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NPOのクラウドファンディングを成功させる「共感文章術」

2019.06.14 03:00

「クラウドファンディング」とは「不特定多数の人々からの資金調達」の意味で、事業への投資をインターネット上で募ることを指します。大抵の場合、クラウドファンディングサイトに活動紹介文を掲載する形で行われます。 本記事は「社会貢献団体の活動資金調達のためのクラウドファンディング」を対象に、UXデザインの知見を応用した、より多くの資金を集めるための文章テクニックについて論じていきます。 

 「共感の喚起」による支援獲得

「共感」とは、他者の感情を自分の感情として共有すること、もしくはその感情のことです。「困っている人を助けたい気持ち」「頑張っている人を応援したい気持ち」は共感から生まれます。寄付やボランティア等の支援は、これらの気持ちが行動となって現れたものです。  

NPOはまさに「困っている人を助けるために頑張っている人」ですので、世間の共感を得やすい立場にいます。共感を喚起して支援を集めることは資金調達手段として非常に有効といえます。  

共感の喚起に必要な「共感文章術」

ここで重要なことは、共感を喚起するにはある種のプレゼン能力が必要だということです。ビジネスプレゼンテーションとは異なる、共感を喚起するためのプレゼン能力です。  

幸い、クラウドファンディングでは主たる手段は活動紹介文ですので、いくつかの文章テクニックを使うことで、比較的容易に世間の共感を喚起することができます。 

以下に共感喚起のための文章テクニックをいくつかご紹介します。

タイトルの工夫

タイトルを文章全体の要約とする

活動紹介文の読者は、まずタイトルだけを読んでから本文を読むかどうか判断するため、タイトルを文章全体の要約として機能させることはとても重要です。

活動紹介文タイトルの典型的なパターンは以下のようになります:

「(地名)の(解決すべき問題)を(手段)で(ゴールイメージに)したい」

解決すべき問題

問題の存在自体を知らない人もいます。まず問題を提起することが必要です。

ゴールイメージ

解決すべき問題が存在することに納得できても、ゴールイメージ(問題解決後の理想的な状態)までを想像することは難しいものです。具体的かつ現実的なゴールイメージを問題提起と合わせて提示します。

手段

解決すべき問題がひとつであっても、解決手段は複数あるはずです。手段として具体的にどのような活動を実施するのかを明らかにします。

地名

地名は、その土地に縁のある人に対して強い共感喚起の効果を発揮します。そして地縁のない人へのマイナス効果もありません。是非とも書くべき要素です。

本文第一段落を文章全体の要約とする

タイトルはせいぜい30文字程度ですので、充分に文章全体を要約しきれないこともあります。文章を最後まで読んでもらうため、第一段落に文章全体の要約を書くことはとても重要です。

本文の工夫

活動紹介文の主語を「私」にする

人間は人間に共感します。活動紹介文の主語を「私」(一人称形式)とし、団体主催者や活動責任者が個人として聴衆に語りかける体裁で活動紹介文を書くことで、共感の対象となる人物が明確となり、読者の共感を喚起することができます。

「私」の顔写真を掲載する

活動紹介文の主語を「私」(一人称形式)とする際は、「私」の顔写真を掲載するとさらに効果的です。顔写真によって共感の対象となる人物がさらに明確となり、読者の共感をより強く喚起することができます。

「ストーリーテリング」手法を用いる

「ストーリーテリング」とは、商品やサービスを紹介する際にそれにまつわる体験談や逸話などのストーリーを引用することで聞き手に強い印象を与える手法のことです。

活動紹介文の主語を「私」(一人称形式)とすることで、活動を始めた経緯や現在の活動の紹介はそのまま「私の体験談」となり、読者に強い印象を与えます。

「三幕構成」を用いる

「三幕構成」とはハリウッド映画で多用される典型的なストーリーパターンです。もっとも観客を感動させるストーリーパターンともいえます。

三幕構成を用いることにより、活動を始めた経緯、過去および現在の活動紹介、支援の訴えまでをひとつのストーリーとして表現することが可能です。概ね以下のような構成になります。

ストーリーの挿絵としての写真を選ぶ

写真は文章よりも強い印象を読者に与えます。ストーリーテリングを用いる場合、ストーリーの挿絵として機能する写真を適切に選ぶことで、ストーリーテリングの効果を高めることができます。

特にアイキャッチ(活動紹介文の先頭に配置する大きな写真)は重要です。アイキャッチには活動のゴールイメージを連想させる写真を使うことが望ましいです。問題の深刻さを強調する写真を使うテクニックもありますが、そちらは写真を見た読者が不快に感じる可能性があります。

ビジネス的なプレゼン能力も必要

文章術によってどれだけ強い共感を喚起できたとしても、成功の見込み無しと思われてしまっては支援につながりません。成功への期待感を喚起することも必要です。

「7つの自問」でアピールポイントを整理する

「7つの自問」は、スタートアップ企業が自分たちの事業を紹介する際のアピールポイントを整理するために作られたものですが、社会貢献団体でも有効です。7つの自問とは以下の通りです。

「納得の6段階」を意識する

「納得の6段階」とは、ある提案に対して納得を得られない理由を6つの要因で説明したものです。丁寧な説明によってひとつひとつ解消する必要があります。納得の6段階とは以下の通りです。

結果と成果を混同しない 

上述「段階3. 解決策の有効性に合意する」ための手段として実績のアピールは有効ですが、気をつけなければならないことがあります。活動の結果(output)と活動の成果(outcome)は別物であるということです。 

受験勉強に例えるならば、総勉強時間が結果であり、テストの成績が成果です。社会貢献活動においては活動の回数や規模が結果であり「社会に与えた良い変化」が成果になります。

成果がまだ出ていないのなら仕方ありませんが、アピールできる成果があるにもかかわらず活動の結果のみをアピールするのは勿体無い話です。結果と成果を混同しないよう気をつけてください。 


事務的な事実伝達だけでは世間の共感は喚起できません。アピール上手なNPOになってぜひ社会貢献活動を成功させてください。