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「ぼくのいまいるところ」かこさとし 太田大輔

2019.05.16 10:04

幼い頃に図鑑を、宇宙の図鑑を見ていて思ったのは、極大の世界と、極小の世界がとても良く似てて、それはほんとうは繋がっているのではないか、と不思議な興奮とともに感じたことをよく覚えています。

別に、それは変なことではきっとなくて、図鑑の製作者もそうしたことを意図した作りだったんだと思います。だからそれをきっと素直に受け取っただけなんだと。

「ぼくのいまいるところ」かこさとし/太田大輔

加古さんと太田大輔さんのこの絵本を開いたときにも、そのことを思い出しました。

「ぼくのいまいるところはどこでしょう」

そんな呼びかけから始まるこの絵本は、ひとりの男の子の、瞳のアップの絵から始まります。

そしてページをめくる毎に、カメラは段々と引いていき、男の子が現れ、その子がいる庭が、家が、その家のある街が、その街のある国が、現れてくるのです。

この辺りまで来ると、私はまた、別の作品を思い出しました。

イームズ夫妻が制作をした「Powers of Ten」と言う映像作品(本も出ているようですね)です。

この作品も、ひとりの人間から、どんどんカメラを引いていき、星の、銀河の、そして宇宙の大きさまで、遠ざかっていくことで、新しい視点を与えてくれる作品でした。(「Powers of ten」ではカメラが引ききったところから今度は反対にカメラが近づいていき、ミクロの世界の方にも迫っていくのですが)

かこさんと太田さんのこの絵本が、イームズの作品と明らかに違うのは(そして私はそれが「優れている」と思うのですが)、この絵本がこの男の子の一人称で書かれていることです。(二人称では?という指摘もあるかと思いますが、厳密には一人称と考えています)

この男の子の声で、この作品は語られ、この男の声によって、読者は宇宙まで連れられていくのです。

男の子の瞳の中から始まったこのお話が、その男の子の声を聞いたまま、はるか遠い宇宙の向こうまで連れて行ってくれること。

それは、宇宙だとか、無限とか言った概念が、何処か遠くの世界の話なのではなくて、いまここにある、すぐそばにあるものとして、親しく感じられる、そんな効果を生み出しているのだと思います。

そしてこの絵本には最後のページに小さく、かこさんのあとがきがあるのですが、それがまた素晴らしいんです。

かこさとしさんの公式サイトでも全文を読むことが出来ますが(きりなし絵でgoogleで検索して頂くとすぐに出てきます)、この絵本を手にとって是非読んで頂きたいです。

最初に書いたような、私が幼いころ感じた、永遠の中に現在という「サイズ」あるということ、そして今、この絵本を読んで感じたことが、そのあとがきでは「大人」の言葉でとても的確に書かれているのです。

かこさんは本当に、大人の心と子どもの心を併せ持った、すごい人だったんだなあ、と改めて感じます。

数え切れないほど出ている加古さんの絵本、全部、読みたい!と思いを強くしてしまいました。

古本屋なので1冊しか在庫がなく、また現在版切れで値段が少し上がってしまっているのが申し訳ないのですけれど、ぜひ当店のオンラインストアの方でも、御覧ください。


当店のかこさとしさんの絵本はこちらです。