発達の気になる子の幼稚園、保育園の選び方
まだ梅雨も来ていないのに夏のような日々がやってきましたね。
本格的な夏が恐ろしいです…
さて、来年度に幼稚園を考えられる保護者様は、この夏ごろまでに幼稚園の情報を集め、秋ごろに願書をだす、
保育所を考えられる方は12月までに就園先を考えることと思われます。
そこで、当方の経験から、幼稚園や保育園を選ぶ際の基準をお伝えしようと思います。
発達障害がある、あるいは発達に気になるところがあるお子さんの場合、就園先は慎重に選ばれた方がよいかと思います。
定型の発達をされているお子さんであれば、ある程度どんな環境でも適応していくと思いますが、発達に特性がある場合、ある種の環境では本人なりに、いきいきと過ごせない場合があります。
ポイント1
『発達の遅れや偏りに理解があり、対応の実績のある園か』
特に私立幼稚園の場合に多いですが、園によって”どの程度の子までなら受け入れるか”という一定の基準がある園があります。
発達に遅れのある子の入園に抵抗感を示される園、こだわりや多動など、発達上の特性が集団生活に大きな影響を及ぼすと判断される子の受け入れに渋りを見せる園…
そういった園が悪いというわけではなく、目指す保育をする上である程度一定の水準の子どもたちを集め、保育の質を担保する、職員を守る、という意味合いがあると思われます。
では、そういった園をどうやって見極めればよいのか…
1.保健センターで、地域の事情に詳しい保健師さんに情報を聞く
地域の園事情をよく知る保健師さんであれば、園ごとの特徴を知っている場合があります。立場上どこを勧めるとは言えないと思いますが、お子さんの発達の状況を相談したうえで、評判を聞いてみることは参考になるでしょう。
2.園庭開放などに遊びに行き、様子を見る
園のHPを見れば、園庭開放の日時を掲載している園が多いでしょう。
園庭開放に子どもを連れて遊びに行き、園児の様子や保育士の様子などを見ましょう。
それだけで園の様子が分かるわけではありませんが、保育士の挨拶の仕方や園児との関わり方など、間接的な情報ではあるものの、園の雰囲気が感じられると思います。
また、思い切ってその時に園長や管理職に就園について、子どもの発達について考えていることを相談するのも手です。
「過去に似たような子が就園したことがあるか?」「その時どのように対応していたか?」「親が気を付けるべき点はあるのか?」などを聞いていくと、その園の考え方や方針が見えてくるでしょう。
多忙な職場なので、事前に連絡を取った方が無難ですが、もしその第一手で対応が冷たい、親身に相談に乗ってくれない、となれば、就園後も子どもの発達や個別的な相談に親身になってくれる可能性は低いとみていいでしょう。
勇気がいることだとは思いますが、園の対応の仕方を見極める上では大切な一歩です。
夏前から夏ごろの入園説明会に出向いて同じことをすることも可能ですが、多数の保護者が詰めかけており、ゆっくり相談する余裕はないと思うので、もう少し事前の園庭開放の時に相談することをお勧めします。
ポイント2
『自由重視か、設定重視か』
すごく乱暴な分類ですが、園の巡回相談の経験上、保育の方針は2通りです。
「自由重視」と書いたのは、あまり多くの設定活動を詰め込まず、子どもが主体的に遊びを選び、展開することを見守るタイプの園の事です。
例えば登園し、朝の会を終えたら園庭や室内を自由に選び、1時間くらいは好きに過ごす、そして昼食を食べ、再び自由に遊んだ後降園する、こんなイメージでしょうか。
もちろんその中に季節ごとの活動や行事ごとの練習は含まれますが、比較的ゆったりのびのびと過ごせるタイプの園です。
「設定重視」と書いたのは、保育時間の中に設定活動、つまり造形遊び、リトミック、音楽、かずやひらがなの学習、園ごとの目玉?の活動(例えば鼓笛とか)を多めに設定する園の事です。
イメージとしては、椅子と机があり、そこでワークブックをしたり、ピアニカを吹いたり、幼児的な活動の中にもどこか学校っぽい雰囲気のある園です。
私立の幼稚園、保育園に多く見られます。
中には極端に「右脳教育」と謳う園もあるほどです。
さて、発達に気になるところのある子が向いている園はどちらなのか…
一概には言えませせんが…それぞれの長所と短所はあります。
自由型のメリット:
あれ、これ、と活動を強要されることが少なく、その子なりの過ごし方が出来る。好きな活動を自ら選び取っていく楽しみがある。
自由型のデメリット:
自ら遊びを広げることが難しいタイプの場合、”自由”が逆に”不自由”に変わりやすい。枠組みがゆるやかなため、先の見通しが持ちづらく、何をしていいのか分かりづらい。
設定型のメリット:
やるべきことが明確に設定されており、先の見通しが持ちやすい。用意されている活動に興味を示せる場合、自分だけでは手に入らない体験を多く持つことが出来る。
設定型のデメリット:
自由時間が少ないので、存分に体を動かし、自由な着想を広げて遊びを創造する体験が乏しくなる。活動の水準が発達の水準に見合っていない場合(全般的に発達が遅れている子の場合)、楽しめることが少なくなり、適応も難しくなりやすい。
