Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

猫豚スタジオ

バースデー

2019.05.21 00:08



東京に来て数年経った、東京には田舎にないものがたくさんあった。テレビでしか見たことのないところにたくさん行った。


でもそれで喜んでいたのは最初の1年くらい。それからは日々の生活に忙殺されて、どこに行くのも楽しめていないし、新しい友達もできてない。田舎の友達とは殆ど疎遠になった。


趣味と言えるようなことは何もなくて、休日はなんの予定もない。平日溜まった家事をこなして用事をすませるだけの日々だ。

そんな休日のある日、友達からラインが来た。「誕生おめでとうwwwこれでお前もまた一つおじさんになったな(笑)」俺は、あっ。と思うと同時に悲しくなる。言われるまで自分の誕生日に気がつかなかったからだ。


もう随分と会ってない友達だった。今思えばあの時もただ一緒にいただけで、友達と言える関係だったかもわからない。俺は意味もなく「www」や(笑)をつける人間が好きじゃない。それに言い回しもありきたりで笑えない。

今日を埋める予定は何もない。それは去年も同じだった。

自分は何も変わっていないのに進む時間。友達は結婚したり子どもが出ていたりするらしい。噂で聞く。同じ時間を生きているはずなのに。俺は何もしていない、何も変わっていない。


去年と同じだ。1人で楽しめることも、一緒に祝う友達もいない。

虚しくなった。友達にスタンプだけ送り返す。何もない自分。それが俺を苦しめる。

連絡をくれたのはその友達だけだ。

返信が来て、通知が見える。

「おまえ、俺の誕生日も祝えよな。こないだ誕生日ボッチでさw1人でケーキ買って食べたわw」

あぁ、確かこいつの誕生日は俺の1週間くらい前だった気がする。でも相変わらず図々しい奴だなー。自分を祝えなんて。



その連絡を開けば既読がついてまたやりとりをすると思うと気が滅入る。

だから開かないでいつものように過ごすことにした。未読無視。


たまった家事を終えると、時間つぶしに本か漫画を読む。なんだっていい、名作はなんだって面白いと思う。好みがないのだ、自分がない。


夕方過ぎ、スーパーに行く。野菜、肉、飲料。ルーティンのように食材を買う

デザートコーナーを横切ると安いケーキが目に入った。


「おまえ、俺の誕生日も祝えよな。こないだ誕生日ボッチでさw1人でケーキ買って食べたわw」

友達の文章を頭でなぞった。ベクトルは違うけど、あいつもありきたりな返しだよな。

俺と同じ自分の無い奴なんじゃ無いだろうか。


……俺は何となくショートケーキをカゴに入れた。

帰って、ご飯を食べる。いつもは適当にネットニュースを見ながら食べているけど、未読を抱えた携帯を見る気がしなくて、テレビをつける。バラエティだった。決まった番組しか見なくなったから、こういう番組を見るのは久しぶりだった。笑ったのも久しぶりだった。こんなに絶望していても人は笑えるのかと思った。


ひとしきり笑って、番組が終わった後、友達のことを愛おしく思った。

あいつもきっと、俺とはベクトルが違うけれど、孤独なのだ(だって面白くないし。)俺たちは違うようで居て同じタイプの人間なのかも。ありきたりなことしか出来ない、言えないタイプ。



真似して買った1人でケーキを食べながら、連絡してみよう。きっとお互いが滑稽で笑えて、それでいて、理解しあって話せる気がした。思いつきで電話をかけると、予想に反してすぐ切られた。

代わりに「いま、家族で旅行してるー(笑)すまんwww娘めっちゃ可愛くてやばい!!w」と返信が来た。



なんだよ…お前結婚してたのかよ。ならなんでボッチなんだよ…単身赴任とか…?

答えを知りたくなったけど、人生で全く必要のない憶測はこの辺で中断する。


自分の浅さに笑えてきた、滑稽なのは俺だけだった。昔の友達を見下すなんて、俺はつまらないにすら満たないレベルじゃないか。

寝る前にバラエティという言葉の意味を考えた。「様々」というような意味だった気が色んな人が出れるからってことか。考えてみればバラエティって、多様性の先駆けだよな。色んな人が受け入れられる社会。まぁそれ故に炎上したりもするけど。

ググってみた。


Wikipediaで以下のように書いてあった。

バラエティ番組(バラエティばんぐみ)は、トーク・コント・コメディ・歌・クイズ・ゲーム・ものまね・ドッキリ・グルメ・ロケ・映像・恋愛・雑学・奇術・心霊・お色気・視聴者参加型の企画などのいくつかの種類の娯楽を組み合わせたテレビ・ラジオ番組のことである

なんだ、多様なのは企画の方かよ。

事実は思ってるより、現実的だ。


妙に納得した。



今年はなんでもない誕生日じゃなかったなぁ、そう思うと夜はすぐ寝付けた。