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砕け散ったプライドを拾い集めて

閉まらない蛇口

2019.05.21 12:08

大正6年生まれの母親が平成最後の年の2月1日に倒れ、病院のICUに入り、それでも100日も頑張って天寿を全うして令和元年5月11日に逝った。102歳であった。
葬儀も終え、そのうちに四十九日を迎えることになるだろう。随分前から覚悟はしていたことではある。つまり、この世から親というものが一切いなくなるという状況になるということを。
何かが変わるということでは全くないのだが、ティッシュ一枚分くらいの喪失感が結構堪えるものだということが分かった。

これが穂村弘『世界中が夕焼け』のなかで吐露していたことなんだろうね。

……経済的に自立したり、母親とは別の異性の愛情を勝ち得たあとも、母親のその無償の愛情というのは閉まらない蛇口のような感じで、やっぱりどこかでにあるんだよね。この世のどこかに自分に無償の愛を垂れ流している壊れた蛇口みたいなものがあるということ。それは嫌悪の対象でもあるんだけど、唯一無二の無反省な愛情でね。それが母親が死ぬとなくなるんですよ。この世にどこかに泉のように湧いていた無償の愛が、ついに止まったという。

…… もう蛇口から一滴の雫も落ちて来ないんだよね。
そんなこと知ってはいるさ……。