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【南アルプス深南部縦走】どっぷりと山に浸る静寂の深南部登山【2019.5.22.23】

2019.05.29 04:00

ゴールデンウィークが終わり、5月はエルクスタッフもそれぞれ連休をいただき、行きたい山へ行ってきました。中込店長は穂高岳エリアのバリエーションルートへ、先の記事で上げた新人守屋は西日本の平尾台へ。そしてスタッフ綾井は初めての「南アルプス 深南部」に縦走登山へ行ってきました。深南部とは日本百名山である南アルプスの「光岳」以南のエリアを指し、笹薮やルートのない道が多く正直「地味」なエリアです。しかし未踏であるということと、深南部という名前から想起するように、人がほとんどおらず山深いイメージに惹かれ続けていました。今回はスタッフ綾井にとってついに念願かなった登山となりました。


登山開始予定であった5月21日、日本列島に猛威をふるった寒冷前線の通過により前日の夜から大雨に。これじゃあどうにもならんと待機していましたが、昼過ぎには雨が上がりせっかくなので登山口である寸又峡からすぐの観光地である「夢の吊り橋」へ

人いるじゃねえか!!しかもカップルばっかり!!寸又峡は観光地でもありますもんね。

自撮り棒片手にキャッキャ言っているカップルの後ろから、綾井は吊り橋をグワングワン揺らしながら猛スピードで追い抜いてやりました。

さて気を取り直して次の日(5/22)。前日は車中泊して再び寸又峡からスタートです。

二日間となったということで、今回のコースは寸又峡〜前黒法師岳〜黒法師岳〜バラ谷の頭〜房小山〜三合山〜山犬段〜沢口山〜寸又峡の周回コース。あまり詳しくはないけど、駐車場のある寸又峡から無駄なく周回できるから、チャレンジする人も多いのではないでしょうか。もちろん営業小屋はないので、テント泊装備になります。(歩いた感想としては2泊3日がおススメです)


寸又峡から前黒法師岳の登山口まで林道を詰めます。まだこの時は周りの山は見えても位置関係を把握していないので、どれがどの山か全く見当がつきません。

寸又峡から30分ほど林道を詰めれば、前黒法師岳の登山口に到着です。ここを登っていくのですが…

第一村人(ヒル)発見‼︎なんと登りだして3分もたってないよ!ものすごい勢いで登ってくるので、すかさず剥がし落とします。


村人(ヒル)の熱い歓迎を受けたので、序盤はものすごい勢いで登ることができました😅

ここは標高1100mを越える栗ノ木段という場所です。ここまでくれば森も明るく、ヒルの攻撃がやみましたね。まだ怖いので先を急ぎます。

白ガレの頭(1640m)でようやく腰を下ろしました。ここまでこればヒルの攻撃に合うことはありません。

ここからは気持ちのいい尾根歩き。ふかふかの土に苔むした木の根の道。さらにときおりリスが横切るものだから僕も上機嫌で歩かせてもらう。

そして前黒法師岳(1943m)へ登頂。寸又三山とはこの前黒法師岳の他に、「沢口山」と「朝日岳」があります。それぞれ寸又峡から近い代表的な山になります。ここまでは登山道も分かりやすく登りやすいコースでした。

ほぼ展望はないですが、木々の間から南アルプス南部の主稜線が見ることができました。

そして前黒法師岳から標高を下げた先にヘリポートがございます。山犬段というところからここまで林道を通したのですが、今はその林道も荒廃して入ることができません。この山深いエリアの木を切り通すのはどうかと思いますが、その副産物として最高の展望を見ることができました。

今日の目的地のひとつ「黒法師岳」(上写真左のピーク)、そしてその隣には直下にカモシカ平という展望のきく笹原の別天地を抱える「丸盆岳」だ。時間的にも余裕があったのでここで大休止をとることにする。

ヘリポートから出発すれば、だんだんと黒法師岳が近くなってきた。しかしそれに伴い笹薮の背が高くなりかなり歩きづらくなってくる。しかし立ち枯れの木に笹薮これぞ深南部という憧れた景色はその藪漕ぎのわずらわしさを忘れさせてくれる。

黒法師岳直下の登りではさらに笹薮が濃くなり、ストックが邪魔になってきた。うっすら踏み跡はあるが、いくつもの獣道が交差して分かりにくい。基本的には尾根に忠実に歩けばいつか着く、笹薮を掴みながら体を必死に上へ持ち上げる。

黒法師岳(2067m)へ無事に到着。この山頂にある標識、通称「お団子標識」。静岡にもあるんですね〜。調べたら公式的なものではなく、山梨でも撤去する流れになっているそうです。

ちなみに山頂には変種一等三角点が置かれ、「+」印ではなく「×」印の三角点が設置されています。肝心のその写真は撮り忘れ、1人のため悲しい自撮り撮影だけしてしまった。

ここから進路を南に大きく変えます。正面に見えるのが「バラ谷の頭」。そこまでのびる笹の稜線を再び歩き出します。

バラ谷の頭手前で少し沢を下りて給水したのちに、展望のきく笹のトレイルを登ります。振り返ればここまで登ってきた前黒法師岳と黒法師岳。ここまで誰とも会わない静かな山行、1人でしみじみとここまでの行程を振り返ります。

