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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

理学療法士の自分が、家族が脳卒中になってしまった場合、脳卒中の保険外・自費リハビリを勧めるか?⑥

2019.05.27 22:30

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


数回に渡って、保険外・自費での脳卒中のリハビリに関して書いています。  


前回の記事で、 


・脳卒中のリハビリの効果は、リハビリの量、強度に大きく依存すること 


・『動き方』のようなスキルに注目が集まりがちではあるものの、体の機能を最大に回復させるためには、運動不足による筋力や体力の低下をしっかり潰す方が効果的であること 



 などを書きました。 


では、『量』を意識したリハビリとはどんな内容なのか? 

考え方は非常にシンプルです。 例えば 


・起立着座(椅子からの立ち座り)練習を1日100回継続してやる(リハビリのない日も!!)。 


・なるべく長い距離の歩行練習をやる。 


・適切に設定された課題をできるだけ毎日やる。   

階段の上り下りかもしれませんし、屋外で歩くことかも知れませんし、患者さんのお体の機能とその方の生活において重要な動作との兼ね合いで決まります。 



 退院後に座っていたり、休んでいるうちにも、患者さんの体力は落ちていきます。能力の落ちを防ぐ、もっと言えば、体力が上がるまでしっかりとしたリハビリを提供するとなると、特別な事情がない場合、リハビリ中に座っている時間、ベッドに横になってマッサージのようなものを受ける時間はないと私は思います。 


少なくともこの記事で紹介されているような 


「ゆーっくり、息吐きながらフーッ・・・そうそうそう・・・楽にして、もう一度いきます。ゆーっくり、フーッ・・・」  と、腕を動かす訓練(ベッドであおむけになってリハビリ専門職の手助けを借りながら動きにくくなっている手を動かす練習) 


をする合理的な理由はないです。 


現代のリハ専門職に求められる脳卒中リハビリは、 リハ専門職によるスペシャルな技ではなく、

患者さんの行動変容を促し、生活の中で積極的に麻痺してしまった方の手足を含めた運動・動作を行って頂くようにサポート・マネージメントをすることです。 


そのために 

・適切な難易度の練習を設定すること 

・データに基づいて、患者さんにとって丁度良いゴールを設定すること。 

・ゴールの達成に必要であれば、他のサービスなども提案して、患者さんの求める生活に最大限近付けるようにサポートすること 


などが大切だという風に考えが変わってきています。  


リハビリを提供する側が、特別なテクニックを駆使するリハビリがドンドン存在感を弱めているのは、患者さんを用いた質の高い研究では効果が証明できていないからです。


先ほど、毎日起立着座(椅子からの立ち座り)練習をリハビリのない日も100回毎日やると書きました。 脳卒中後の患者さんで、これを毎日やっている方は5%はいないと思います。 ただ、これは途方もなく高い目標ではないです。  

一昔前の理学療法ジャーナルという雑誌に、 

『歩行1万歩に相当する筋活動量と同等の筋活動量を得るには、立ち上がり動作は750回必要である』というデータがありました。 


また、今ある筋力を最低限維持するためには、少なくとも一日5000~6000歩程度の運動は必要であると思います。最低限です。 


単純に計算することがこの場合適切かは分かりませんが、上記のデータからは、最低限筋力を維持するためには、375回~450回程度の起立練習が必要な計算になります。 

(実際は、起立練習の他にも、歩くなどの運動はしているので、起立練習自体はもう少し少なくても良いかも知れませんが・・・・。)  


日本に限らず、世界でも脳卒中患者さんは『もっと運動量を増やしたほうが良い』と言われています。 


この様に、運動量を増やすことが、一般的に考えられているよりも重要な脳卒中患者さんのリハビリにおいて、現在提供されているような自費リハビリが最適なサービスであるかは議論の余地があると私は考えます。 



長くなりましたので次回に続きます。 次回は復職に関して考えていることを書きます。 


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 


次回へのリンク







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