Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

詩人・作家 神泉 薫(Kaoru Shinsen)のブログ ~言の華~

【詩人の描く「薔薇宇宙」】

2019.05.20 00:58


庭に咲いた薔薇の

幾重にも重なる花弁を見つめていると

詩人、多田智満子の詩作品「薔薇宇宙」のことばが蘇ってきた。


永遠に広がり、旋回する薔薇。

開き続ける花の美しさの背後に見え隠れする華やぎの滅び。


1963年の初夏、多田は、LSDを服用した際、数時間にわたって、一輪の薔薇を見続けたという。(精神医学の実験のもとに行ったこと、エッセイ「薔薇宇宙の発生」に詳しく書かれている。現代詩文庫『多田智満子詩集』(思潮社)) この体験から、詩「薔薇宇宙」は生まれた。


そして、詩のエピローグにはこう綴っている。



宇宙は一瞬のできごとだ

すべての夢がそうであるように

神の夢も短かい

この一瞬には無限が薔薇の蜜のように潜む



現代詩文庫『多田智満子詩集』(思潮社)より引用



多田の詩は常に、永遠と無限へ、ベクトルを伸ばす。


乾いた風、晴れやかな地中海が見えてくる。

永久に典雅な詩のミューズの、立ち並ぶ書籍の庭へ足を踏み入れる。



詩集『白であるから』(七月堂)の巻頭詩は、「薔薇色の額に口づけを」。


敬愛してやまない多田智満子の詩のエコーがゆるやかに。



【神泉薫HP】 【神泉薫著作】 【お問い合わせ】