【案内⑥】第35回定期演奏会 Ensemble +PLUS
彼の名前は渡辺伸治。
節句人形店を営む影で、福岡発弦楽四重奏団の復活を願うクァル・オタ(クァルテット・オタクの略称)である。
2018年6月、渡辺は佐藤仁美たちEnsemble+PLUSに2019年または20年の出演依頼を打診。
編成は佐藤たちに委ねた。
そして佐藤よりの返事。
19年に同僚の葉石真衣を客演に招いて弦楽四重奏に挑戦したいと。
弦楽四重奏を予想していなかった渡辺は驚いた。
そして「ついに!」とこぶしを握り締める。
しかし佐藤からの意外なメッセージが。
その内容とは?
Ensemble+PLUSの現在の客演を迎えての自由なあり方を大切にしたい。
だから現在はEnsemble+PLUSを弦楽四重奏団にする意思はない。
しかし葉石と弦楽四重奏をやりたい気持ちはとても強い。
九響の鑑賞教室などの室内楽事業で、可能な限り葉石と四重奏を重ねていきたい。
そうして4人で四重奏を定期活動する気持ちが固まれば、それほど嬉しいことはない。
だからその場合はEnsemble+PLUSではなく、別途新しい団体でスタートしたい。
直方はその足掛かりにさせてもらえる最大のチャンスとありがたく感じている。
渡辺は、佐藤たち3人のEnsemble+PLUSへの思いを尊重した。
そして弦楽四重奏への慎重さを再確認。
佐藤は室内楽定期演奏会の会報にこう綴っている。
「弦楽四重奏は、弦楽器奏者にとって憧れであります一方で、何よりも高い山でもあります。」と。
また渡辺は福岡発弦楽四重奏団の復活に急いていた自分を省みた。
大切なことは「福岡発弦楽四重奏団」という看板ではない。
四重奏団とこの演奏会の聴衆が時間をかけて福岡発弦楽四重奏団を育てていくことだ。
そうすれば両者のかたい絆は自然と生まれよう。
1975年から94年に岸邉百百雄や事務局の田中孝をはじめとする先人らちが試みた福岡発の地産地消弦楽四重奏団の活動の意義を渡辺は反芻した。
渡辺は会員へ、産声をあげようとしているこの四重奏団の里親になってほしいと先の会報に書いた。
そしていよいよ5月19日(日)。