バラ谷の頭(2010m)に到着。黒法師岳よりも展望のきいた気持ちの良い山頂です。

バラ谷から見る黒法師岳、丸盆岳、不動岳の三山。ほぼ等間隔で南北に連なり、縦走意欲を掻き立てる素晴らしい山容をそれぞれが誇っている。

バラ谷の頭から少し南下すれば、こちらの標識が。ということは本邦最南のピークはバラ谷の頭になるのかな。ここで時間は13:30を回ったところ。まだまだ体力的に余裕があるので、明日の長い行程を考えて先に進もうと思った矢先

見つけてしまった幕営適地。このエリアは指定されているテント場というのが無いため、行けるとこまで行こうと考えていたが、見つけてしまったものはしょうがない。

今日のところはお疲れ様ということで!生ぬるいビールを飲み干して、暖かいテント内部で気づけば寝落ちしてしまいました。


さて起きたのは18時頃だったでしょうか。すっかり昼寝がすぎたと思い、近くのバラ谷の頭へ行ってみると

夕焼けに染まる深南部の山並みを見ることができました。冬山ではこんなふうに外に出て沈みゆく夕日と山を見ることはないのですが(寒くてテントから出たくない為)、穏やかで心地の良い気温だったので小一時間ほどこの夕焼けと山並みを一人静かに見入っていました。

贅沢な時間でした。テントもバラ谷の頭近くに張って良かった。久しぶりのグリーンシーズンの登山はこうでなくっちゃ。充足感に包まれながら再びシュラフに潜り込みました。その夜は昼寝のし過ぎと鹿さんのお宅訪問のおかげで、なかなか眠れない夜になりました。

2日目は大きな登りはないものの、距離は長いので急ぎます。昨夜眠れなかったせいか、寝坊をかましてしまいすっかり明るくなってからのスタートです。

朝は予想通り笹が濡れている為に、レインパンツをはいて進みます。この時点で笹に飽きてきたなあ…😓

山と高原地図ではバラ谷の頭から房小山まではルートがございません。地図を見て獣道を借りながら、支尾根に入らないように進みます。

房小山(1868m)に到着。特に展望も無いので先を急ぎます。

房小山からはやっとうるさい笹薮も落ち着きました。昨日は藪漕ぎこそ深南部と喜んでたのに…飽きやすい性分のようです。

しかしこのエリアの特長でしょうか、鹿のヌタ場(洗い場)がこれでもかというくらい見ることができました。登山道を歩くだけでは気づかない、本来の日本の山の姿なのかもしれません。

小さなアップダウンを繰り返し鋸山(1668m)も通過。ここら辺から痩せ尾根になってきました、さあ一般道までもうすこし、スピードアップで行くぞー!

っぎょえええええええ!!!(ほんとに言ったと思います)

写真ではわかりにくいですが、痩せ尾根の一本道に堂々としたヤマカガシ(毒蛇)がいらっしゃいました。駆けていたので直前まで気がつかず尻餅をついての急ブレーキ。

「ほんまなんなん、君めっさでかいやん」「もうほんまやめてーな、なー!」

などと蛇に意味のない関西弁攻撃をかまし、なんとか立ち退いていただくことに成功。

暑いせいか蛇のせいか、汗でビチョビチョになりながらやっと一般登山道と合流です。この三合山から東に大きく方向を変えて、寸又峡まで歩きやすい登山道が続きます。ここからは正直一般登山道であまり面白みがなかったのでダイジェストで

唯一見ることができた「シロヤシオツツジ」。このエリアでは多くのシロヤシオを見ることができるが、1週間早かったかな。

天水(1521m)からの景色。もう前黒法師岳が大きく見えるほど回り込んできた。

ここで静岡らしいお茶羊羹で補給。麓にバックパック工房を営む「blooperbackpacks」の植田さんからいただきました。ゴチです!

最後のピーク沢口山(1425m)で最後の自撮り。ここから寸又峡までの下りは走ってゴールです。

いやー長かった!



スタッフ綾井にとって初めての深南部登山。結局ゴールの寸又峡まで一般登山道も含めて、1人も出会うことがなかったです。だからこそただ静かに山と向き合うことができました


人とは会うことがなかったかわりに、多くの生き物と会うことができました。

リスやタヌキ、カモシカや大量のニホンジカ。鳴き声は聞こえるが姿を確認できなかった数多くの小鳥たち。ヒルや蛇はごめん被りたかった。

そして印象的だったのが外傷もなく綺麗な状態の子鹿の屍。笹原の倒木に寄りかかるようにそれはありました。(写真は無しで)

子鹿の屍は(適切な表現ではないかもしれないが)美しさを感じざるを得なかった。それが自然でありありのままの山の姿に見えたからかもしれません。


南アルプス深南部、携帯の電波も届かずどっぷりと山旅に浸ることができる静寂の山域。といっても今回のルートはまだメジャーなほうかもしれません、まだまだ深南部のもっと山深いところを覗いてみたくなりました。