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「宇田川源流」 混迷を深めるイギリスのEU離脱をめぐる世界情勢

2019.05.27 22:00

「宇田川源流」 混迷を深めるイギリスのEU離脱をめぐる世界情勢

 イギリスのメイ首相が6月7日に辞任するということを表明した。

私が別に行う「国際レポート」にもこのことは詳しく報告をすることになるが、国債レポートは読む人が限定されているので、ここでは簡単にそのいきさつを書いておこうと思う。

そもそも日本の報道というのはまったくあてにならない。メイ首相の辞任は、そのままイギリスがEUに戻ることを意味しているかのように見えるが、実際にそのようなことはないと考える方が普通の見識であろう。日本のグローバリストは、あまり多くの情報を持つことはなく、少ない情報を自分の主事主張でゆがめて伝えてしまうので、日本の新聞やテレビを信じてヨーロッパに進出する多くの人は「悲劇」としか言いようはない状態なのである。まあ、日本のマスコミは「ジャーナリズム」ではなく「ファンタジー・フィクション」であるということを海外で活躍する人からはよく嘲笑交じりに言われるのであるが、まさにそのものであるということが言えるのではないか。

メイ首相が辞任しても、実際に、イギリスの保守党の政治が無くなるわけではない。そして保守党はEU離脱で舵を切っている。例えば現在安倍首相が辞任しても自民党の政治が変わらないのと同じである。

さて、この状態において、まず間違いなく次はボリス・ジョンソン前外務大臣(前ロンドン市長)が出馬表明を行っている。

そもそも、メイ首相がなぜ辞任に追い込まれたのか、そして、ボリス・ジョンソンとイギリス労働党のジェレミー・コービンの今後の戦いがどのようになるのかということが注目となる。

メイ英首相、6月7日辞任を表明 次期党首選実施へ

 【ロンドン=板東和正】英国のメイ首相は24日、欧州連合(EU)からの離脱をめぐる混乱を受け、6月7日に辞任すると表明した。与党・保守党は辞任を受けて党首選を行い、次期首相を選出する。メイ氏の後任候補には、ジョンソン前外相ら複数の強硬離脱派の名が挙がっており、離脱の行方が一段と不透明になる恐れがある。

 メイ氏は24日、保守党幹部と面会後、「6月7日に保守党党首を辞任する」と述べた。また、「英国のEU離脱を実現できなかったことを心から後悔している」と語るとともに、後任に離脱の実現を託した。

 メイ氏は今年に入り、EUとの離脱協定案を3度にわたって下院で否決され、保守党などから退陣を迫られていた。今月21日には、条件付きながら2度目の国民投票を容認する考えを示し、野党の取り込みを図ったが、メイ政権で議会運営を担うレッドソム下院院内総務が反発して辞任するなど、混乱が広がった。

 また、国民投票の再実施に言及したことが与野党の猛反発を招いた。

 保守党では、強硬離脱派の重鎮、ジョンソン氏が16日に出馬の意向を表明。ラーブ前EU離脱担当相やレッドソム氏といった強硬離脱派も取り沙汰される。英メディアは、6月10日の週にも党首選が始まるとの観測を伝えている。

 同派の議員が首相に就任した場合、メイ氏がEUと合意した離脱協定案を白紙に戻す可能性がある。「合意なき離脱」による経済の混乱が危惧されている。

産経新聞2019年05月24日18時19分

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/sankei/world/sankei-wor1905240030

 さて、テリーザ・メイ首相(辞任は6月7日)であるボリス・ジョンソン前外相がEU懐疑論であり、EU離脱を推し進めているというような状況であるのに対して、イギリスの野党労働党の多くの議員はEU残留派であるといわれている。しかし、労働党のコービン党首は、そもそもEU懐疑論者であり、その点ではボリス・ジョンソンと主張を同じくしているのである。

トニー・ブレアの大量移民政策によって東欧から移民が職・住居・教育を求めて英国に流入し、英国の低所得者層がそれら移民との競争を強いられたこと。そして移民の流入で非熟練労働者の賃金に低下圧力がかかり暮らし向きが悪くなり、長年の労働党支持者が労働党を離れたことから、実はイギリス国内では移民の流入や、EUによるシェンゲン協定での低所得者東欧国民の流入を忌み嫌う風潮があり、本来労働者を保護し労働者の声を聴く労働党こそ、EU離脱を主張しなければならない状態にあるはずなのである。

しかし、国内の政治情勢から労働党と保守党の差があり、保守党が「国家論」から、EU懐疑論を主張したために、労働党は国内政治上でEU残留を言わなければならない事情になった。

コービンは、そのような中で、EU離脱でもなければ残留でもなく、ただEUに関心を持っていないだけだとも言われる。

一方、ボリス・ジョンソンがEU離脱の強硬派であることは十分に知られているところである。どちらかといえば、2016年のEU離脱の国民投票は、ボリス・ジョンソンに期待し、ジェームス・キャメロン(当時の首相)を排除するための物であったともいわれているほどである。また迷走するメイ内閣の外務大臣をやっていたとはいえ、その就任期間は短く、またEU離脱が進まないことに抗議しての辞任であることから、今度ジョンソンが首相になった場合はEU離脱が加速するという国民の意思表示がなされたことになることは間違いがない。

そのように考えた場合、メイ首相辞任の後のイギリスの両政党のリーダーは双方ともにEU離脱派であり、そしてEUそのものから離脱してイギリスの経済と労働者をどのようの保護するかということを非常に強く推し進める内閣となることは間違いがない。

さて、この内閣において注目すべきはジェームス・キャメロンが親中派であったが、そこに双方ともに反対していたということである。

現在、イギリスの最新鋭空母は中国の台湾海峡危機、いわゆる南シナ海緩衝地帯における中国の覇権主義が世界の火薬庫であるとしてそこに派遣されている。直接の植民地や領土がないイギリスが南シナ海の防衛に関して空母艦隊を派遣しているのは極めて異例といわざるを得ない。

当然にこの行動はEUとして行っているものではなくイギリスの単独行動として行い、日本やアメリカ、オーストラリアとの間における合同訓練などが実施されている。そしてボリス・ジョンソンも反中主義者であることから、この動きは加速することになるのではないか。

アメリカがイランを中心に動いているが、実際にアメリカの標的が中国であることは間違いがなく、その中において日本はイギリスとともにどのように動くのかということは非常に注目されることである。

いずれにせよ、ブレグジットだけで汲々としてたメイ内閣ではなくなったことによって、今年の8月以降、かなり大きな動きが生まれてくることになるのではないか。