よく聞く話で、「うちの子はこだわりとか、興味の偏りがあるから、自由な園の方が向いていると思う」というお母さまの声です。
実は、これはケースバイケースです。
自閉症の傾向や要素があり、「自由にしていいよ」と言われると逆に何をしてよいか分からず困ってしまうタイプ。ルールや基準があいまいだと判断や行動の基準がよくわからず、自分なりに行動して結果、「こだわりが強い」「がんこ」などと言われてしまうタイプ。
こういう子にとって、自由型の園での適応が難しくなる場合があるのです。
具体的には、「自由遊びの時に遊びを上手く見つけられず遊びこめない」、「友達を作りづらい」、「行事ごとの練習・本番に参加しづらい」などです。
逆に、設定型の園に入った場合、やるべきことは時間ごとに決まっており、何をしてよいかと不安になったり、やるべきことが分からないということが起こりづらくなります。
小学校の授業をイメージしてみてください。時間割があり、その時間何をするあらかじめ分かっていますよね?先の見通しを持つことが難しいタイプのお子さんの場合、自由な園での生活では色々苦労があったものの、規則や見通しのはっきりしている小学校でのほうが適応がよくなったというケースは珍しくありません。
では、自由が苦手なタイプや見通しの持ちづらいタイプは設定型の方がよいかと言うと、そう単純でもありません。
一匹狼タイプで、好きなことが明確にあるお子さん、興味の有ることはいくらでも出来るけれど、興味がないと一切取り組もうとしないお子さん、こういったタイプの場合、設定されている活動が興味に合えば全く問題はありませんが、合わない場合、園生活はだいぶん苦痛になり、適応も難しいでしょう。
友達と活動する、皆で同じことをする、ということは難しいものの、自由型の園でその子なりにのびのび過ごす、最低限のルールだけを守る、という過ごし方もありです。
また、全般的な発達に遅れのあるお子さんの場合、設定型の園での活動そのものが、お子さんの発達水準に見合っておらず、理解できない、うまく取り組めない、ということが起こり得ます。
もちろん自由型の園でも同様の事が起こりますが、設定型の園の場合かなり高度な活動を取り入れている園もあるので、注意が必要でしょう。
設定型の園の場合でも、個別の配慮や工夫が行き届く環境であれば問題ありませんが、経験上多くの場合保育士の先生方は”するべきこと”に追われており、個別配慮をしたくても全体とのバランスを考えて出来ない、というジレンマを抱えている場合が多いです。
我が子の発達の状況、性格、園の気風、難しい判断ですが、総合的に考えていく必要があります。
ポイント3
『近さ、にこだわらない』
「何かあった時のために近い園の方がいい…」というのもよく聞く話ですが…
最短2年、最長で6年弱の園生活を考えた場合、寝ている時間を除けば生活のほぼ半分以上を園で過ごすことになります。その園での生活の質は、お子さんの成長に大きく影響します。
園バスを遠くまで出している園が多いです。
選択肢の段階から近い距離の園だけを選ぶことはやめましょう。少し遠くても、とても良い保育をしていて、フィーリングの合う園があれば、十分通う価値があります。
「何かあった時」というものは年にそう何回もありません。年1回か数回の可能性のために、他の良さを切り捨てるのはもったいないです。
とは言いつつ、例えば保育園への送迎の場合、自宅と逆方向に送迎しなくてはならないなど、現実的に厳しい条件の事もあるでしょう。
地域の小学校へ進む際、地元の園から進学させて友達や顔見知りの多い環境にしてあげたいという親心もあるでしょう。
自分の卒園した園なら雰囲気も分かるし、同じ園にしたいと思うこともあるでしょう。
僕も2児の父親としてその気持ちはよーく分かります。
子どもの発達や成長の事を考え、その時出来るベストの選択をして頂ければと思います。
ポイント4?
「親がどれだけ行事ごとに参加するか」
親御さんの中には、人づきあいが得意でない、ママ友同士の交流や、やり取りが非常にストレスになる、という方もいらっしゃると思います。
多少は経験としてやってみたい、ママ友も作りたい、という方は別ですが、どうしても人づきあいが苦手でストレスになりすぎてしまう方の場合、園の行事に保護者がどの程度参加するか、事前に調べておきましょう。
保育園は特性上、保護者がすることは少ないです。が、中には保護者も積極的に作り物をしなければならない園もあるようです。
幼稚園だとしても、保護者の園行事への参加度合いは千差万別です。
登園方法にしても、集団の徒歩通園になり、保護者の送迎が当番制で回ってくる園もあれば、自己送迎が園バスかを選べる園もあるでしょう。自己送迎を選べば、園ですれ違い挨拶を交わすくらいで、ほぼ他の保護者との交流を減らすことも出来ます。
以上、発達障害のある子、発達に気になるところのある子の園選びのポイントについて書きました。
参考になったでしょうか。
最後に個人的な感想ですが、
やはり、保育士の先生方が生き生きと笑顔で働いている園、
子どもたちが生き生きと自然な感じで過ごしている園、こういった園が、良い園だなと思います。