浮世
2019.05.19 13:00
☆
日が昇ったあとに寝て、
日が沈むころに起きた。
真夜中に、ヒルトンホテルにチェックインして、
大音量で音楽を聴いた。
朝も夜もルームサービスで、
毎日好きなものを食べた。
洗濯なんてしない。
下着も靴下もぜんぶ、ホテルに出した。
楽しかったけど、もううんざり。
食べ過ぎて嫌いになった食べ物みたいに、
今思い出すと吐きそうになる。
朝に起きたくなった。
夜に寝たくなった。
掃除したくなった。
洗濯したくなった。
料理したくなった。
わたしが望んだのは、小さなこと。
小さくて、そして大きなこと。
浮世離れも楽しいけれど、
それは少しのあいだ。
浮世に生まれたわたしたちは、
いつか浮世が恋しくなるから。