請求ができなくなる。

⇒このため、受託者にとっては、所有権の移転の時期は、より遅いほうがいいといえる。


※物権変動とは…

1、物権変動とは、物権を取得したり、失ったり、内容が変更されたりすることを総括した概念である。

⇒民法第177条をみてみると「不動産に関する物権の得喪及び変更は」と規定されているが、これは「不動産に関する物権の変動は」と置き換えて読むことも可能となる。

2、具体的にどのような場合に物権変動がなされるか、その要因は3つある。

(1)売買や贈与、取消といった法律行為。

(2)時効や相続といった法律の規定。

(3)自分で家を建てる、或いは火事や地震なんかで家が消滅するといった事実行為。


※公示の源則と公信の原則

※物権取引の安全を図るために、公示の原則と公信の原則の二つの基本原則が民法には存在することになる。

1 公示の原則

1、権利の変動のとき、第三者にその存在を知らせるために、外部から認識することができるようにしなければならない。

⇒この物権の変動を外部から認識できる状態に置くことを、物権変動の公示という。

2、そして公示のために用いる手段を公示方法という。物権には排他性があることから、物権の変動には公示が要求され、公示のない物権変動の効力は否定される。このために公示の原則が必要となる。

3、このアピールの方法でであるが、動産の場合だと引渡(178条)、不動産の場合だと登記(177条)ということになる。


2 公信の原則

1、公信の原則とは、対抗要件を伴った物権変動の外観(虚偽の場合もある)が存在し、それを第三者が信頼した場合に、実体的な物権変動が発生しなくてもその信頼を保護すべきという原則をいう。


※登記の公信力

・不動産の物権変動における「登記」には公信力はないので、虚実の登記を信頼した者は原則的には保護されない。

⇒ただし、第三者が善意(無過失)で虚偽の登記を信頼した場合には、通謀虚偽表示に関する規定である94条2項を類推適用して保護されるときもある(権利外観法理)。


※引渡しの公信力

・動産の物権変動における「引渡し」においては公信力がある。

⇒その民法上の規定が192条の即時取得(善意取得)制度とされる。したがって、無権利者であるAが、占有する動産を買ったBが善意・無過失の状態であれば、Bは当然に保護されることになる。


【参考条文】

第192条(即時取得)

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。