【レビュー⑤】第35回定期演奏会 地産地消 弦楽四重奏団プロジェクト
今回のEnsemble+PLUS の演奏にとても驚き、そして歓喜したのは、4人が意思統一にしっかりと対峙し、築いた一人の人格で音楽を語っていたことでした。
これは四重奏をやる上で、最も難儀なハードルなのです。
3~5年のキャリアの四重奏団で、この問題を解決できていない団体はたくさんあります。
彼女らはすでに「四重奏団」となっていました。
これまで三人で合奏を積み重ねてきた成果でしょう。
しかしリハーサルでは苛立ちや落胆と闘い、真摯に向かい合うことで、この難しさを楽しさへと昇華できたようです。
そしてとても情念深い音楽を感じました。
弦楽四重奏はどうしても合奏を組立てばかりに意識が傾きがちです。
しかし演奏の最終目標は音楽の情念を聴き手に伝えることです。
この2つの面は予想以上の仕上がりでしたから、課題は多く合っても今回はこれで良しと思いました。
細かい演奏技術についてあれこれ言われる方がいます。
演奏者は、聴衆が聴こえていないところまで聴き、課題として省みて取り組みます。
彼女らはそうする人たちですので大丈夫です。
それにそれらは「四重奏の指導者」に任せるべきです。
それから、Ensemble+PLUSがこれまでとは全く違う、遥に高い&濃い「気」を発していたことに圧倒されました。
まるで別人。
「大変なことに必死!」だけではなく、弦楽四重奏曲は人をここまで変容させるのか?とさえ思ったのです。
Ensemble+PLUSのファンの方々が福岡市・北九州市から来てくださっていたようです。
彼女らの成長・変貌ぶりに驚き、そして喜ばれていたでしょう。
「素晴らしい弦楽四重奏団になってくれそうだ!」と言ってくださった方も。
今後もこの室内楽定期演奏会でEnsemble+PLUSが発展していくようにはからい、地域発の四重奏団を聴衆が愛し育てていく気運を啓発していきたいと願っています。