Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

柿崎 麻莉子 | Mariko Kakizaki

thank you vietnam

2014.12.19 05:00

↑フェスティバルが映像を作ってくれた

ベトナムのフェスが無事に終了。運営側のカンパニー・スタッフがフェスを成功させるために寝ずに働いてくれていて、それはそれは愛を感じました。参加者の皆さんとも毎晩ディナーをしながら楽しい時間を過ごすことができ、WS、ソロ、デュエットと濃密な時間でした。

興味深かったのは、ダンス公演前に、政府の人が内容をチェックしに来ること。共産主義の国なんだよなあ。照明がクラブぽくないかとか、衣装がセクシー過ぎないかとか、チェックして問題があれば上演できないという。(といっても大概お金で解決できるらしいんだけど。)今回も香港の振付家の作品が赤い布を使っていて(ベトナムの国旗は赤に黄色い星)、それがちょっと問題になったみたい。

今回一緒に踊ったケレンは本当に美しいひと。彼女と一緒にいると心が浄化されていくような気がする。ベトナムでは二人でジャングルに出かけた。木をじっと見たことがない人にとってはどの木もただの植物でしかない。ジャングルは緑でしかない。二人で名前もわからない色んな種類の木や花や鳥を沢山見た。花も星も昆虫も鳥も。生活に必要とされない知識をもっている人は豊かだな。

夜には水上人形劇をみにいった。ベトナムの伝統芸能だ。ステージの代わりにため池が劇場前方にあり、その周りに音楽家が座っている。その池の水面を人形たちが走り踊る。メコン河に囲まれたベトナムでは、水際で人形を操ることにより、遠くから様子を見ている敵に兵が多くいるように錯覚させる戦法があり、それが発展したのが水上人形劇だと、前に本で読んだ気がする。

ケレンがイスラエルに帰った後に一人で戦争ミュージアムに行った。3階建ての建物だが、1階を見ただけで心が沈んでしまい帰りたくなった。が、ちゃんとみるのが現代人の責任よと思い二階へむかう。写真写真写真。ミュージアムにいる間ずっと体が震えた。殺される直前の人の顔。仲間が殺されるのを見る人の顔。戦争の悲惨さと同時に、アメリカという国の行為を止めることがどんなに難しいかを見たような気がする。世界中でデモが起き、アメリカ兵も自殺をし、それでも止まらないアメリカ。ベトナムを中心に三代にも渡る奇形児を生み出してしまうような悪作戦すらもしてしまう。日本共産党の新聞やポスターではアメリカ批判をバシバシ書いていて、こういうのって現代ではみないよな。動機や真のねらいがなにであれ、それでも弱者・一般の人を守れ!という主張には正しさがある気がしてならない。こういうポスターを見ていると、今のイスラエルのことを考えずにはいられない。世界中でイスラエルに対するデモが起こっている。

友達のお婆ちゃんはベトナム戦争を生き延びた。暗号を打つのが仕事だったというけれど、戦争が終わって生き残った世界は、何のために戦争をしたのか分からない世の中だったと、言っていたんだそう。

今回フェスにフランスから来たダンサーが参加していた。ベトナムは昔フランスに占領されていて、いまでもベーカリー屋さんがやたらにおいしかったり、ベトナム文字がアルファベットだったりと名残がある。そのフランス人の彼女が「フランス語は分かる?」とベトナムの20代の子に聞いた。答えはNO。その会話を聞きながら、ホイアンで出会った白髪のお婆さんを思い出した。フランス人は嫌いだといった顔を思い出した。私はナイーブなんだろう。いまではちょっとマシになったけど、初めてアメリカの人と原爆のことについて話した時どんな顔をしていいか分からなくてドギマギした。

ケレンはwhere are you from?と聞かれてイスラエルと答えるのが恥ずかしい、という。イスラエル出身というのが怖いという人なら沢山あってきた。そりゃそうだ、攻撃される可能性があるから。恥ずかしいっていうのは初めて聞いた。生まれる国は選べない。