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柿崎 麻莉子 | Mariko Kakizaki

初めて出会ったサドゥ。タントラセックスへの誘い。@プシュカル

2014.11.16 11:00

インドに来て以来、毎朝ヨガをしている。数か月体のトレーニングをしないと体が鈍っていくのが自分でよくわかり怖くなってきたからだ。旅に出る前にダンサー友達からダンスから離れるの怖くないの?と聞かれた時は、全然平気だよー、ダンスは筋肉だけじゃないし!とかいっていたけど、まあ肝っ玉がすわっていなかったんだろう。身体にでる変化が怖くなってきた。次のダンスの予定が現実的に見えてきたせいかもしれない。クラスを受けたり(1クラス200円くらい)、仲良くなったヨギさんの自主練に混ぜてもらったり、自分でなんちゃってヨガをやったりしている。体の変化はともかく、朝から体を動かすのはきもちいい。

ところで、アシュラムという場を知っていますか?私は知らなかった。ヨガや瞑想をトレーニングする場で、常に麻薬がぷかぷかされている感じの、瞑想修行道場。

プシュカルでもどこかヨガできる場所ないかな~と探していた私はあるアシュラムをみつけた。猿がたむろしている庭に入ると、奥の方で黄色い何かが動いている。ハロ~と言いながら近づいていくと、黄色い布をまとったサドゥ(修行僧)が猫を舐めている。(キスではなく、舐めている!)私に気が付いたサドゥは屋根の下に招き入れてくれた。彼の名はシヴァ。シヴァはよく笑う。子供みたいだ。ベッドの下から何かを出してると思ったら、ハッパを見せて「吸うか~?」と聞く。NOというと、悪がきみたいな顔でヒヒヒと笑ってベッドの下に戻した。ヨガについては、したいなら明日の朝こいとのこと。

翌日、言われた時間に行くと、シヴァと別の男とフランス人の女の子がいた。シヴァは男を「こいつはヨギーだ。嫁も子供も仕事もあるが毎日ヨガをしにくる」と紹介した。フランス人の女の子については「こいつは俺の愛しのチョーラだ。」と言った。チョーラというのがよくわからなかったけど、愛弟子みたいなニュアンスらしい。一通りみんなでしゃべった後に(もちろん三人はプカプカしながら)愛弟子のルーシーが自主練にまぜてくれることになった。ルーシーは少し気弱そうな眼をしているがかわいらしい。ルーシーと一緒に基本のヨガをやっていると、シヴァがチョロチョロみているのがわかった。トレーニングのあとルーシーは去っていった。

そこに、シヴァは、現れた。ダダーン!

いきなりヨガマットを持ってきて、目の前でポーズをとり、やれ、といってくる。そりゃ私も体をつかう職業だから、ある程度のことはできる。さっきまでルーシーとやっていたヨガとはだいぶレベルが違う。いいねいいねと言われながら、だんだんとレベルが上がっていく。挑発されることなんて最近なかったから私の方もテンションが上がる。二人の間には挑発→応答のバチバチとしたいい関係。手だけで全身を支えたり、ブリッジみたいなポーズをしたり、私には苦しい動きもはいってきて、そうなってくると、軽々やってのけるシヴァはすごいな、ただのドラッグ愛好家ではなかったな、と尊敬のようなものがわいてくる。形だけのヨガインストラクターなら山ほど会ったけど、本物は初めてだ。興奮した。いい感じに終わった後「君が1か月修行してくれたらなあ。僕は外から来る人にはヨガを教えないんだけど、君はちがう。神に近づける才能、よいエネルギーを感じたから、特別にレッスンしたんだ。」とそんなことを言っていた。いかにヨガが素晴らしいか、気持ちいいかを説明するシヴァ。「一人で瞑想していると空中に浮くことだってあるよ。体が地上から離れていくんだ。」「見てみたい!」というと「だめだよ、一人でエネルギーを高めないと高度な技はできないんだ」と言われた。ほんとかな~。ハイになってるだけじゃないの~なんてヨガビギナーは思ってしまう。

翌日もシヴァとルーシーと三人でヨガ。シヴァは初めから気合が入っていて、1時間半くらいやったところでルーシーが、もう充分です、と帰っていった。私はせっかくだからできるところまでついていこうときめる。更に1時間くらいやって疲れてきたころに、シヴァが「セックスチャクラ」という言葉を盛んに使ってくるようになる。動きの使い方として、膣を締めるというような表現はよくするから、そのチャクラに気を集中させるというのは理解できる。シヴァがあるポーズがいかにセックスチャクラに効果的かを説明してくれた「おれはこのポーズのお陰で、ものすごい強いセックスチャクラを持っていて、2時間くらい大丈夫だぜ」と言う。聞いてない聞いてない。

ヨガのあと、シヴァが炒り豆と、アーユルヴェーダチャイを作ってくれた。うまい。庭で食べていると猿が豆を盗みにきたが、そこはさすがシヴァ。キエーっという一喝で猿たちを黙らせた。猿もシヴァをリスペクトしているんだろう。シヴァが森へ行こうと言い出した。ふむ、面白そうだ。森でヨガがやりたいと言う。ふむ、面白そうだ。女性器と男性器のエネルギーを高い精神のレベルで交換して頭から発射させようという。え?聞くとタントラセックスと呼ばれるヨガの一つらしく「まり子とならいいエネルギーの交換が出来そう」らしい。「じっさいにはしないよ。瞑想状態のまま体を触れ合わせるだけだ。」「下からエネルギーを放出する(普通のセックス)よりずっと気持ちいいんだぜ。」「たとえば僕がベッドのようになって、君がその上に寝るとか…」うーーーーーーーむ。

ヨガ思想は面白いと思うんだけど、このスピリチュアルセックスはちょっとついていく勇気がでなかった。帰ってきて調べてみると、日本がヨガを輸入した時にヨガの性的な部分は日本人に合わないからと取り入れなかったらしい。実際に性欲自体は否定されているわけでなく、性欲までをもヨガの力で発散させてしまうのがヨガらしい。ほーう。ついて行ってみれば面白かったかもしれないけれど、サドゥといえども男は男。レイプされても嫌だし、やっぱりついていけないやー。

こんな感じで最後までシヴァについていくことはできなかったけど、シヴァのことは結構本物のサドゥだと信じている。猫を舐めちゃうシヴァ。ヨガの前に煙を炊き、神様にお祈りするシヴァ。子供のように木を登り、プカプカ吸うシヴァ。スピリチュアルセックスのお誘いだって、ヨギとして私を認めてくれていたのかもしれない。(ないか。)シヴァは数週間後に愛弟子のルーシーと旅に出るらしい。ブッダが弟子と旅に出たように修行の旅だという。

問題はどこまで信じるかだ。宗教上理想的生き方とは言え、数千年前の生き方を現代社会で実践するシヴァの姿に、現代的生活をしている私にとって受け入れにくい部分があるのは仕方ないだろう。私はこの旅に出る前、もっとスピリチュアルなものを信じたいと思っていた。現実・目に見えるものの世界だけで生きるのは悲しいと。しかし今回のことで、スピリチュアルなものをまるっきり信じるのもできそうにないなーと思った。その間のいいバランスを探したい。

もっかいいうけど、シヴァはすごく幸せそうだった。怪しい感じが全くない。変ではあったけど。体を訓練し、瞑想で真実を求め、純粋に信じるものがあるまっすぐさ。分かり合える人が少なくて寂しいかもしれないけど、彼自身は満足しているように見えた。

写真は毛づくろい中の猿に近づいて頭を毛づくろいしてもらうシヴァ。