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青川素丸 表参道の父

暦法の類型

2019.05.24 16:18

 中国では長い歴史の中で無数の暦が作られてきました。しかし、類型化してみると、そんなに種類がある訳ではありません。何を周期の基準とするかによって種類がぐっと絞られて簡素になります。プリミティブな暦では、植物のライフサイクルや動物の生理生態の変化を周期としたもの、気候の移り変わりを周期に採用したもの等がありました。このように自然現象から周期を導いた暦を「自然暦」と呼びますが、本質の部分では太陽と密接な関係を持っています。感覚的には日照や気温との相関が強そうですが、厳密に観察すればする程、結局、全てが太陽の影響下にあることに気づきます。

 通常、自然暦は自然物に見られる循環を周期に定めます。自ずと周期はある程度の長さや規則正しい動きが必要となり、そういう意味で、動植物の営みを左右する天体が候補に挙げれます。つまり、太陽、月、他の天体(星)の周期が相応であることに収斂されるのです。ですから、暦を考える上では天文の知識は不可欠です。

 さて、こうした天文学的発想から出てくる暦は、大きく4つに類型化されます。

 一つは太陽の周期を基準とした暦「太陽暦」です。もう一つは月の満ち欠けの周期を基準にした「太陰暦」。そして、これら2つの暦の折衷案として誕生したのが「太陰太陽暦」、最後は星の周期を基準とした「天体暦」です。この「天体暦」は広い意味で、太陽暦、太陰暦、太陰太陽暦を包含する暦の概念ですが、基本的に太陽、月、さらに彗星のように周期が非常に長いものを除いた天体の周期を基準にするものです。

 それでは、この中でどの暦が最も優れた暦と言えるのでしょうか?暦は、その用途で使い勝手が大きく異なります。例えば、農業で使われる暦に、農閑期のカレンダーはどちらかと言うと要りません。むしろ、種まきや手入れをするタイミング、収穫時期がわかれば農作業的にはOKです。つまり、必ずしも暦の循環が閉じてなくても、暦として成立するのです。(現代社会では暦は閉じていなければ使い物になりません)。ただ客観的にどの暦が優れているかを判断するならば、拙者は「太陰太陽暦」でなかったかと考えます。なぜなら、2大天体の異なる周期を上手く一つの暦の中に集約展開しているからです。これをまとめ上げた努力は、正に敬意に値するものです。もっとも太陽暦も太陰暦も天体暦も各々支配する対象領域が異なるので、用途により暦を使い分ける必要があることは言うまでもありません。

 それでは、古人が自然の中どんな循環を見い出し、それをどんな考えに基づいて暦の中に織り込んできたのか?それぞれの暦の特徴やできた経緯などを、後に詳しく説明してみたいと思います。

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